混戦が予想される全国高校サッカー選手権 識者が選ぶ注目の8校は

サッカー新聞 エルゴラッソ

帝京(東京B)/出場:15年ぶり35回目

【Masashi Tsuchiya】

帰ってきたカナリア軍団。センターに実力者、2列目に多彩なアタッカー

 実に15年の時を経て、再び選手権の舞台に帰ってきた。今季から就任した藤倉寛監督の下、ポゼッションをベースとした複数人が関わるアタックを武器に、アグレッシブなスタイルを標榜。予選決勝では「今シーズンで一番のゲーム」と藤倉監督も口にする内容で國學院久我山に逆転勝利を収め、全国へとつながる重い扉をこじ開けた。

 GK大橋藍、CB田所莉旺、MF砂押大翔、FW森田晃といった実力者がセンターラインに軸を通し、2列目には宮本周征や杉岡侑樹をはじめとした多彩なアタッカーがズラリ。攻撃にさまざまな色を加えていく。「入学してから『日本一』だけを掲げてきた」とキャプテンの砂押。国立での開幕戦からカナリア軍団の復活劇がスタートする。

日章学園(宮崎)/出場:3年連続18回目

【Akihiko Kawabata】

原体制5年目。“日章史上最強”の可能性を秘める新世代とともに

 35年指揮を執った早稲田一男氏が19年度を最後に定年退職。あとを継いだのは、その教え子でもある原啓太監督だ。現役時代はクレバーでガッツもあるMFが監督に就任し、5年目を迎えている。時代を築いた名将のあとを引き継ぐのはしばしば困難なものだが、外野からのプレッシャーにも打ち克ち新しい日章学園を確立してきた。

「やるのは子どもたちですから」と自発的な取り組みを促しつつ、ピッチ内外で情熱ある指導を続けてきた。高岡伶颯の潜在能力を見抜き、世代最強FWへと導いたのは、その最たる成果。「自分たちが現役のころとは比べようもない」と言う“日章学園史上最強”となる可能性を秘める新世代を率い、恩師も得られなかった栄冠を狙う。

青森山田(青森)/出場:28年連続30回目

【Yuki Matsuo】

前年度王者・山田。逆境でこそ“らしさ”が顔を出す

「お前がそんなんでどーすんだよ! 一番分かってるだろ! なんで強く言わねえんだ!」

 今秋のプレミアリーグで柏U-18に逆転負けした直後、激しい言葉をぶつけ合う選手たちの姿があった。正木昌宣監督が「守備の厳しさという“青森山田らしさ”がなくなっている」と険しい顔で話した試合内容は、今季の勝ち切れない試合に通底するものだが、試合後に本気で言い合う選手たちの姿は、まさに「青森山田らしい」ものでもあった。“らしくなっていく”過程にも思える。

 今シーズンは苦難が先行した。選手権に向け負傷者も出てしまい、必ずしも状況はよくなさそうだが、こういうシーズンこそ、最後の選手権で“青森山田らしさ”が顔を出すのかもしれない。

帝京大可児(岐阜)/出場:6年連続11回目

【Masayoshi Morita】

成熟を迎える“テイカニスタイル”。予選5戦21発の絶対エースも

 テンポよくパスをつなぎながら相手のゴール前まで持ち込むのが“テイカニ流”だが、これまでは前進できてもシュートに持ち込めず、つないで終わる試合も少なくなかった。そんな現状を打開するため、相手DFの前ではなく、背後を狙う“突破”を昨年から徹底的に意識。総体は2回戦で敗れたが、チームの進化を感じさせた。

 前年の経験者が多数残る今年は、スタイルの成熟が進む勝負の年。全ポジションに判断よくパスを出せる選手がそろい、どこからでも前進できる。さらに予選5試合で21得点を奪ったFW加藤隆成という絶対的な点取り屋がいるため、複数得点が期待できることも強み。過去最高の8強入りは「ノルマ」と言っても過言ではない。

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