「HEROs AWARD 2022」受賞! クラブ創設26年間の結晶が形に

川崎フロンターレ
チーム・協会

【© KAWASAKI FRONTALE】

12月20日、日本財団が主催する「HEROs AWARD 2022」の表彰式が東京都内で行われた。この賞は、スポーツやアスリートの力が社会課題の解決を加速させることを社会に可視化・発信するために社会貢献活動に取り組むアスリートを表彰するもの。川崎フロンターレはスポーツ団体部門で「川崎フロンターレSDGs」の活動が評価され、初受賞となった。

26年間の結晶

「HEROs AWARD 2022」受賞者(左から堀由美恵さん、鈴木武蔵さん、益子直美さん、森山直太朗さん、吉田明宏社長、中西哲生さん) 【© KAWASAKI FRONTALE】

「プロサッカークラブとして、強化面では、いい選手を育て、強く魅力あるサッカーを披露することを追求してきました。一方、事業面では、強かろうが弱かろうが関係なく、地域に愛されるクラブとなることを目指し、地域密着・社会貢献活動を、今はそれをより多くの方にご理解いただきやすいように『川崎フロンターレSDGs』と呼んでいますが、26年間愚直に、選手、スタッフ、ファン・サポーター、パートナー企業、川崎市や地域団体の皆様と一緒に取り組んできたことによって、『川崎市っていい街だな。川崎フロンターレがあって川崎市民で良かったな』と思っていただけるようなクラブに少しなってきたのかなと感じています。今回受賞することができたのは、選手はじめ多くの方々と一緒に『川崎フロンターレSDGs』をしっかりやってきたからこそなんだと改めて思いますし、皆で積み上げてきた事業面も形となって評価いただけたことが素直に嬉しかったです」

そう語るのは、1999年当時大学生のアルバイトとしてクラブに携わり現在に至る株式会社川崎フロンターレ企画担当シニアマネージャーの井川宜之さん。歴史を振り返ると、1997年にクラブが創設してから「スポーツが根付かない街」と言われていた川崎市で認知、愛されるために活動を続けて現在の川崎フロンターレが築き上げられていった。

選手が小児科病棟を慰問する「ブルーサンタ」、川崎市内の小学校に配布している「算数ドリル」、河川の清掃活動「多摩川エコラシコ」。また、2011年から始まった岩手県陸前高田市との交流は3万人以上が参加するなど地域を越えて活動を広げてきた。

その他にも数多くの活動をしてきた26年間の結晶が「HEROs AWARD 2022」の受賞であり、クラブと地域が一体となり発展してきた歴史、築き上げられた文化。選手たちが主体的に社会貢献活動に取り組む姿勢が評価を受けたのだった。

選手が小児科病棟を慰問する「ブルーサンタ」に参加した原田虹輝選手(現/AC長野パルセイロ)と車屋紳太郎選手 【© KAWASAKI FRONTALE】

SDGsとして世に打ち出す

河川の清掃活動「多摩川エコラシコ」に参加する小林悠選手 【© KAWASAKI FRONTALE】

“SDGs”として今まで取り組んできた活動を世に打ち出していったのは2022年から。始まりは2021年10月に副社長してクラブに就任した吉田明宏現社長が「フロンターレはこんなにもいい活動、社会貢献活動をしているのに、SDGsに紐づいていることをなぜ世に出さないのか?」という一言からだった。この言葉をキッカケに、SDGs17の目標に紐づくこれまでの活動を整理し、毎ホームゲーム時に『川崎フロンターレSDGs』ブースを設置するなど積極的に自分たちの活動を紹介していくことになる。

言語を揃えたことで効果は絶大だった。SDGsに対しての意識が高い若い世代、いわゆるミレニアル世代がクラブに興味を持ってくれる確率が高まったのだ。大学生が直接「SDGsでなにか手伝えることはありませんか?」とスタジアムで声をかけてくれたり、川崎市立下作延小学校の総合的な学習の時間では、『川崎フロンターレSDGs』を題材として児童たちがSDGsを研究する授業に採用されたりすることもあった。

「世の中に認知いただきやすい表現に変えてよかったなと思います。僕らもこれまで『ホームタウン活動、地域密着・社会貢献活動を行っています』と伝えてきましたが、特にホームタウン活動といったスポーツ業界用語も入っているので、いったいそれってどんなことなのか、一般的には何をやっているのか傍から見たら分からない、伝えたつもりが伝わっていないのだなと今回気付きました。これをSDGsと、言語を一般的に通じる言葉に変えたことで多くの方に共感していただき理解いただける確率を増やせました。その結果『ウチも一緒に』という企業さんも増えてきました。改めて言語を揃えるのは重要だと思いました」(井川さん)

そして今年は川崎フロンターレがハブとなり、自治体や企業とNGOを結び付け「かわさきこども食堂ネットワーク」の支援をスタート。また、家庭で不要となった食品を、経済的な理由や持病などにより生活に苦しむ人や福祉施設等へ届ける「フードドライブ」を開始するなど生活の一部としてなくてはならない存在としてクラブが地域の方々の“食”をサポートしていくことで新たな活動も行ってきた。

「FOOTBALL TOGETHER〜川崎とともに〜」

川崎市内の小学校に配布している「算数ドリル」の実践学習に脇坂泰斗選手が参加 【© KAWASAKI FRONTALE】

このような活動をプロサッカークラブがする意義はどのように考えているのか。井川さんは語る。

「これは、我々のような地域プロスポーツクラブにとっては、やって当たり前の活動です。地域あっての地域プロスポーツクラブ。地域で課題があり、その課題を少しでも解決することができる力があるのであれば、地域と一緒になって取り組む。競技力で地域に喜んでもらうことも一つの大きな役割ですが、一方で、日々の活動で地域に喜んでもらえる社会課題の解決も行う。これも地域プロスポーツクラブの大きな役割であり、川崎フロンターレが川崎市にある存在意義と考えています。だから特別なことをやっている意識はありません。地域の多くの人たちに『フロンターレがこの街にあってよかった』と思っていただけるようになることが大切です。では、どうすればそのようになれるのか?それが、地域密着・地域社会貢献活動、つまり『川崎フロンターレSDGs』を継続して行っていくことなのです」

今後も「川崎フロンターレSDGs」の活動は続いていく。「FOOTBALL TOGETHER〜川崎とともに〜」を合言葉に──。

「優勝を目指して、強く、観ていて面白いサッカーを披露したい、魅力あるいい選手を育てたいという想いと共に、私たちクラブのミッションでもある「スポーツの力で、人を、この街を、もっと笑顔に」という言葉があるように、SDGsに紐づく活動をサッカークラブとして継続して行って、地域の方々により笑顔を届けられるように、これからもクラブ単独で行うのではなく、地域の多くの方々と一緒に想いを形にしていきたいです。もっとできること、継続してできることがまだまだあるはず。今回受賞したことに驕らず、ちゃんと襟を正して、フロンターレらしく『楽しく、温かく』皆と一緒にやっていきたいです」

地域の方にもっともっと「この街に川崎フロンターレがあってよかった。川崎はいい街だな。川崎に住みたいな。」と思ってもらえる未来を想像してスポーツの力を通じて、持続可能でよりよい世界を実現する。

(文:高澤真輝)
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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