稲葉監督から直々「決勝はスタメン外すから」 松田宣浩が語る世界一の舞台裏【第2回プレミア12】

田尻耕太郎

形勢を逆転した山田哲人の本塁打

決勝の韓国戦で逆転3ランを放ち、ベンチで迎えられる山田哲人 【写真は共同】

――松田さんが出場した2013年のWBCと2015年の第1回プレミア12は、日本はともにベスト4(3位)。第2回プレミア12は、松田さんにとって初の国際大会の決勝戦でした。

 結果的にこの大会が僕にとって、侍ジャパンで最後の試合でした。ずっと「3位」で悔しい思いをしてきたので、球場の雰囲気も演出も異なる決勝の場に立てているだけで嬉しかったです。

――決勝は1回表、先発の山口俊がいきなり3失点。ベンチに動揺などはなかったですか?

 嫌な空気にはあったし、韓国にはそう簡単には勝てないと思いました。でも、2回裏に山田哲人選手が逆転3ランを打って、一気に試合をひっくり返しました。それ以降は日本がリードした状態で試合を進められたので、あの一発は本当に大きかった。東京ドームの雰囲気もすごかったし、僕も自分が打ったかのように喜びました。そんな気持ちになれたのは、試合に出ていなかったからこそだと思います。

――3対5とリードして迎えた9回表。第1回大会の嫌な記憶は頭をよぎりませんでしたか?

 いやいや、そんなことは考えませんよ。前向きな気持ちだけでした。最後のアウトをとってベンチからマウンドの方へ駆け出したとき、本当に嬉しかったです。侍ジャパンで初めて経験した優勝でしたから。

――鈴木誠也選手が大会MVPに輝きました。

 よう打つなと思いました。右打者だけど打率を残すし、とにかく体が大きいと感じました。

――大会終了後に稲葉監督が「(決勝でスタメン外にした)松田に申し訳なかった」「だけど彼を呼んでよかった」と話していました。その言葉をどのような気持ちで聞きましたか?

 逆に僕が申し訳なかった。選手として結果で示さないといけないのに。最後、表彰式でトロフィーを担がせてもらったのを覚えてます。だから全然、苦い思い出ではないです。個人としては結果が出なかったけど、侍ジャパンの一員としてプレミア12初優勝を飾ったわけですから。

プレミア12初優勝を果たし、球場内を一周する稲葉篤紀監督と選手たち 【写真は共同】

「熱男」継承者は誰に!?

――そして2024年11月、侍ジャパンは第3回大会で連覇に挑みます。井端監督は亜細亜大学の先輩ですね。

 先輩であり、侍ジャパンで一緒にユニフォームを着たこともありますから、本当に素晴らしい戦いを見せてほしいの一言です。

――今回も有望な若手選手が多く選ばれていますね。

 いい経験をたくさんしてほしいなと思います。特にDeNAの牧選手には期待がかかるんじゃないですか。

――松田さんがいない今の侍ジャパンで「熱男」を継承するのは?

 内野の牧秀悟選手(DeNA)と、外野の森下翔太選手(阪神)やね。牧選手もそうなんだけど、森下選手も“いい匂い”で野球をする、僕が好きなタイプの選手ですね。また、ピッチャーでは戸郷翔征投手(巨人)、高橋宏斗投手(中日)がエース格、抑えは大勢投手(巨人)かな。あと源田壮亮選手(西武)が年長者として、どれだけチームを引っ張れるかでしょうね。

昨年11月に行われた「アジアプロ野球チャンピオンシップ」、決勝の韓国戦で本塁打を打った牧秀悟。第3回プレミア12にも選出された牧の打棒に期待が高まる 【Photo by Gene Wang/Getty Images】

――松田さんは現役時代、スマートに野球をやるだけじゃダメなんだと言っていました。国際大会では気持ちの強さもより大事になるのでは?

 そうなります。勝っている時はいいけど、初戦や2戦目で負けると、ズルズルいくのが代表戦の特徴なんです。そんな時、誰がチームを立て直すのか。元気のある選手が必要なんですよ。投手はずっとベンチにいるわけじゃないから、やっぱり野手の中でリーダーをつくらないといけない。岡本和真選手(巨人)や万波中正選手(日本ハム)が残念ながら故障で出場できなくなったので、牧選手、森下選手に期待したいですね。

――これまでの大会のように、第3回大会に出場した選手の中から、未来のスター選手やメジャーリーガーが生まれることへの期待もありますよね?

 国際大会を経験したことで新しい景色を見て、感じて、メジャーへの夢を具現化する選手は多いと思います。プレミア12に選ばれることで、選手は大きく成長できるし、そこで得たものを日本の野球界に還元してほしい。自信も課題も必ず見つかる、やりがいのある大会です。

 今回のメンバーの中から、第1回大会に出場した大谷投手のように、将来メジャーで大活躍する選手が生まれると思うし、次世代のスーパースターが誰なのか、見つける楽しみもあると思います。

松田宣浩(まつだ・のぶひろ)

松田宣浩さん 【アスリート・マーケティング提供】

2005年、亜細亜大学から大学生・社会人ドラフト希望枠で福岡ソフトバンクホークスに入団。08年に三塁手としてレギュラーに定着すると、11年に初の全試合出場を果たす。15年から19年にかけて5年連続で全試合に出場し、15年はキャリアハイとなる35本塁打、94打点をマーク。23年に巨人に移籍し、同年に現役引退。通算成績は打率.265、1832安打、301本塁打、991打点。勝負強い打撃に加え、ゴールデングラブ賞を8度受賞するなど、守備にも定評があった。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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