スクラムは、僕しか出来ない 〜vol.1平野叶翔【三重ホンダヒート新人インタビュー】

三重ホンダヒート
チーム・協会

【三重ホンダヒート】

今年のお正月に行われた、全国大学ラグビーフットボール選手権大会・準決勝。一躍時の人となったのが、平野叶翔選手だった。
主将として京都産業大学を23年ぶりの関西大学リーグ優勝に導き、大学選手権では国立競技場の舞台にも立った。そして今、幼い頃からの憧れであった三重ホンダヒートへ加入。
ヒートで目指す夢、そして「子どもたちの憧れになりたい」という目指す選手像について話を聞いた。

平野叶翔(ひらのかなと)三重県桑名市出身。西陵高校(愛知県)→京都産業大学。180cm/110kg。ポジションはプロップ(3番) 【三重ホンダヒート】

男3兄弟は全員ラガーマン。兄を追ったラグビー街道

――平野選手は何と言っても『叶翔(かなと)』というお名前が印象的です。由来を教えてください
夢を叶えて羽ばたける人になれるように、という願いを込めて『叶翔』になったそうです。男3兄弟の次男なのですが、全員『叶』という字が入っています。

――素敵な想いが込められていますね。小さい頃はどんなお子さんだったのでしょう?
元気があって、体を動かすことが大好き。小学生の頃から体も大きくて、活発な男の子でした。
大人になって多少落ち着いた所はあるかもしれませんが、今でもコミュニケーションを取ることは変わらず好きです。人と話すことが楽しいですし、そういう明るい部分はあんまり変わってないなぁと思います。

――ご実家が焼肉屋さんだそうですね。小さい頃からたくさんお肉を食べて育ったのでしょうか?
みんなにそう言われるのですが、実はそんなに食べないんですよ(笑)自宅とお店が離れているので、お店の焼肉はあまり食べなかったですね。

趣味はスニーカー集め。YouTubeでボディービルダーの筋トレや食事動画を見ては、参考にしている。最近はヒートの選手たちと実家の焼肉を食べに行き、先輩にご馳走してもらっているそう 【三重ホンダヒート】

――ラグビーとの出会いについて教えてください。何歳からどこでラグビーを始めたのでしょうか
お父さんがラグビーをやっていたので、1回試しに、と兄弟全員で連れて行ってもらったのが9歳の時でした。そしたら凄く楽しくて。3人同時にラグビーを始めました。
2歳の頃からずっと水泳をやっていたので、小学6年生までの3年間はラグビーと水泳を両立していましたね。水曜日の夜と土曜日の午前中にラグビーをして、土曜日はそこから午後水泳。土・日と練習や試合も入っていたので、休日は完全にスポーツ三昧でした。
僕の親が「好きで始めたことを、自分の都合で辞めるのはダメだ」という育て方をしてくれたおかげで、続けることの大事さを学んだように思います。

――小さい頃の憧れの選手はどなたでしたか
ずっと尊敬していたのはお兄ちゃんです。兄弟全員同じ高校・大学でラグビーをしたのですが、僕はずっとお兄ちゃんを追いかけてきたんですよね。2歳違いなので高校は1年、大学は2年被っているのですが、僕からしたらどこも先輩たちが僕を知っている状態からのスタート。おかげでラグビーがしやすい環境だったのですが、でもお兄ちゃんは何も知らない所に1人で行っています。特に高校は県を跨いで通っていたので、そういう所はやっぱり僕には出来ないですし、それでラグビーを大学までやりきるって難しいことだと思うので、尊敬しています。
もちろんこれまでに喧嘩はいっぱいしましたけど、でも仲は凄く良いです。友達みたいな感じですね。

――座右の銘を教えてください
大事にしていることは、『ひたむきさ』を忘れずにいようということです。小・中学生の頃に指導してくれた西川さん(現・三重県スクール選抜監督)が京都産業大学出身で、ひたむきさを大事にされている方でした。僕自身が京産に入ってからも、大西先生(大西健 元監督)や鐘史さん(伊藤鐘史 前監督、現・三重ホンダヒートFWコーチ)、広瀬さん(広瀬佳司 現監督)にまた、ひたむきさを教えてもらって。僕のラグビー人生の中で『ひたむきさ』というのはとても大事な言葉になりました。
ただ思うに『ひたむきにやれているかどうか』は他人が決めることであって、自分自身で「ここがゴールです、ここまでやればひたむきです」っていうのがないんですよね。より愚直に真面目に、自分が出来ることをやり続ければ、そういう評価に繋がるんじゃないかと思いながらプレーしています。

――基準が他人にあることを芯に据える。強くないとできないですね
そういう育て方をしてもらって、そういう環境でラグビーが出来ていたことに感謝ですね。良い環境でラグビーが出来たなって思います。

ライバルは同期で同じポジションの星野選手。共感し合い、高め合うことが出来る仲だ 【三重ホンダヒート】

「また戦おう」を叶えるために

――三重県で生まれ育ち、名古屋の高校に通いました
東海地区の中では、愛知県が1番ラグビーが盛んです。高い次元で競争出来る愛知県に出るのがベストだと感じて、西陵高校に進学しました。

――そこから大学は京都産業大学へ。4年次には共同キャプテンの1人として23年ぶりの関西大学リーグ制覇に貢献されました。大学選手権でも準決勝まで進み、帝京大学戦では大きなインパクトを残されましたね
大学選手権の準々決勝では、同じ関西大学リーグの同志社大学が帝京大学に大差で敗れていました。なので京産と帝京との試合も、帝京が勝つだろうってみんな思っていたと思うんですよね。結果的には負けてしまいましたが、でもあのような競った試合(37対30)をしたことでいろんな人から「見たよ」「感動した」ってメッセージを頂いて。4年間ラグビーを続けて、最後にあのような試合が出来て良かったな、って思いました。

――準々決勝の日本大学戦も1点差でした。タフな年末年始を戦い抜いた要因は何だったのでしょう
関西大学リーグの中でも、10点差以内の試合が何試合もありました。接戦で勝ち切ることをリーグの中で体現できていたので、それが大学選手権へと繋がったかなと思っています。
それでも帝京は強かったですね(笑)試合後、細木(当時の帝京大学キャプテン、現・東京サントリーサンゴリアス)が「強かったよ」って言ってきれくれたんですけど、帝京こそが強かったです。細木とはセットプレーの話だったり、試合内容だったりも短い間ですが話をして。「また戦おう」と約束しました。来シーズンはDivision1でやり合わないとダメですね。

――平野選手は大学以外でもキャプテンのご経験はあるのでしょうか
小学校の時だけです。高校でもリーダー職だったわけではないですし、ちゃんとしたキャプテンは大学が初めてでした。
とても大変でしたが、責任を与えてもらうのは割と好きな方。やりがいを感じられるし、上に立てば立つほど言葉の重みも違ってくる。そういう所の楽しさを経験させてもらいました。選手自身が発信する大切さも実感したので、キャプテンとしての経験をヒートで活かしていけたらな、と思っている最中です。

――いずれはヒートでもキャプテンを?
キャプテンですか・・・まだまだ荷が重いです(笑)

ターニングポイントは昨秋の同志社大学戦。春シーズンで敗れており、キャプテンとしてリベンジを胸に挑んだ試合だった。「5週連続ゲーム中のタフでタイトなゲーム。ラスト5分での逆転勝ちは良い成功体験になりました」 【三重ホンダヒート】

スクラムは僕しか出来ない

――三重県出身の平野選手にとって、ヒートとはどういう存在だったのでしょうか
僕らの1番上のチームがヒート、という感覚でした。トップリーグ時代も色んなチームが鈴鹿に来てヒートと試合をしていたので、まさに僕にとって憧れのチーム。だから大学時代「どこに行っても良いならヒートに行きます」と監督には伝えていました。

――そんな憧れのチームに入団して早5か月。D1への昇格を目指し戦った昨シーズンでしたが、結果的にD2残留となりました。入替戦の2試合をどのようにご覧になられていましたか
チーム自体も若いですし、元気あるチームです。上下関係が良い意味であまりなく、コミュニケーションを取ってくれる先輩方がいっぱいいることが嬉しいです。良い環境に恵まれながらラグビーしているな、と感じます。
5月に行われた入替戦には出場できなかったのですが、チームとしてやりたいこと、やるべきことは僕も知っていました。客観的にどこが足りないか、をグラウンド外から見ることができたので、それは凄く良い経験になったと思います。僕自身初めての入替戦だったので、独特の雰囲気、またそこに向かうチームの姿を経験したことは大きいですね。

――その経験を今シーズンどのように活かしていきましょう
絶対に乗り越えなければいけないステージが入替戦です。そこはしっかりとシーズン通して、上には上がいるということを見据えて準備を積まないと、チーム自体が上がっていかないと思います。そのことを大前提として、よりチームを高められるように日々練習していきます。

――ご自身のプレーの強みを教えてください
プロップにしては意外と走れる所、それからジャッカルを強みにしたいなと思っています。手先は割と器用な方ですし、中学時代1年だけセンターをやっていたのでフィールドワークも得意です。
だからこそ、セットプレーはしっかりと強化していきたいと思っています。一番の課題はスクラム。フィールドプレーは15人で助け合うことが出来ますが、やっぱり僕の仕事はスクラム。まずはそこをクリアしないと、試合には出られないなと思っています。スクラムは、僕しかできないことです。

――「スクラムは僕しか出来ない」カッコイイですね。プロップを目指している子どもたちに勇気を与える言葉だと思います
プロップ目指す子どもはいないですよ、好んでプロップを目指す子はいないです(笑)僕もプロップをやりたかったわけではなく、体が大きかったので必然的に「デカいしプロップ行けよ」となったんですよね。出来るならばプロップはやりたくないです(笑)

夢は、三重ホンダヒートを優勝させること

――平野選手自身はヒートの中でどういう存在になっていきたいのでしょうか
そうですね。僕から発信できるような選手になりたい、と思っています。フィールドで戦うチームの1人としてラグビーをすることはもちろん大事ですが、僕の存在価値をもっともっと出して「あいつじゃないと出来ひんな」ということを、もっともっと自分でやっていければなと思っています。
具体的に言うと、キャプテン経験は皆にあるわけではありません。むしろキャプテン経験者の方が少ないので、そのノウハウを活かして、声掛けや行動でよりチームを前に動かす、ポジティブな方向に向かせることができたらいいなと思っています。

――最終的にはどのようなラグビー選手像が目標ですか
「平野叶翔みたいな選手になりたい」と思われるような人になりたいですね。子供たちの憧れとして、ああいう選手になってみたい、と思われるような選手になりたいです。

――それは格好良いですね。ラグビー選手としてではなく、平野叶翔としての夢はありますか
三重ホンダヒートを優勝させることです。ラグビーは個人スポーツじゃないので、僕だけの夢は、あんまり考えたことがないです。

――描くキャリアパスの中に、日本代表はどういうタイミングで入ってきているのでしょう
目指したいなと思いますし、なれたらいいなとも思います。ですがまず僕の立ち位置として、ヒートで試合に出続けることが優先です。チームにとって必要な存在であることが最優先で、その先にジャパン。まずはチームにとって必要な存在になることに重きを置いています。

――必要な存在となるために、セットピースを強化し、チームをポジティブに導く、ということですね。迎える今シーズン、まずはファーストキャップを楽しみにしています。最後に、平野選手からファンの皆様へメッセージをお願いします
フレッシュマンとして、新人として、試合に出てグラウンドで僕のプレーを発揮できるように努力し続けるので、試合を見に来て頂けると有難いです。ホスト・ビジター制度なので、ホストゲームの良さをより出していくためにも、グラウンドに来て頂けるととても力になります。ぜひ、たくさんの応援をお願いします!
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