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遠藤航が“偽CB”として圧巻のパフォーマンス 「マッチ・フィット」は少しも鈍っていない

森昌利

三笘は強烈なボレーで見せ場を作ったが本人の反応は素っ気なく

前半のブライトンは守備的に戦い、あまり前に出なかった。そんななかで三笘(右)は21分に強烈なダイレクトボレーでゴールを脅かした 【写真:REX/アフロ】

 3日後の21日、ブライトンがアウェーでウェストハムと戦った試合は、残念ながら低調というしかない内容だった。

 ブライトンはこの試合の前まで、リーグ戦では4戦連続未勝利。2試合前のレスター戦では、2-0とリードしながら終了間際の約5分間で2点を失って悪夢の2-2ドロー。前戦のクリスタルパレス戦ではセットプレーが得意な相手の罠にはまる展開となって、ホームであれよあれよという間に3点を奪われ、1-3の完敗となった。

 こうした最近の嫌な流れが、31歳の青年監督であるファビアン・ヒュルツェラーの采配に影響したのだろうか。このアウェー戦、特に前半はブライトンが高い位置でプレスをせず、相手の動きを見る形で守りに人数を割き、消極的に試合を進めた。

 しかし後半になってようやくブライトンが押し上げた。すると後半6分、主将ルイス・ダンクが相手GKウカシュ・ファビアンスキとの競り合いに勝って頭で落としたボールに、マッツ・ウィーファーが右足を合わせて先制した。ところが、そのわずか7分後にウェストハムMFモハメド・クドゥスに同点弾を許し、結局1-1の引き分けに終わって、またもや勝ち点3はお預けとなった。

 三笘薫には前半21分に見せ場があった。両軍合わせてシュート数がわずか5本だけだった見応えのない前半の、最大のチャンスでもあった。

 ペナルティエリア内右寄りの位置でボールを持ったFWジョアン・ペドロがファーサイドでフリーの三笘を見つけると、技ありのループパスを送った。そのボールが相手DF陣の頭上をふんわりと越えると、日本代表MFが左足でジャストミート。角度があまりない難しい位置からだったが、至近距離から強烈なボレーシュートを放った。けれどもボールはファビアンスキの正面に飛び、39歳ポーランド人GKが両手をそろえて弾いた。

 試合後、「いいシュートだったが」と話しかけたが、「いや、(GKの正面に飛んで)コース行ってないんでそこまで、ですね」と素っ気ない返事だった。

 これで5試合連続未勝利。翌日、日曜日開催の5試合が終わると、順位も二桁の10位に落ちた。そんなチームの不振もあると思うが、先制点を奪いながらまたしても引き分けに終わった試合を“振り返って”と聞かれた三笘は、「勝たないといけない試合だったと思います」と憮然とした表情で語った。

若いヒュルツェラー監督に迷いが生じている

これでブライトンはリーグ戦で5試合連続勝利なし。結果が出ないことで、若いヒュルツェラー監督の采配には迷いが見られる 【Photo by Crystal Pix/MB Media/Getty Images】

 直近5試合の結果は、三笘でなくても本当にフラストレーションが溜まる。シーズン序盤のブライトンは絶好調だった。来季の欧州チャンピオンズリーグ出場も夢ではない快進撃だった。絶対王者のマンチェスター・シティも2-1でねじ伏せた。

 ところがリバプールにアウェーで1-2と逆転負けを喫すると、その1カ月後からフラム、レスター、クリスタルパレス、ウェストハムと下位チームとの対戦で勝ち点を落とし続けた。

 そんな勝てないチームの状況について尋ねられると、三笘は「監督の戦術通りに動いてやれることをやってますけど、それで自分たちの個人の技量がないってところで引き分けたりしてるところがある」と話すにとどまった。

 三笘の「監督の戦術通り」という言葉をそのまま受け取れば、ウェストハム戦の前半の消極策も監督の戦術、指示だったということになる。

 レスター戦の悪夢のドローに続き、クリスタルパレスに戦術面で完敗したことで、必要以上に失点を恐れ、いつもの攻撃的な姿勢を封印し、相手の動きを見るような戦い方を選んだのだろうか。そうだとしたら、若いヒュルツェラー監督に迷いが生じているのだろう。

 三笘も再三言っているが、今のブライトンには切り替えが必要だ。そして、もしも勝ち星から遠ざかっていることで指揮官の心の中に疑念や不安が生まれているとしたら、まずはそこを断ち切って切り替えなければならない。

 家に帰ってきて、週末の日課である『マッチ・オブ・ザ・デイ』を見た。するとウェストハム対ブライトンはこの日の5試合のうち最後に放送された。このハイライト番組では英国全土のフットボールファンが注目する一戦から始まり、見どころが一番少なかった試合を最後に見せる。

 確かに今回のウェストハム戦は、筆者が見た今季のブライトンの試合で最もつまらない一戦だった。しかしそんな試合をしたからこそ、これをどん底として、ブライトンには今こそ浮上のきっかけをつかんでほしい。

 まずは若い監督に開幕当初の挑戦者の姿勢を取り戻してほしいと願う。好調の後に訪れた不振により揺れている気持ちを立て直し、マッチ・オブ・ザ・デイの初っ端に放映されるような、見どころ満載のポジティブな試合を展開してもらいたい。

 近年のブライトンの躍進は、チャンピオンシップ(英2部リーグ)との降格・昇格を繰り返していた当時の“負けたくない”守備的なフットボールから、ゴールを奪って勝ち点3を狙う積極的なフットボールに脱却して実現したものである。

 驚異的なスカウト力で技術の高い無名の若手選手を集め、グラハム・ポッター、ロベルト・デ・ゼルビと攻撃志向の強い監督が続いて選手を鍛え、ボールを支配するフットボールで結果を出してきた。

 近年のブライトンが継続してきたアグレッシブな姿勢を取り戻し、後半戦には開幕当初のように失点してもさらに取り返すゴールラッシュを見せてほしい。そして、そんな攻撃的なブライトンの左サイドで、三笘が華麗に舞う姿を見せてくれることを心から願っている。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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