19年ぶり戴冠のスポルティングCP、無敗優勝ならず! 守田英正所属のサンタ・クララは欧州カップ戦出場へ前進【リーガNOS第33節レビュー】

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【©LigaPortugal】

リーガNOS(ポルトガル1部)の第33節が現地14日から16日にかけて開催された。日本人選手たちもプレーした今節の全9試合のレビューをお届けする。

ロウレンシーがジル・ヴィセンテを勝利に導いた 【©LigaPortugal】

【パソス・デ・フェレイラ 0-2 ジル・ヴィセンテ(藤本寛也所属)】

 勝利すれば1部残留が確定するジル・ヴィセンテは、開始11分で先制に成功する。FWロウレンシーがFWペドロ・マルケスとのパス交換でペナルティエリア左に侵入し、角度のないところから相手GKの足もとを抜くシュートでゴールネットを揺らした。対するパソス・デ・フェレイラは来季の欧州カップ戦出場権獲得を決めている上位クラブだったが、この日は不発。なかなか効果的な形でチャンスを作れなかった。そして52分にミスから追加点を奪われてしまう。ジル・ヴィセンテのペドロ・マルケスに自陣内で横パスをカットされ、独走からのフィニッシュを許してしまった。この試合に2-0で勝利したジル・ヴィセンテは降格圏との勝ち点差を8ポイントまで広げ、来季の1部残留が確定。冬の移籍市場でスポルティングCPから期限付き移籍加入したペドロ・マルケスは5得点2アシストと大車輪の活躍を披露し、即戦力の補強選手として、チームの1部残留決定に大きく貢献した。ジル・ヴィセンテに所属するMF藤本寛也は90分から途中出場したものの、与えられた時間が短く目立った活躍は見せられなかった。

【スポルティング・ブラガ 2-1 モレイレンセ】

 4位が確定しているスポルティング・ブラガは、最終盤のPKで劇的な勝利を収めた。まず41分にFWアベル・ルイスが、MFアンドレ・カストロのクロスをゴール前でコントロールして豪快にゴールへ叩き込んでブラガに先制点をもたらす。その後は前半終了まで立て続けにピンチを迎えたが、相手の決定力不足にも助けられて無失点でハーフタイムに突入した。後半もブラガが優位に試合を進めていながら、87分にモレイレンセのFWラファエウ・マルチンスにヘディングシュートで同点ゴールを奪われてしまう。しかし、引き分けかと思われた後半アディショナルタイムにドラマが。モレイレンセのMFダビド・シモンがブラガのMFジョアン・ノヴァイスの放ったボレーシュートを手でブロックしてしまい、ハンドの判定。これで得たPKをノヴァイスが自ら決めて95分に再び勝ち越したブラガが辛くも勝ち点3をもぎ取って3試合ぶりの勝利を飾った。

【ボアヴィスタ 1-0 ポルティモネンセ(安西幸輝&中村航輔所属)】

 残留争いの直接対決となった一戦は、粘り強く攻めたボアヴィスタの執念が実る結果となった。71分、コーナーキックのこぼれ球を拾ったMFセバスティアン・ペレスがミドルシュートを放つと、ゴール前でMFジャクソン・ポロソが触ってコースを変え、ボールはゴールの中へ。この1点が決勝点となり、ボアヴィスタが勝ち点3を手にした。前節終了時点で2部3位との入れ替え戦に回る16位だったボアヴィスタは、自動残留圏内の15位に浮上した。最終節はすでに1部残留を決めているジル・ヴィセンテと対戦するが、まだ自動降格圏転落の可能性もあり気は抜けない。一方、安西幸輝がフル出場したポルティモネンセも14位で降格圏とは3ポイント差と残留が確定しておらず、最終節のスポルティング・ブラガ戦を終えるまで厳しい戦いが続く。

同じリスボンに本拠地を置く宿敵ベンフィカがスポルティングCPの無敗優勝を阻止 【©LigaPortugal】

【ベンフィカ 4-3 スポルティングCP】

 前節で19年ぶりのリーグ優勝を決めたスポルティングCPには、無敗優勝がかかっていた。しかし、その夢は優勝した次の試合で潰えることとなってしまった。12分、MFピッツィからのスルーパスを受けたFWハリス・セフェロヴィッチが繊細なループシュートでベンフィカに先制点をもたらすと、29分にはFWエヴェルトンの絶妙なヒールパスからピッツィも飛び出してきたGKをあざ笑うようなループシュートで追加点を挙げる。さらに37分にはDFルーカス・ヴェリッシモがピッツィの左コーナーキックに頭で合わせて3点目。華麗なパスワークで相手を翻弄したベンフィカが一挙に3点のリードを奪った。窮地に立たされたスポルティングCPは前半アディショナルタイムにMFペドロ・ゴンサウヴェスが反撃の狼煙となる1点を返した。だが、後半に入ると49分にセフェロヴィッチがPKで4点目を挙げ、リードを再び3点に広げた。スポルティングCPも必死に反撃したが、1点差までしか詰められず。無敗記録は32試合で途切れ、無敗優勝の可能性はなくなった。この試合で2点ずつを決めたベンフィカのセフェロヴィッチとスポルティングCPのペドロ・ゴンサウヴェスは、ともに20得点で得点ランキング首位に並んでおり、最終節では得点王争いにも注目が集まる。

【ファレンセ 1-0 トンデラ】

 17位からの逆転残留を目指すファレンセにとっては極めて重要な一戦だった。しかし、28分にDFセザール・マルチンスが、52分にはMFアミン・ウドリニが負傷で交代を余儀なくされてしまう。この逆境からファレンセを勝利に導いたのは絶対的支柱としてチームを引っ張るキャプテンのMFライアン・ゴールドだった。終盤の75分、自らフィニッシュのためにゴール前へ走り込むと、ペナルティエリア内で相手選手に倒されてPKを獲得。この絶好機をゴールド自らが冷静に沈め、この1点が決勝点に。今季9得点7アシストとチーム総得点の半分以上に絡むエースの活躍で勝ち点3を積み上げたファレンセは最終節を残し、2部3位との入れ替え戦プレーオフに回る16位に浮上した。最終節のサンタ・クララ戦の結果しだいでは自動残留確定の可能性も残されている。

【リオ・アヴェ(食野亮太郎所属) 0-3 ポルト】

 リーグ2連覇を逃したポルトだが、モチベーションは失われていなかった。56分、右サイドバックで起用されたMFジョアン・マリオの絶妙な浮き球のスルーパスにFWトニ・マルティネスが抜け出してゴールネットを揺らす。さらに59分、今度はFWメフディ・タレミのお膳立てを受けたFWルイス・ディアスがペナルティエリア内で果敢に仕掛けて右足一閃。わずか3分ほどで2点のリードを手にした。68分にMFセルジオ・オリヴェイラも加点したポルトは3-0で快勝し、2位を確定させて来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権も獲得した。一方、敗れたリオ・アヴェは自動降格圏の17位に転落。最終節はすでに2部降格が決まっているナシオナルと対戦し、逆転での1部残留を目指す。なお、リオ・アヴェに所属するU-24日本代表FW食野亮太郎はポルト戦に72分から途中出場し、後半アディショナルタイムにGK強襲の惜しいシュートを2本放ってゴールを脅かした。これまでなかなか決定的な活躍を見せられていないが、最終節ナシオナル戦でチームを残留に導ければ一躍ヒーローだ。

守田英正が所属するサンタ・クララは欧州カップ戦出場なるか 【©LigaPortugal】

【ベレネンセス 0-2 サンタ・クララ(守田英正所属)】

 序盤の9分にFWカルロス・ジュニオールのPKで先制したサンタ・クララだったが、その後はベレネンセスに再三チャンスを作られてしまう。しかし、ピンチのたびにGKマルコ・ペレイラがファインセーブでゴールを死守し、サンタ・クララの1点リードで前半を終えた。後半に入って60分、右サイドをドリブルで持ち上がったFWクリザンの折り返しにカルロス・ジュニオールが合わせてサンタ・クララがリードを2点に広げる。ベレネンセスは68分にフリーキックからDFゴンサロ・シウバがゴールネットを揺らすも、わずか9cmのオフサイドと判定されて得点は認められなかった。2-0で勝利したサンタ・クララは他会場で引き分けた6位のヴィトーリアSCと勝ち点で並んだ。最終節のファレンセ戦の結果しだいでは順位が逆転し、来季のUEFAヨーロッパカンファレンスリーグ出場権獲得の可能性も十分にある。リーグ戦19試合連続フル出場のMF守田英正は、サンタ・クララに欧州カップ戦出場権をもたらせるだろうか。

【ファマリカン 3-0 ナシオナル】

 冬の移籍市場でファマリカンに加入したMFイヴォ・ロドリゲスは、まさしく救世主のごとき活躍でチームを残留に導いた。3月下旬からリーグ戦7試合で6得点2アシストと驚異的なパフォーマンスで攻撃をけん引。この試合でも1得点1アシストと気を吐いた。39分に左足のミドルシュートで先制点を挙げると、2-0で迎えた80分にはゴール前でやや強引に仕掛けてMFフェルナンド・ヴァレンズエラの得点を演出した。ファマリカンはリーグ戦3連勝で来季の1部残留が確定。一時は最下位に沈んでいたが、3月のイヴォ・ヴィエイラ監督就任と、それにともなうイヴォ・ロドリゲスやFWイバン・ハイメの覚醒が残留を大きく引き寄せたのは間違いない。一方、敗れたナシオナルは最終節を残し、1年での2部降格が決定してしまった。全体的なクオリティ不足と守備の緩さは最後まで改善されず、2月中旬から4月下旬にかけての10連敗を取り戻すことはできなかった。

【マリティモ 0-0 ヴィトーリアSC】

 4月に入ってから好調だったマリティモは、上位のヴィトーリアSCとスコアレスドローを演じて勝ち点1を上積み。この結果、降格の可能性がある16位との勝ち点差が4ポイントとなり、最終節を残して来季の1部残留が確定した。シーズン中に3度にわたって最下位を経験しながら、今年3月に就任したフリオ・ベラスケス監督のもと終盤戦で地道にしぶとく勝ち点を積み重ねての残留決定だ。一方、大不振に陥りながらも前半戦の貯金もあって6位をキープし続けてきたヴィトーリアSCは6位陥落の危機だ。最終節のベンフィカ戦で勝ち点を落とし、他会場でサンタ・クララがより多くの勝ち点を獲得した場合、欧州カップ戦出場権を取りこぼしてしまう危険性が出てきた。最終節の相手は国内屈指の強豪だが、なりふり構わず捨て身で勝利をもぎ取りにいかなくてはならないだろう。
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著者プロフィール

ポルトガル・リーグはポルトガルのプロサッカーリーグです。プリメイラ・リーガ(またはリーガ・NOS)とも呼ばれる1部リーグは1934年に開設され、現在18クラブで構成されています。

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