川崎フロンターレが取り組む子ども食堂支援 訪問を通して見えてきたもの

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©KAWASAKI FRONTALE】

フロンターレの新たなチャレンジ

2022年、川崎フロンターレは新たに「川崎フロンターレSDGs」を掲げ、地域の社会インフラとしての役割を担い、持続可能な地域社会や地域経済の発展に寄与することを目指して、さまざまな活動を進めてきた。

そして8月から始まった、かわさきこども食堂ネットワークへの支援。プロスポーツクラブがこども食堂ネットワーク全体を支援するのは全国初の試みだ。

支援といってもフロンターレが単独で行うのではなく、SDGs目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」に則って、日頃フロンターレを支援しているパートナー企業と共に、持続可能な方法で行っている。

ネットワークに参加する約40か所の子ども食堂を支えていくには、まずは子ども食堂の現状を知らなければならない。そんな思いから、10月から11月にかけて川崎市内の6か所の子ども食堂にクラブスタッフが足を運び、子ども食堂の現状と向き合った。

訪問の際にはクラブスタッフから選手カードをプレゼントした 【©KAWASAKI FRONTALE】

子ども食堂の重要性と見えてきた課題

訪問を通して、子ども食堂は多くの役割を果たしていることが分かった。子ども食堂とは、子どもが安心して食事ができる場で、主にボランティアが中心となって、低額・無償で食事を提供している。地域の子どもや家族はもちろん、年齢・性別・国籍を問わずさまざまな人が利用し、新たな地域コミュニティのひとつとなっている。

だからこそ、子ども食堂に求められている役割も多岐にわたり、食事の提供はもちろん、地域の身近な相談役、親子の団らんの場、さらには子どもの安全な居場所としても活用されている。利用者に寄り添うために、レトルト食品などを無料で配布するフードパントリー活動や、季節ごとにイベントを行うなど、他にも活動を行っているところも多い。

実際に利用者の方たちに話を聞くと、「家事のことを考えずに子どもとゆっくり話ができる貴重な時間」、「困ったときに何でも聞いてくれる身近な存在」、「学校帰りに友達といっぱい遊べて楽しい」など、多くの役割を果たしていることがうかがえた。

手の込んだ料理でおなかも心も満たされる 【©KAWASAKI FRONTALE】

そんな子ども食堂だが、地域では極めて重要な存在になっているにもかかわらず、運営する上で課題を抱えている食堂も少なくない。

地域の公民館やコミュニティスペースを借りて開催する子ども食堂にとって、食品や調理器具の保管場所の確保はそのひとつだ。公共施設を借りて開催する場合は、毎回スタッフが車で荷物を持ち寄っている。食品から調理器具までさまざまなものを持ち込む必要があり、負担が非常に大きいという。

市民館を借りての食堂開催の様子 【©KAWASAKI FRONTALE】

また、大量の食品を寄付されても、その保管場所に困ることも多い。保管ができないことを理由に寄付を断ったこともあったそうだ。冷蔵や冷凍が必要な食品についてはなおさらだ。

助成金に頼っての運営の中で、資金繰りも重要な課題だ。決められた予算の中で喜ばれるメニューを提供するには、やはり寄付品が必要不可欠。それも、必要とするものを寄付してもらいたいというのが本音である。

これらの課題はいずれも、子ども食堂だけでは解決が難しい課題である。解決に向けては継続的な支援が不可欠だと感じた。

栄養バランスが考えられた献立。寄付された食材も多く使われている 【©KAWASAKI FRONTALE】

果たすべきフロンターレの役割とは

こうした課題に対して長期的に実情に合った支援を行うことが、支援を行う上で求められている。これまでかわさきこども食堂ネットワークは、中間支援団体として、子ども食堂がそれぞれ抱える課題の解決に努めてきた。それでもなお、なかなか解決できないこともある。

フロンターレはかわさきこども食堂ネットワークが解決できない課題についても共に取り組み、解決に向けて努力したいと考えている。

しかし、フロンターレ単独での支援となると、できることが限られてくる。試合に招待したり、選手が訪問したりすることはできても、より根本的な課題、すなわち食品や物流面での課題を解決するには限界があるだろう。

だからこそ、パートナー企業の協力が不可欠となる。これまでフロンターレが築いてきたネットワークを最大限に活用し、より持続的かつ効率の良い運営ができるように手助けすることこそ、フロンターレができる最大限の支援だと考えている。

こうした物流面での課題に対しては、現在、大量の食品寄付を受けた際の一時保管場所として、富士通株式会社が協力しているほか、物流面での課題を解決すべく、新たにヤマト運輸株式会社も参画している。すでに食品の提供等で協力している株式会社ロッテ、マルコメ株式会社、株式会社ドールの3社と合わせて、来年以降も力強い支援を行っていきたい。

今回訪問した際には、フロンターレのパートナー企業からの支援として、ロッテの「コアラのマーチ」と「キシリトールガム」、マルコメの「液みそ健康みそ汁」、が多くの食堂で提供されていた。子どもが大好きなお菓子はもちろん、家でも簡単に使える優しい風味の味噌はいずれも好評で、確実に必要な人のもとに支援が届いていた。支援品を受け取る方々の笑顔を見て、より一層の支援を進めていかなければならないと感じた。

大好評のフロンターレパートナー企業からの支援品 【©KAWASAKI FRONTALE】

共に地域の「つながり」を生み出すパートナーとして

ありがたいことに、フロンターレは多くの川崎市民の皆様に応援されている。今回の訪問でも、子ども食堂に参加していたファン・サポーターの方々に温かい言葉をかけてもらった。フロンターレのスタッフが来ると聞いて、初めて食堂に足を運んだという方もいたほか、フロンターレのスクール生やアカデミーに所属する子どもたちにも出会った。

今後フロンターレが継続して支援していくことで、フロンターレがきっかけで子ども食堂を知って、新たに利用する人が増えるかもしれない。利用者が増え認知度が上がると、地域の中で新たな「つながり」が生み出されることになる。そしてこの「つながり」こそ、子ども食堂とフロンターレがともに大切にしてきた言葉である。

子ども食堂のスタッフの皆さんが、参加する方々に対してとてもフレンドリーに接していたのは、つながりの大切さを理解しているからであろう。フロンターレもさまざまな活動を通して地域とのつながりを深めることで、多くの人に応援してもらえるクラブとなった。ここにフロンターレと子ども食堂の共通点があるのではないだろうか。

子ども食堂が生み出す地域のつながりが、持続可能な地域のコミュニティを形成する上でのカギになるかもしれない。

持ち帰り用のお弁当を渡すスタッフの皆さん。コミュニケーションは欠かさない。 【©KAWASAKI FRONTALE】

今回の訪問を通して、改めて子ども食堂が地域の中で果たす役割の大切さを実感した。そして、子ども食堂が目指すものは、フロンターレが目指してきたものと同じく、「地域の中で欠かすことのできない存在」になることなのだ。

共に地域のコミュニティを形成し、持続可能な地域社会を作るパートナーとして、今後もかわさきこども食堂ネットワークとネットワークに加盟する子ども食堂を支えていきたい。
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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