来場1万2000人、コスト減、地元にも愛される空手のお祭りウィーク 成功のキーワードは「統合」

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出てきた課題は100個!「お弁当は本当、大事です」

2023年大会を踏まえて出てきた課題はなんと100個にもなったという 【公益財団法人全日本空手道連盟】

――これまでにはなかったKARATE WEEKという試みを2023年、24年と2年続けて開催した中で大変だったこと、あるいは見えてきた課題などはありますか?

笹川 これまで4つの大会はすべて主催団体が違っていましたので、意思の統合がまず難しかったですね。実際にはやったことがない形の大会ですし、また誰の権限がどこまであるのかということも全く整理されていなかったので、そこの調整が一番難しかったです。ただ、やってみたら、中身のコンテンツが変わるだけですので、何事もなく普通に開催することができました。

――大会期間中というよりは、開催するまでが大変だったと。

岡﨑 そうですね。運営しているスタッフは大会によって違うので、そこを横軸でどう連結させてやっていくかに関しては事前に時間をかけて練っていきましたね。

笹川 また、大会によってボランティアさんの基準や審判の資格などちょっとずつ違うんですね。そこの統一化に関してはまだ完全にはできていないのですが、なるべくそれらの違いなどに配慮した上で、KARATE WEEKの統一された基準などについては責任を持って作りました。

――2023年大会から24年大会に向けて改善した点などはありますか?

笹川 まず、23年大会が終わった後に、岡﨑君といっしょに100個の改善点を挙げました(笑)。

――え、100個!?

笹川 はい、100個出ました(苦笑)。

岡﨑 スプレッドシートには実際に100個、並んでいます。キリのいい数字ということで、最後の10個ぐらいは無理やりでしたけど(笑)。

笹川 私の中で1つ印象に残っているのは、やっぱりパラの大会を盛り上げたいと思っていたんです。ただ、大会だけではなく、側面の部分でも盛り上げていきたい。その中の施策の一つとして、出店企業さんに「パラのグッズを1つでいいので作ってください」とお願いしたところ、全ての企業さんがパラ空手を盛り上げたいという同じ気持ちで作ってくれたんです。ただ、1年目の大会当日の途中で出店ブースを見て回ったら、全社合わせて売れ行きがゼロでした。なぜだろうなと思ったのですが、これまでのパラ大会では出店がゼロで、パラの選手ですら自分たちのグッズがあると知らなかったんです。なので急遽、大会中に「パラのグッズ売ってます」と呼びかけたところ、最終的には3個ぐらい売れたのですが、そこの周知が甘かったなと。

 それで24年大会では全社のグッズを集めたパラのブースを作りまして、23年よりはるかに良い売れ行きとなりました。完売までは行きませんでしたが、パラ選手の喜んでいる声もナマで聞くことができたのですごく良かったなと思えた改善点ですね。

岡﨑 意外なところでの改善と言いますと、23年大会ではスタッフのお弁当の評価がめちゃくちゃ低かったんですよ(笑)。KARATE WEEKになってスタッフが3日、4日と続けて稼働している中、毎日同じようなお弁当だと飽きてしまいますよね。なので、モチベーションアップのためにもお弁当選びには力を入れて、めちゃくちゃ時間をかけました(笑)。

 お弁当の件はちょっとした笑い話なのですが、真面目な話ですと、24年のパラ大会は都内のケーブルテレビで解説付きの生中継をしていただけました。これは史上初の試みで、YouTubeでの生配信が好評だったところからさらにバージョンアップできた取り組みでした。トップアスリートの大会だけではなく、パラ大会でも常に新しい環境、取り組みをアップデートできたことはすごく良かったことだったと思っています。

笹川 ちなみに不評だった1年目のお弁当担当は私でした。なので、2年目は担当から外されてしまいました(苦笑)。

――(笑)。他のスポーツ団体さんからKARATE WEEKのようなイベントを開催したいと相談を受けた時に、「まずはお弁当です」とアドバイスできそうですね。

笹川 ええ。お弁当は本当、大事です(笑)。2年目のスタッフアンケートでの評価は爆上がりでしたし、5点満点中でほとんどが5点の回答だったので良かったなと思っています。

――ちなみに、2024年大会を終えての課題はいくつぐらいになったのでしょうか?

岡﨑 60個ぐらいですね。ちょっと減りました(笑)。

「統合」で未来を切り拓いていく

キーワードは「統合」、今後は全国都道府県も一体になって空手を盛り上げていく 【公益財団法人全日本空手道連盟】

――では最後に、KARATE WEEKの今後の展望や全日本空手道連盟さんとして将来やっていきたいことなどを教えていただけますか?

笹川 まずKARATE WEEKに関しては、2025年大会は子どもたちの出場人数が2倍に拡大する予定です。もっと盛り上げていきたいですし、より多くの子どもたちの思い出に残るような夏のお祭りにしていきたいと思っています。また、今回の受賞をきっかけにこれまでとは違う角度、違う方々に向けてイベントを伝える機会にもなると思いますので、メディアなどを通じてもっとアピールしていきたいですね。

 一方、連盟としては今、「武道ツーリズム」に力を入れ始めています。これは空手をあまり見たことがない人に向けて、エンタメとして空手を開拓していこうというコンセプトでやっております。昨年12月の全日本選手権で初めて実施しまして、特別シートでの観戦のほか、選手たちのアップ風景を見ることができたり、天皇盃・皇后盃と一緒に記念撮影ができるなどプレミアムな体験となっています。今年1月には京都でも武道ツーリズムのイベントを実施ました。空手をエンタメとして見ていただくほか、観光客の方たちをターゲットにした施策としてもやり始めています。

 空手そのものを盛り上げるのはもちろん、より多くの方々に受け入れられるような空手の見せ方、伝え方に今、注力しているところです。どんな角度でもいいので、1秒でも2秒でも空手を見ていただける人たちを開拓していきたいと取り組んでいます。

岡﨑 KARATE WEEKに関しては私たち中央競技団体だけがやるのでは不十分だと思っています。「大会の統合」という一つの手法が各都道府県の連盟にも浸透していけば、意味がより出てくると思っています。各地域とも人口が減っていると思いますし、大会一つでは今後成立していかないのではないかと考えたことも、今回の企画・コンセプトの始まりでもありました。ですので、各都道府県・地方の大会が統合していくことで大会が失われずに、しっかりと成立していく形が続いていけば、それが巡り巡って空手の普及振興にもつながっていくと思います。そのきっかけにKARATE WEEKがなっていけばすごく嬉しいなと思います。

笹川 「統合」というものが空手の中でもキーワードになっていまして、連盟内の各委員会もこれから統合が始まっていきます。そうした組織的な統合と合わせて、各地域の大会イベントの統合もすでに始まっているんですね。と言うのも、一昨年の全国事務局長会議でKARATE WEEKの効果を例に挙げて統合の大切さを訴えたところ、昨年の同じ会議では半分くらいの地域から「私たちも統合を始めました」という声が挙がっていました。

――それだけKARATE WEEKをきっかけに「統合」に向けた意識が浸透し始めたということですね。

笹川 それは少子高齢化の中にいる日本の将来の姿でもあり、統合していかないと消滅してしまうと思うんです。銀行や学校でも統合が各地でありますよね。連盟としてもイベントの統合はせざるを得ない時代に突入していると思いますし、そのやり方、課題は共通していると思いますので、KARATE WEEKの経験を皆さんに伝えることで一緒に打破できたらいいなと思います。

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