フロンターレとJICAの健康事業inベトナム

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©KAWASAKI FRONTALE】

2月25日、26日にフロンターレとJICA(国際協力機構)がベトナムのホーチミン市で開催された「第8回ジャパンベトナムフェスティバル」に参加し、共同ブースを出展した。日越外交関係樹立50周年記念事業の一環として開催された当イベントでは、フロンターレが健康事業として「フロンタウンさぎぬま」で開催しているポールウォーキング教室や、川崎市内の小学校で定期的に行っている算数ドリル実践学習などのプログラムを実施した。その様子についてJICAの土本周さんに話を聞いた。

フロンターレとベトナムの交流活動

【©KAWASAKI FRONTALE】

まず、フロンターレとベトナムのサッカー交流活動を開始したのは2013年に東南部地方ビンズオン省にて、地元クラブのベカメックス・ビンズオンFCと親善試合を行ったことから。その後は、両国の児童向けにサッカー教室や交流試合や、日越45周年の2018年からはU-13の日越国際親善大会を開催するなどに発展。2021年にはJクラブとして初となるベトナムサッカースクールをビンズオン省に開校し、昨年のアジアツアーで訪れた11月には日越50周年のオープニングイベントとして、フロンターレとベカメックス・ビンズオンFCの国際親善試合を9年ぶりに開催した。

その背景がある中、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に実施する機関として、開発途上国の経済社会開発事業を行っているJICAは、JFA、Jリーグ、WEリーグとの連携協定を結んでおり、東南アジアでのサッカーを通じた国際協力に力を入れている。ベトナムでサッカースクールを開校したフロンターレとJICAが協力体制を組み、ベトナムでの活動を行ってきたことで、本イベント参加まで至ったのである。

「日越交流まつり」での健康増進プログラム

ポールウォーキングの様子。幅広い年齢層の方々が参加した。 【©KAWASAKI FRONTALE】

初回となった第1回目の健康増進プログラムは昨年11月にアジアツアーの試合と共同で実施した「日越交流まつり」内で行われ大盛況に終わった。そして第2回目となる今回のジャパンベトナムフェスティバルでは、2本のポールを使って歩行運動を補助して正しい歩き方を身に着ける「ポールウォーキング教室」、体を動かしながら頭も使って楽しく学ぶ「算数ドリル実践授業」などを実施。当日は多くの人がブースを訪れ、体を動かすことの楽しさを、より感じることができ、土本さんも手応えを感じたという。

「前回の日越交流まつりのときよりも、規模を大きくして1,000人以上の方がブースに来てくださいました。そのうちに200人がプログラムに参加していただき、とてもいい感触を得ることができました。参加者からの事後アンケートでは、本健康増進プログラムの事業化を意識して『このプログラムが、もし有料だったら次回も参加したいか』という項目を設けたのですが、94%の方が『有料でもやりたい』と回答をしてくださいました。また、ブースに来てくださった方のなかでフロンターレを知らない人は半分くらいでしたが、そういう方々に、日本のサッカーチームがこのような社会貢献事業を行っていることを知ってもらいつつ、私たちJICAのスポーツを通じた平和な社会の実現への取り組みについても知ってもらうことができ、意義のあるイベントだったと感じています」(土本さん)

算数ドリル実践学習の様子。子どもたちも真剣な表情で取り組む。 【©KAWASAKI FRONTALE】

また、子どもたち向けに実施された算数ドリルの実践学習は「スポーツ好きの子どもが勉強をするきっかけになりますし、逆にスポーツが苦手な子にとっては体を動かすきっかけにもなります」と土本さん。ベトナムの5歳から19歳の子どもたちの肥満率が2010年から10年間で倍になったことが統計で明らかになった背景も含めて、ベトナムの現状にマッチするプログラムと言えるだろう。さらに、今後は川崎市内の小学校に配布している算数ドリルを翻訳したものを現地の小学校に配る計画も進めていくそうだ。

「この取り組みをよりベトナムで浸透させていきたい」(土本さん)

JICAベトナム事務所 兼 青年海外協力隊事務局企画業務課 所員 土本周さん 【©KAWASAKI FRONTALE】

そんな活動をフロンターレとともに取り組むことの意義とは──。土本さんは言葉を紡ぐ。

「フロンターレが『フロンタウンさぎぬま』で展開している健康事業のような地域に根ざしたSDGsへの取り組みを東南アジアでやろうという試みは、フロンターレさんが唯一無二だと思います。そのような革新的なクラブとJICAが連携して活動できるのは有り難いこと。スポーツと国際協力は世の中的にもホットトピックになっていますし、JICAとしても、教育や保健といった開発課題と並び、スポーツも今後重点的に取り組むべき分野の1つに掲げているほど、スポーツは重要だと思っています(参考→下記リンク)。その中でフロンターレさんと連携をして、日本のサッカークラブの強みである地域貢献に、東南アジアというフィールドで一緒にチャレンジできることに意義を感じています。また、これは言うまでもなく、フロンターレの今回のジャパンベトナムフェスティバルを見ても感じたことですが、スポーツは人を集める力があります。年齢も性別や文化的背景も関係なく楽しむことができますし、集まった人だけでなく、ひいては地域全体の活性化にも貢献します。それを今回のイベントを通して感じることができましたし、この取り組みをよりベトナムで浸透させていきたいと思っています」(土本さん)

これからも継続的に活動を続けることで日本とベトナムの架け橋となり、社会貢献につなげていくフロンターレとJICAの取り組みに注目していきたい。

(取材:高澤真輝)

協力
JICAベトナム事務所 兼 青年海外協力隊事務局企画業務課
所員 土本 周

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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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