【浦和レッズホーム最終戦特集ファイナル】親友の説得、ケガとの戦いを経て決断。阿部勇樹、現役最後のホームゲームへ
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90分間チーム全体で闘い、勝利した前日の試合の影響か、はたまた味方への指示や称賛の声を出し続けていた酒井宏樹が参加していた影響か、トレーニングは活気に溢れていた。
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その直後のGKを含めて6対6のゲーム形式のトレーニング。そこかしこにスペースがあり、常に動き続けなければならない。
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その一方で、楽しむことも忘れない。リフティングゲームでは他の選手の滑稽な失敗に大笑いする。サッカーテニスでは制限時間ギリギリの最後の味方のアタックがバーに当たってボールが自分たちのコートに戻ってくると、チームメートの酒井宏樹、関根貴大とまるで申し合わせたように、そろって両手で頭を抱え、ほぼ同時に崩れ落ちた。
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「阿部ちゃん、もう1年やれるんじゃない?もう1年やろうよ」
興梠慎三は、阿部に何度もそう伝えた。
今年が勝負。今年が最後かもしれない。現役引退発表会見の場でようやく阿部が公にした10ヵ月前からの気持ちを、興梠は世間よりもずいぶんと前から知っていた。
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興梠は何かあれば、阿部に相談した。でも、阿部はあまり相談してこない。阿部が興梠を信頼していないわけではないことは言うまでもなく、阿部はそもそも人に相談することがほとんどない。興梠はそれを知っている。
それでも、「今年で最後かもね」と何度か聞いた。その度に興梠は、阿部を説得した。自分でも「しつこい」と思うくらい、何度も。まだ、一緒にプレーしたいから。
それでも、阿部の意志は固かった。
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その時点で興梠はもう、何を伝えられるかを察した。
「阿部ちゃんが決断したことは尊重する。でも、さみしいよ」
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「今年が始まった時点である程度、最後の年になるのではないかと考えていた」ことに加えてもう一つ、現役引退発表記者会見で阿部が明かしたこと。それは、「本来ならもっと早く引退するべきだったのかな」という気持ちだった。
この数年はケガとの戦いだった。
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阿部はもう何年、無理をしていたのだろう。
J1リーグの出場が2年合計で14試合にとどまった2019年、2020年を経て、今季は開幕戦から先発出場し、CKから今季のチーム初ゴールを決めた。
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しかし、出場時間が10分に限られたJリーグYBCルヴァンカップ グループステージ 第2節 柏レイソル戦の翌日に行われたJエリートリーグ 第1節 北海道コンサドーレ札幌戦で先発出場すると、前半で負傷した。
約1ヵ月間、試合にして4試合離脱して復帰すると、そこから公式戦14試合中11試合に出場。先発出場した明治安田生命J1リーグ 第13節 ベガルタ仙台戦では、FKを直接決めた。
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しかし、6月下旬にまたも負傷。6試合の欠場を経て、8月9日にアウェイの札幌ドームで行われた、明治安田生命J1リーグ 第23節 北海道コンサドーレ札幌戦で88分からピッチに立ったことを最後に、ここまで3ヵ月余り、メンバーにも入れていない。
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別メニュー調整は9月下旬まで続いた。信頼する野崎信行アスレチックトレーナーと時に笑顔でコミュニケーションしながらも、真剣にリハビリに励む阿部の姿は目を引いた。その背中は、目を離すことを意識しなければ、ピッチでトレーニングしているチームを見られないほどだった。
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そのときもう、阿部は引退を決断していた。
それでも阿部は、復帰した。
「練習したことが試合に出る。だから勝つためにはもっと練習しなければいけない」
試合のたびにそういった趣旨の発言を繰り返してきた阿部は、今週も試合に向けて全力でトレーニングに励んできた。
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メディアに対しても一般に対しても記者会見を『クラブからの重要なお知らせ』としたのは阿部の願いであり、ファン・サポーターに対して「自分の口から感謝とこういう決断をしたことをお伝えしたかった」からだ。
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阿部の言葉や姿勢は、仲間を導く力がある。
例えば昨年は試合に出られず悩んでいたルーキーの武田英寿に声をかけて、自分の経験を伝えながら悩みを解きほぐした。例えばどんなときでも朝早くクラブハウスに来ることを含めた日々の過ごし方で、今季のルーキーである大久保智明に長く現役生活を続けてこられた秘訣を伝えた。
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11月27日、埼玉スタジアム。4年前にアジア王者になった記念日の2日後もまた、我々にとって大事な日になる。
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