【独占】元東京ヴェルディ・藤本寛也、特別インタビュー(2)。無敗スポルティングCPから決めた初ゴールを語る

ポルトガル・リーグ
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【©LigaPortugal】

 2020年夏にJ2の東京ヴェルディからポルトガル1部リーグのジル・ヴィセンテへ移籍した藤本寛也は、チームの主力選手の1人として活躍を続けている。特別インタビューのパート(2)では、19年ぶりのリーグ優勝を達成したスポルティングCPから決めた初ゴールを中心にピッチ上でのパフォーマンスについて語ってもらった(インタビューは2021年3月中旬に収録)。

<<特別インタビュー パート(1)は関連リンクをチェック>>

――ポルトガルリーグの特徴の1つとして、縦にすごく速いということが挙げられると思います。ジル・ヴィセンテは相手に押し込まれる展開の試合も多く、右ウィングで起用されることの多い藤本選手もゴール前まで守備に戻って、味方がボールを奪ったら、今度は相手のゴール前まで数十メートルのスプリントをかけてチャンスに絡むことが求められます。その中で、自身の成長や変化をどう感じていますか?

「そもそも僕の持ち味は、ビルドアップの助けになったり、タメを作ったり、そこからチャンスを作って、パスやシュートで攻撃にリズムを生んで、チームをより活性化させることだと思っています。でも、ジル・ヴィセンテで試合を重ねていくと、押し込まれて守備をする時間帯はすごく増えます。

その中で自分が4-3-3の右ウィングや3-4-3で3トップの一角をやることが多く、カウンターの時に守備へ戻って、そこから長い距離を走って……とやらなければいけないことが多い。そういう試合がずっと続いて最初はすごく戸惑いました。自分は長い距離を走るタイプではないし、走ることで他の選手よりズバ抜けているとは言えません。

ただ、だんだんチームが試合を重ねていくうちに守備の時間帯も減っていって、自分の持ち味を出せていけると思うので、自分のためになったかなと思います。カウンターの時にパスで局面を変えることだったり、なるべくボールをキープして味方のラインを上げることだったりは得意なので、相手がボールを取り返しにきても、そこで取られない技術や体の入れ方などで学ぶ部分は多いかなと思っています。これまで自分にわからなかったことがプレーしていくうちに増えていって、そういうところを伸ばしていけるようになったので、自分のプレーの幅は広がりました」

――自分の苦手だったプレーを伸ばし、選択肢の幅を広げられた今、ポルトガルリーグで学んでいることを仮に違う環境で表現したら、大きく変貌した「藤本寛也」を見せられるのではないでしょうか?

「もちろん日本時代にやっていたプレーを基準にしながらも、プラスアルファで足りなかったところだったり、自分の能力の低かった部分が少し上がっていると思うので、総合的に少しは上手くなっている気はします。でも、自分が違うプレースタイルの選手になっているイメージはないですね。もし日本代表や東京五輪代表に入ったとしたら、ポルトガルに来てプラスアルファで得たものを見せていけたらいいな、というイメージは持っています」

――先発出場の機会も増えてきて、「ポルトガルの1部リーグなら自分はやっていける」という自信は芽生えてきていますか?

「はい。自信がついてきました。ポルトガルリーグのスピードやパワー、自分のプレーで今までできていなかったことに、練習や試合を重ねて慣れてきています。やっとシーズン後半戦に入ってからですけど、自分のプレーを出せるようになってきたので、ポルトガル1部リーグでもやれる感覚はあります」

藤本寛也は首位スポルティングCPからポルトガルリーグ初ゴールを奪った 【©LigaPortugal】

――新しいことができるようになっていく感覚を味わいながらプレーするのは本当に楽しいのではないかと思います。

「今は、東京ヴェルディの1年目と同じような感覚があります。あの頃の僕は正直、前半戦は何とかごまかしながら、周りについていきながらやっていっている部分は大きかったですけど、徐々に慣れていって、自分も楽しめるプレーができるようになっていきました。さらに今はポルトガルに来ていて、Jリーグの時よりも個人とチームの両面で周りのレベルが上がっているので、それに対して自分のプレーができていることで自信もあるし、サッカーをすごく楽しめています。正直、相手とマッチアップしたら、サイドバックやセンターバックには強くて速い選手が多いので難しいところもあるかなと思ったんですけど、試合前の気持ちも楽になってきているので、今はすごく楽しんでやれていると思います」

――リーグ戦初ゴールは2021年2月9日に行われたリーグ第18節のスポルティングCP戦でした。当時相手は無敗で首位。リーグ最少失点で守備が最も安定しているチームから奪った先制点でしたが、あのゴールは藤本選手にとってどんなものになりましたか?

「正直、試合の時は『スポルティングだから』とか『(相手が)1位だから』とかはあまり意識はしていませんでした。1位ということは知っていましたけど、失点が少ないことも知らなくて。なのでいつも通りの気持ちで試合に臨めました。ゴールを取りたい気持ちはなく、最悪0-0で折り返せればいいかなと思っていて、その中での先制点には自分でも驚きましたね。でも、リーグ戦初得点は嬉しかったですし、ホッとしたところもあって、シーズン前半戦のいろいろな気持ちが表れているゴールかなと思います」

――ようやく結果も出始めているところですが、今シーズン終盤に向けてどんなことを考えていますか?

「まずチームとして多くの勝ち点を積み上げることと、その中で1試合1試合、しっかり自分のプレーを出していくことが一番かなと思っています。試合に出続けることと、加えて結果を少しずつ出していければ。数字以外でも、内容の面で攻守にわたっていいプレーができたらいいですね」

<<特別インタビュー パート(3)へ続く>>

ジル・ヴィセンテに所属する藤本寛也 【©LigaPortugal】

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藤本寛也(ふじもと・かんや)
1999年7月1日生まれ、山梨県出身。ジュニア時代から東京ヴェルディに所属し、ジュニアユースやユースを経て2018年にトップチーム昇格。プロ1年目からヴェルディの主力選手として活躍し、2019年にはU-20日本代表としてFIFA U-20ワールドカップにも出場した。2020年8月からポルトガル1部のジル・ヴィセンテへ期限付き移籍。技術レベルの高さや視野の広さが光る左利きの攻撃的MF。Jリーグ通算49試合出場4得点。ポルトガル1部通算25試合1得点(※成績は2021年5月12日現在)。
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著者プロフィール

ポルトガル・リーグはポルトガルのプロサッカーリーグです。プリメイラ・リーガ(またはリーガ・NOS)とも呼ばれる1部リーグは1934年に開設され、現在18クラブで構成されています。

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