メタバースでスポーツの新時代を切り開く! 仮想空間で楽しむオムロンピンディーズのハンドボール観戦

スポーツナビ

メタバースでの観戦イベントを実施した女子ハンドボールのオムロンピンディーズ。担当者に取り組みの内容、成果などについて話を聞いた 【【提供:オムロン株式会社】】

 新型コロナの感染拡大はスポーツ界に大きな打撃を与えたが、一方で新たな観戦スタイルを確立するきっかけにもなった。

 熊本県山鹿市を本拠地にする女子ハンドボールチーム「オムロンピンディーズ」は昨年11月3日と、今年1月19日の2度、メタバース(仮想空間)でリーグ戦をライブ配信した。自身のアバター(分身)でバーチャルスタジアムを訪れることで、他の参加者と一緒に、現地観戦とは一味違う仮想空間ならではの様々なコンテンツを楽しむことができる。新時代のスポーツ観戦はNHK WORLDでも取り上げられ、世界160の国と地域でニュースが配信されるなど話題になった。

 今回この取り組みが高く評価され、オムロンピンディーズは、さまざまなスポーツ団体の広報・PR・情報発信に贈られる『スポーツPRアワード2023』を受賞。オムロン株式会社ブランドコミュニケーション部ピンディーズ広報担当の藤尾悠さん、同バーチャルコミュニケーション担当の谷口祐香さんに、メタバース観戦を企画した経緯、成果、これからのスポーツ観戦の可能性などについて話を聞いた。

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メタバース観戦イベントに取り組んだオムロン株式会社ピンディーズ広報担当の藤尾さん(左)、同バーチャルコミュニケーション担当の谷口さん(右) 【提供:オムロン株式会社】

バーチャルブースのノウハウを生かし

――この度は受賞おめでとうございます。まずは、オムロンピンディーズがメタバース観戦を始めたきっかけを教えてください。

藤尾 宮崎大輔選手や土井レミイ杏利選手のおかげで、少しずつ「ハンドボール」という名前は知られるようになってきましたが、「試合を観たことがある」「ハンドボールファンだ」という人はまだまだ少ないと思うんです。ですから、私たちのチームに興味を持ってもらうためには、まずハンドボールの面白さを知ってもらわないといけない。その突破口になると考えたのが、今話題の最新技術メタバースでした。ちょうど、オムロンでは、生まれたときからインターネットに触れているデジタルネイティブ世代をはじめ、多様なターゲットと、時間や場所の制約なく対話の機会を創出するため、私たちのビジョンやオムロンの最新技術を紹介する「オムロンバーチャルブース」を運用していました。そのノウハウを生かそうと始まったのがメタバース観戦です。

――メタバース観戦よりも前から、バーチャル空間を使った施策をやっていらしたんですね。

谷口 そうなんです。先ほど藤尾がお伝えした「オムロンバーチャルブース」は、新型コロナの影響が深刻化した2020年に立ち上げました。その後、このノウハウを活かして何かできないかと、オムロンが長年ゴールドパートナーを務めている京都マラソンの関連イベントとして、2022年にトレーナーの方をゲストに迎えた「オムロンバーチャルトレーニング」を開催しました。年齢・性別に関係なく、コミュニケーションをとりながら、どこからでも参加できるので、メタバースは、これまでスポーツが縛られていた「制約」から解放してくれる革新的なツールだと感じました。それで、ピンディーズの試合でもメタバースを活用しようと、昨シーズン(2023年1月)から「メタバースでハンドボール観戦」プロジェクトを立ち上げることになりました。

「メタバース観戦」の撮影風景(2024年1月19日) 【提供:オムロン株式会社】

前例のないプロジェクト…最初の難関は、リーグからOKをもらうこと

谷口 プロジェクトを立ち上げて最初にぶち当たったのは、”リーグの協力を得る”という壁でした。日本ハンドボールリーグは「HANDBALL+NET」という有料の会員制配信サイトで試合映像の生配信・アーカイブ配信を行っています。私たちのように所属チームが生配信することは競合となってしまうので、リーグ内では当初賛否両論あったことと思います。それでも、共感して下さったリーグ関係者のおかげで、「ハンドボール界全体の認知拡大につなげる」という大きな目的を掲げて、プレーオフ全体のスポンサーとして、自チームが勝ち残る、残らないに関わらず、決勝・準決勝、男女全試合で実施するという形で、初年度の開催を実現させることができました。

――その昨シーズンの実績を経て、今シーズンは自チームであるピンディーズの試合でメタバース観戦を実施できたのですね。

谷口 はい。初年度の実績を踏まえて、リーグから「ピンディーズがモデルケースとして、リーグ全体を引っ張っていく存在になってほしい」と、自チームのPRに振り切った形での開催にGOサインを出していただけましたので、今シーズンは放映権の購入という形でピンディーズの魅力を伝えるコンテンツに焦点を当てて開催ができました。

藤尾 そのおかげで、今シーズンは、アウェー戦でメタバース観戦を実施し、ホーム戦に誘導する。つまり、“リアルの来場者数増につなげ、収益化を図る”という仕組みをつくることができました。そのためのフックとして、宿泊券付きホーム戦チケットをプレゼントする施策などを打ち出し、本拠地・熊本から遠く離れた関東の方などにご利用いただきました。

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