新エース宮城大弥。左打者を制圧した投球スタイルの変化とは

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オリックス・バファローズ 宮城大弥投手 【写真:球団提供】

宮城大弥投手 年度別成績 【ⓒデータスタジアム】

 プロ2年目の2021年以降、オリックスの先発投手陣をけん引し続けている宮城大弥投手。初の開幕投手を務めた昨季は左大胸筋の筋損傷による約1カ月間の離脱や、シーズン最終登板で降雨コールドに見舞われる不運などもあり、4年連続の規定投球回には惜しくも届かず。それでも防御率1.91の好成績をマークするなど、抜群の安定感でローテーションを支えていた。

進化を見せた左打者へのピッチング

宮城大弥投手 対左右打者別被打率・奪三振割合 【ⓒデータスタジアム】

 今回、そんな宮城投手のデータで注目したいのが左右打者別の成績だ。昨季は対右打者の被打率が.234だったのに対し、対左打者はキャリアで最も低い被打率.195をマーク。また、対左の奪三振割合は26.4%まで大きく上昇するなど、左バッターに対する成績が軒並み向上していたのだ。好成績をもたらした対左のピッチングにおいて、一体どのような変化があったのだろうか。

ストレートの投球割合が増加

宮城大弥投手 対左打者球種別投球割合 【ⓒデータスタジアム】

 まずは、左打者に対する球種別の投球割合を見ていこう。一般的に左投手が左打者と対戦する際は、速球と曲がる系の変化球が中心の配球となり、フォークやチェンジアップといった落ちる系の割合は低くなる傾向にある。これまでの宮城投手も同様の傾向が見られたなか、昨季はさらにカーブやチェンジアップといった緩い変化球の割合を減らし、ストレートの割合を55.4%まで増加。緩急を駆使したピッチングを得意とする宮城投手であるが、昨季は左バッターに対して例年以上に速球を中心とした投球を見せていたのだ。

威力が増し、左打者攻略のカギとなったストレート

宮城大弥投手 ストレート平均球速・対左打者成績 【ⓒデータスタジアム】

 投球割合が増えたストレートを掘り下げてみよう。昨季は自己最速の155km/hを計測するなど、平均球速は147.0 km/hまでアップ。これは先発投手のリーグ平均である146.6 km/hを上回る数字であり、先発左腕としてはトップクラスの数値だ。次に左打者へストレートを投じた際のデータを見てみると、昨季は被打率.219、スイング奪空振り率14.7%といずれもキャリアで最も良い数字をマーク。また、ストライク率でも例年以上の数値を残しているのを見るに、力強さを増しながらも一定の精度を保っていることが分かるだろう。優秀な成績を収めているストレートは、左バッター攻略のキーとなったといえるはずだ。

決め球・スライダーの成績も向上

宮城大弥投手 スライダーの対左打者成績 【ⓒデータスタジアム】

 続いて注目したいのが、ストレートとともに左打者対戦時の軸となっていたスライダーだ。左打者に対しては以前から安定した数字を残している球種だが、昨季はあらゆる項目で成績が向上。特にボールゾーンスイング率は前年から著しく上昇していた。結果的にボール球で打者のスイングを誘う割合が増えたことで奪空振り率も前年からアップ。三振を奪うウイニングショットとして例年以上に機能していたといえる。

2024年パ・リーグ先発投手 対左打者K/BBランキング 【ⓒデータスタジアム】

 威力の増したストレートとスライダーのコンビネーションで、左打者相手に一層の好成績をマークした宮城投手。奪三振能力の向上は前述したとおりだが、持ち味であるコントロールの良さも変わらず健在だ。上記の表は、投手の制球力を示す指標であるK/BBを左打者対戦時に限定したランキングだが、宮城投手はコントロールが自慢の好投手たちを抑えて1位にランクイン。左バッターに対してリーグ屈指の強さを見せていたのだ。

 新たに背番号18を背負って2025年シーズンに臨む宮城投手は、岸田護新監督からすでに今季の開幕投手に指名されるなど、大きな期待が寄せられている。オリックスの背番号18といえば、23年までは3年連続で投手4冠を達成した山本由伸投手(現ドジャース)が背負い、その前は岸田監督が10シーズンにわたって身に付けた番号だ。進化を続けるエースが今季も投手陣をけん引し、チームを2年ぶりのリーグ優勝に導く。

※文章、表中の数字はすべて2024年シーズン終了時点

文・データスタジアム
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