ラグビーとは、人生の修行 〜vol.9金井健雄【三重ホンダヒート 新加入選手インタビュー】
【三重ホンダヒート】
毎年変わるルールにも柔軟に対応し、世界のトレンドから取り残されないよう常に勉強することも忘れない。
「ラグビーとは、人生の修行」と話すそのラグビー観について、話を聞いた。
群馬県出身、太田高校→慶應義塾大学→サントリーサンゴリアス→神戸製鋼コベルコスティーラーズ→東京サントリーサンゴリアス。175cm/115kg。ポジションはプロップ、フッカー 【三重ホンダヒート】
自然もたくさんあるので、色々と探索しながら、楽しみながら生活しています。
僕は海外に行く時も家族には一緒に来てもらっているんです。夏にはニュージーランドへ行っていましたが、妻と2歳の娘も一緒でした。
――NZではクラブチームでプレーされたそうですね。何試合出場されたのでしょうか
トータル6試合です。クラブラグビーですが、レベル的には日本でいうリーグワンのDIVISION 3ぐらい。当たりが強いんですよ。
南半球なので季節は冬、グラウンドも結構ぐちゃぐちゃな所だと、常にボールが滑るんですよね。となると必然的に当たりが強くなっていく感じです。
――フォワード第1列としては大変なお役目ですね
そういうのを体験しに行ったので、ちょうど良かったです(笑)
――金井選手はフロントローどこでもできる超ユーティリティプレイヤーです。NZではどのポジションをご経験されたのでしょうか
基本的にはプロップ、1番と3番をやっていました。
でも日本では、1番と2番の方が良いですね。希望は伝えてありますが、求められればどのポジションでももちろんやるつもりです。
――なぜ1番・2番・3番全てできるようになったのでしょう
ラグビーの始まりは3番でした。高校時代にはずっと3番をやっていて、大学時代はずっと2番。社会人になってからは1番も始めたので、それらを掘り起こしてプレーしています。
――ご出身は群馬ですが、ラグビースクールに所属していたわけではなく、高校から始めたんですよね
そうなんです。中学時代「太田高校に合格したら一緒にラグビーしよう」と誘ってきてくれた友人がいまして。彼は高校で辞めてしまいましたが、一緒にラグビーが出来ただけでも良かったですね。
――今年38歳。高校生の時に誘われて始めたラグビーも、20年以上の競技歴となりました
結構やってますね(笑)実は、大学でもラグビーするかどうか迷っていたんです。元々税理士か会計士になりたいなと思っていたので、大学ではその勉強をしたいなと思っていました。それが気付いたら、ずっとラグビーやっていますね。
大学卒業後は銀行から内定を頂いていたのですが、最終的には、プレーできるうちはラグビーをしよう、とラグビーを続けています。
ヒートでは現役最年長選手 【三重ホンダヒート】
ヒートがヒートらしくあるために
新しい環境に飛び込むのは好きな方なので、本当に楽しくラグビーをさせてもらっています。やっぱりヒートは若いチームですよね。そういう勢いはしっかりと活かしていければいいなと思っています。
ただ逆を言えば、若い分、経験が少ない。そうするとディティールで差がつくな、とすごく感じています。細かい部分を少しずつ伝えていって、基準やレベルが上がった状態でラグビーができれば、もっと上に行けるのかなとは感じます。
――同じく今年加入した重選手も、同じようなことをおっしゃっていました
そうですか。少しの違いが、大きな部分に表れることを知っているんでしょうね。
たとえば今日のフォワードミーティングで、僕はスクラムを組む時の肩の位置や角度など、もっと突き詰められる部分について話をしました。そしたら「確かにそうだね」とみんなも言っていて。でも言われなかったら、きっとそういう所は気にしなかったと思うんですよね。
別に、気にしなくてもラグビーは出来るんです。だけど気にしたら一歩早く動けたり、ちょっと押しが強くなったり、という部分がラグビーにはあって。
まずはヒートがヒートらしく、どういうチームを作っていきたいのか見聞きしながら、その上でプラスアルファのことが出来ればいいなとすごく感じています。
――ヒートらしさとは、どういう所でしょう
多分、みんなが模索している段階だと思います。一つ一つの成功体験を積み上げながら、自分たちで今まさに作り上げているところかな、と。昔あったものをきちんと掘り起こしたり、今感じることを言語化していったり。そういう作業の中で作り上げていけたら良いんじゃないかな、と思っています。若いチームだからこそ、みんなで作り上げるプロセスが必要です。
フロントロー陣の前に出る力も勢いもある。いかに技術的に改善して、更に上に目指せるか 【三重ホンダヒート】
体の強い選手、前に出られる選手がいますね。もちろんそういうプレースタイルではない選手もいますが、個々人が自分のキャラクターを知って、ブラッシュアップすることが大切です。
これから開幕に向け練習も激しくなってくると思うので、その中でいかにまとまりをもって成長できるか、というのが一つ大事なポイントだと考えています。
1人1人が強くなるのは個人に任せます。チームとして強くなるためのエッセンス、たとえば話し合ったり、コネクションの部分で周りと感じ合えたり、という部分をもう少し丁寧にやっていきたいなと思います。
――「周りと感じ合える」というのはどういう感覚でしょう
ラックで1人足りなかったら反応できること、そのラックに入った人のポジションを埋める別の人がいること、などです。あとはディフェンスで1人飛び出した場合ですね。ヒートのディフェンススタイルって飛び出すのが売りなんですけど、飛び出した先でコネクションできるかどうか。本当にそういう細かい部分が勝敗を分けるので、コネクションとコミュニケーションが大事になってきます。
――レベルが2つ、3つ上がったラグビーが今シーズン見れそうだなと感じました
どこのチームも強化しているので、成長しないと上は目指せません。
もっと言うと、ずっと同じラグビーをしていると、頭が凝り固まってしまうことがあるんですよね。だからこそみんなに「視野を狭くすんなよ」とはずっと言っています。
ラグビーって毎年ルールも変わるし、やり方も変わるし、トレンドも変わるんです。だから取り残されないよう、歳を取っても柔軟な頭でいないといけないんですよね。勉強して、アップデートして、柔軟性を持ってラグビーできるか、が成長には大事だなと感じています。アップデートしないと、成長はありません。
アップデートし続ける重要性
神戸製鋼時代に2年間、鐘史さんと一緒にプレーさせてもらった経験があります。その時、ロッカーが隣だったんですよ。当時鐘史さんは最年長だったと思うんですけど、毎日、本当に毎日ラインアウトのノートを取っていらっしゃったんです。ここが空いている、こういうサインを作った、など毎日ノートに書いて勉強する姿を間近で見ていて。そういう所がすごいな、と思っていました。
コーチになられた今も試行錯誤されていますし、新しいものを取り入れ常にアップデートし続ける姿勢は、見ていて本当に尊敬します。
――先ほどの「アップデートしないと成長はない」というお話と繋がっていますね
ラグビーというスポーツは、1年間何もしなかったら本当に置き去りにされて、ただの身体能力だけで戦うプレイヤーになってしまうんですよね。だから鐘史さんの姿勢はとても勉強になりますし、僕も何か求められればアドバイスさせてもらえれば、と思っています。若いチームなので、コーチだけじゃなくて選手も主体的に動けるよう、橋渡し的な存在になりたいなと思います。
ラグビーとは「人生の修行みたいなもの。勉強させてもらっています。」 【三重ホンダヒート】
まずは試合に出て、ヒートのスタイルを確立するために貢献したいです。
試合の勝ち負けはシーズン通して色々あると思います。だからこそ自分たちの形を、「こうやったら勝てるんだ」という成功体験を少しずつでも刻んでいき、「こういうチームで俺らは勝っていくんだ」ということをメンバーにも伝わるようにプレーすることが今の所のゴールです。
――金井選手ご自身は、どのような姿をファンの方々に見て欲しいでしょうか
セットプレーで、みんなが盛り上がっている姿は良いですよね。セットプレーでトライを取って、フォワードバックス一体となってみんなで喜び合う瞬間を見て欲しいですね。ペナルティを取っただけでもみんなで集まって喜べるようなチームになればいいな、と思っています。
――たくさんの笑顔を楽しみにしています。では最後にファンの皆様へメッセージをお願いします
今年から加わりました。皆さんが見ていて面白いラグビーをしたいと思いますので、応援のほどよろしくお願いします!
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