【浦和レッズホーム最終戦特集第2弾】努力と思わず努力を続けてきた10年間。槙野智章がホームゲームで見せる最後の姿
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同い年のクラブスタッフがつぶやいた。
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しかし、槙野智章は、そう言われても事もなげな表情を浮かべる。
人それぞれ、試合に向けた調整方法がある。ベストコンディションで臨めるならば、全体トレーニング以外に全く体を動かさないことも、止められるまで居残りトレーニングをすることも正解だろう。
どれだけハードなメニューを課されても、全体トレーニングが終わると、シュートを打って、打って、打ちまくる。それが槙野の日課だ。
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その明るさを武器に、クラブを、サッカーを、Jリーグを、槙野智章を世の中にアピールし、それらの価値を上げるためにさまざまな発信を行ってきた。
だが、あまり努力をひけらかすタイプではない。何かが起きた後、「実はこんなことがあったんですよ」と種明かしをすることはあっても、「これだけやってるんですよ」と自慢することはない。
「でもさ、俺は自分で言っちゃうタイプなんですけどね」
そう自覚している。ならば、なぜ言わないのか。
「うーん…」
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敢えて見せない、話さない努力もあるが、それをつまびらかにしないことを美学としているわけではない。
答えを知らないからだ。言い換えれば、こちらが思う努力を彼は、努力だと思っていないからだ。
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「みんな一生懸命やるし、努力しているんだろうけど、僕はそれを遊びの感覚に変える。例えば走りもそうだし、筋トレでもそうだけど、どうせやるなら楽しくトレーニングを終わらせたい。本当ならきつい練習だろうけど、そういうマインドを変えることによって乗り越えてきたことがあるから」
趣味を仕事にしない方がいい、という人もいる。2番目に好きなことを仕事にしなさい、という人もいる。仕事にすると楽しめなくなる。趣味だったはずのことが楽しめなくなれば、息抜きができなくなり、精神衛生上よくない。それが主な理由だろう。
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そしてもう1つ、努力を努力と思わない理由がある。努力を努力と思えない理由、と表現した方が正しいのかもしれない。
「レッズにいるから周りにうまい人がたくさんいる。いい指導者にもたくさん出会えた。だからしっかりやらないといけないと思える。代表のようなトップの場所にいけば、また刺激をもらえるし、もっとやらなきゃいけないと思う。自分の中でやっているつもりでも、それ以上にもっとやっている人が周りにいる。だからいつも、『もっとやらないと』って思うんです」
そう思えたことを、槙野はよどみのない表情でこう表現した。
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努力を努力と思えず、もっと努力しなければと思い続けた一つの成果が、無駄のない鍛え抜かれた肉体、丸太のような太ももだ。肉体的には下り坂に入っているはずの年齢で、まるで衰えを知らない。それは決して若いころの貯金などではなく、常に鍛え続けてきた結果だ。
ピッチに立ってからと同じように、ピッチに立つための準備は手を抜かない。
19年ACL決勝後 【©URAWA REDS】
一般的に「盲腸」と言われる急性虫垂炎は、経験したことがある人はもちろん、そうではない人もイメージがつく病気だろう。腹痛が起こってから投薬治療を行うか、手術するか。いずれにしてもその間、数日である。
19年の槙野 【©URAWA REDS】
トレーニングに参加できないこともあった。病院からスタジアムに直行し、90分間プレーして、試合後にも病院へ。そんな日もあった。
ACL上海上港戦では、元ブラジル代表のフッキ選手を抑え込んだ 【©URAWA REDS】
2019年にレッズが戦った公式戦はJ1リーグ34試合、YBCルヴァンカップ2試合、天皇杯3試合、FUJI XEROX SUPER CUP1試合、ACL14試合の計54試合。そのうち槙野が欠場したのは、J1リーグ2試合、天皇杯3試合の5試合のみ。49試合に先発出場し、48でフル出場。試合数も出場時間もフィールドプレーヤーでチーム最多。まさにフル稼働で2年ぶりのACL決勝進出に大きく貢献した。
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ただ、槙野は声帯ポリープができたことを、レッズの選手としての誇りだと自覚している。コロナ禍で声を出した応援はできないが、大音量の太鼓と手拍子に熱いサポートを感じる。その中で人一倍声を張り上げ続けた結果が、ポリープだからだ。
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今季は9月以降、先発出場の機会が減った。それでも準備を一切怠らず、9月5日にアウェイの等々力陸上競技場で行われたJリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ 準々決勝 第2戦 川崎フロンターレ戦では、1点ビハインドの90+4分に準決勝進出を決めるゴール。
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阿部勇樹がメンバーから外れると、キャプテンマークを巻く機会も増えた。途中出場が増えても、試合ではウォームアップの際に選手に声をかけて先頭で出るなどチームを引っ張る役割を担い続けた。
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「練習が終わったあとにも何度か呼ばれて、『槙野からも今日の練習の雰囲気が緩いと思ったら厳しい言葉を投げてほしい』と言われました。若いチームだし、敢えて厳しく言って、空気を変えたり、ロッカールームもそうだけど、そういう言葉を発してほしいと言われます」
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「『うるせえな』とか『また槙野がワーワー言ってるよ』とか思う選手もいるかもしれませんが、自分がしっかりやっていないとみんなも聞く耳を持ってくれませんし、言う側にも責任が出てきます。言う立場だからこそ人一倍やらないといけないし、僕もこの立場になっていろいろと勉強させてもらっています」
昨年7月、クラウドファンディングの支援者のお子さんを対象にオンライン授業が行われた。『先生』として参加したのは、阿部勇樹と興梠慎三。
2人が子供から質問される。
「浦和レッズで一番役立つDFは誰ですか?」
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「槙野選手です。なぜかと言うと、楽しくみんなで遊ぶときもあるけど、しっかりとやるときはやる。みんなの元気がないときに声を出してくれる。彼はすごくいろいろなものを持っているDFだと思います」
そして、質問者に対して「誰が頼りになると思う?」と聞き返し、「僕も槙野選手です」と答えられると、阿部は「じゃあ槙野選手に伝えておくね」とうれしそうに笑った。
生粋の人たらし。それだけに誤解を生むこともあったが、直接コミュニケーションを取った人で彼を嫌う人はほとんどいない。
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ファンサービスを終えると、他の選手はとっくにいなくなったグラウンドで「今日は○時間やった!」と、そこは自慢気に言いながら、うれしそうにクラブハウスに引き上げていく。
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27日に行われる明治安田生命J1リーグ 第37節 清水エスパルス戦【MATCH PARTNER J:COM】は、10年間闘い続けてきた、埼玉スタジアムで迎えるホーム最終戦。
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それが有言実行になるのか、それともファン・サポーターの前でも…どちらも真実の槙野。まずは試合に向けた最大限の準備を行い、埼スタのピッチで槙野らしい姿を見せてくれるに違いない。
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