【マッチプレビュー】2021年度天皇杯1回戦 いわきFC対ソニー仙台FC
【©︎IWAKI FC】
現在、ともにJFLで鎬を削る両チームは、2018年の天皇杯1回戦で初対決している。
この当時、いわきFCは東北社会人二部南リーグに所属していた。2018年の天皇杯1回戦は、アンダードッグのいわきFCがJFLの強豪・ソニー仙台FCに挑む、という図式。「いわき市を東北一の都市にする」というスローガンを掲げてチーム強化を進めていたチームにとってリーグ優勝は既定路線であり、天皇杯こそ、自分達の力を全国に知らしめる格好の機会だった。
いわきFCの天皇杯本戦初出場は、田村雄三監督体制1年目の2017年。1回戦で北海道代表のノルブリッツ北海道を大差で破り、2回戦では北海道コンサドーレ札幌を延長戦の末、5対2で撃破。今も語り継がれるアップセットにより、いわきFCの名は全国区となった。
天皇杯でのソニー仙台FCとの戦いは、この翌年のことである。
2018年5月26日。場所はいわきグリーンフィールド。天皇杯JFA第98回全日本サッカー選手権大会1回戦にて、両チームは激突。いわきFCのスターティングメンバーには、当時3年目のFW平岡将豪、当時2年目のGK坂田大樹、MF金大生ら、今もチームの核として活躍する選手達が入っている。
対するソニー仙台FCには、現在はいわきFCに在籍するDF田中龍志郎とFW鈴木翔大が在籍。この試合、田中は3バックの左で先発出場。鈴木は負傷のため出場していない。
東北勢同士の一戦は白熱した展開となった。序盤、ペースをつかんだのはいわき。前半9分、FW小野瀬恵亮が右足を振り抜き先制ゴール。その後もいわきは、持ち前の走力で再三ゴールへ迫る。仙台は守備を固めつつ徐々に反撃し、28分にMF藤原元輝選手がヘッドで同点ゴール。
後半に入っても、仙台の巧みなディフェンスの前に、いわきはチャンスを作れない。そして60分、田中龍志郎がインターセプトしたボールを自ら運び、サイドを駆け上がる藤原選手へパス。藤原選手が巧みなシュートでネットを揺らし、これが決勝ゴールに。いわきFCはソニー仙台FCの経験値と技術の前に、1対2で屈した。
天皇杯での過去の対戦はソニー仙台FCに軍配が上がった 【©︎IWAKI FC】
そして対決から2年。いわきFCはJFLの舞台へステップアップし、ソニー仙台FCと肩を並べた。昨年10月18日のJFL第24節で、両チームは再び激突。だが、またしても試合巧者ぶりを見せたのは仙台。いわきFCはCKからの失点をきっかけに、1対2で再び屈した。
このように、過去の対戦でいえば相性は悪い。だが今の戦力、戦績で語るなら、ソニー仙台FCは勝てない相手ではまったくない。
ただし、油断は禁物だ。ソニー仙台FCは5月9日に行われた天皇杯宮城県代表決定戦で、コバルトーレ女川を相手にアディショナルタイムの追加点で勝利している。ポイントを押さえた熟練の勝負強さは、このチームの大きな武器に違いない。
果たしていわきFCはこの東北勢対決を制し、再び天皇杯の舞台で旋風を巻き起こすことができるのか。田村監督、村上アナリストの談話を紹介しよう。
「相手のことは、それほど意識していない」田村雄三監督
ソニーさんのメンバーは、昨年からそれほど大きく変わっていない印象です。攻撃は連動して『崩し切る』イメージ。速さやショートカウンター、高さがあるわけではなく、戦力面、戦術面で見ても相性が悪い相手ではありません。
意識しているのは、トップ下のMF佐藤碧選手。CB陣がFWの動きに引っ張られると、縦の関係にいる佐藤選手の動きが厄介になるでしょう。先週のJFL第9節には出場しておらず、ベンチ入りもしていませんでした。彼が出てくるかどうかはとても気になりますし、メンバーを決める一つの要素にもなるでしょう。
ただし『相手がこうだから、こう』ということは、あまり意識していません。もちろん相手の情報はある程度持っていますが、大事なのは自分達のストロングをどう出すか。個人個人がしっかりとチャレンジ&カバーを実行できれば、大きく崩されることはないし、必ず勝てると考えています。
交代も含めて、90分間をどう戦うか。どんな選手を最初に使ってどういう選手をサブに残すか。そして、自分達のよさをいかに出すか。そのためにフォーメーションをどうするか。悩みどころはそこです。
【©︎IWAKI FC】
この試合、カギを握るだろうと思う選手が何名かいます。ソニーさんの両SBは高い位置を取るので、SBとCBの間でボールを引き出すプレーが大事。この能力でいえば、1人目は岩渕弘人。彼はもともとFWですが、福島ユナイテッドFC戦ではトップ下で先発、JFLの高知ユナイテッドSC戦ではサイドハーフで途中出場し、いずれの試合もいいプレーをしてくれました。
もう一人が、ここ2試合でスターティングメンバーから外れているMF金大生。悔しい思いをしているはずなので、起用したら頑張ってくれると思います。ソニーさんは左からの攻撃が強いので、そこを彼の攻撃力で抑え込めたら、試合を有利に運べるはずです。
そしてFWの鈴木翔大。ここしばらくゴールが出ていませんが、数字に表れない貢献度はかなり高い。古巣・ソニー仙台FCさんから、久々のゴールを奪ってくれることを期待しています」
「前半の立ち上がりをしのげばチャンスは広がる」村上佑太アナリスト
ただし、負けた試合もチャンスの数は明らかにソニーさんの方が多く、決めていれば大勝していたであろうゲームもありました。そこから考えると、今年もJFLで上位に食い込んでくるのは間違いありません。
特に、先制したゲームは強い。前半の立ち上がり10〜25分ぐらいまでは、どの試合もしっかりペースを握っています。ボールの引き出し方、回し方、運び方。立ち上がりはすべてがいい形で回っていて、そこでゴールできれば勝てている。でもそこで点が取れず、我慢し切れなくなって前がかりにチャレンジした結果、ボールを奪われてカウンターを受ける。これが今年の失点のパターンです。つまりこちらから見れば、前半の立ち上がりをしのげばチャンスは広がるでしょうし、先制点を取れれば優位に立てるはずです。
フォーメーションは4バック。両サイドハーフは外に張らず、インサイドでFWとトップ下に近い位置でプレーするので、4-2-2-2という印象です。警戒すべきはMF佐藤碧選手。トップ下の位置から自由に動き、空いたスペースに顔を出してボールを受けるのはかなり上手い。
そして左サイドハーフの藤原元輝選手は、試合の流れがよくない状況でも個人で打開して点を取れる。その能力はリーグ有数でしょう。右利きの左サイドハーフで、内に切れ込んでプレーできるので、自由にさせると危ない。特に、CBのベテラン荻原健太選手から彼に一気にパスを通す展開には、注意が必要です。
昨年JFLでの対戦はセットプレーでの失点に泣いた 【©︎IWAKI FC】
難敵を圧倒し、再びジャイアントキリングを。
2018年にソニーに敗れた後、2019年は1回戦で宮城県代表・仙台大と対戦。現在いわきFCでプレーする岩渕弘人、嵯峨理久の二人にゴールを決められ、3対2で逆転負けを喫した。そして2020年は1回戦で山形県代表・大山サッカークラブに大勝するも、2回戦で同じJFLのラインメール青森に3対0で敗れている。
今年こそ勝ち進み、再びJクラブとの真っ向勝負を見せてほしい。
今季無敗の勢いそのままに2回戦へと駒を進めたい 【©︎IWAKI FC】
ぜひ会場にて観戦ルール順守の上、気持ちのこもった拍手で、いわきFCの選手達の熱き戦いを後押しいただきたい。
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