「やっておいて良かった」カタールへの旅 U-16日本代表、“失敗して成長する世代”だからこその経験値

川端暁彦

カタール経由カタール行き

最終戦の舞台ともなったカタールのアスパイア・アカデミー。施設に関しては紛れもなく世界最高水準である 【撮影:川端暁彦】

 最後に、カタールとの最終戦についても少し触れておこう。

 ワールドカップ(W杯)開催も経験した中東の雄は、来年からU-17W杯の開催権を何と“5大会連続”で取得している。これまで世界各地域の持ち回りで開催されてきた大会を継続開催することとなった。

 今回の代表チームはその第一世代。カタールのA代表はユース年代以降に海外から選手を“帰化”させる強化策で成功を収めた経緯がある。逆に下の年代からの育成に関しては、外国人指導者の招へいやインフラ整備で莫大な投資を行っている一方、必ずしもうまくいっているわけではない。

 カタール人に生まれ落ちた時点で豊かな暮らしが約束されている国だということもあり、そもそもサッカー選手を本気で志す若者が非常に少ないとも聞く。そう考えると、運動の得意な子がスポーツへ真剣に取り組むのが当たり前になっている“文化”が存在する日本のような国とは違った難しさがあるのだろう。

 そうした点から言えば、U-17W杯の連続開催も何かの刺激になればという考えなのかもしれない。

 日本に大敗したことでカタールは予選敗退となってしまい、来年のU17アジアカップには出られない。ただ、U-17W杯には開催国としての出場が決まっている。能力の高い選手はいるので、本気の強化策を施すであろう今後を考えれば、またチームとして違う姿が見られるかもしれない。

 ただ、試合中、ピッチ脇で選手をロボットのように動かそうとして怒鳴り続けている監督の姿を見ると、ちょっと心配になってしまった。試合を終えて悔しさのあまり泣いている選手もいたそうなので、指導者は「失敗から成長する世代」として期待してほしいとも思う。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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