MLBポストシーズンレポート2024

「前回優勝時にも肩を脱臼した選手がいましたよね」 負傷を吉兆と捉える、大谷翔平のメッセージ【WS第3戦】

丹羽政善

10月28日(現地時間)に行われた、ドジャースとヤンキースによるWS(ワールドシリーズ)第3戦。ドジャースは先発ウォーカー・ビューラーが5回無失点と好投し、2対4で勝利。大谷翔平は3打数無安打だった 【Photo by Rob Tringali/MLB Photos via Getty Images】

 最後、ヤンキースは一矢を報いたものの、焼け石に水。大勢に影響はなかった。

 ドジャースは、初回にフレディ・フリーマンの2ランで2点を先制すると、小刻みに加点。そのまま逃げ切った。3勝0敗としたドジャースは、明日勝てば、スイープで8度目のワールドシリーズ制覇を達成する。

ドジャースは初回、フリーマンの3戦連発となる2ランで先制した 【Photo by Luke Hales/Getty Images】

 試合前は「出るのか?」「出ないのか?」。そんな話題で持ちきりだった。

 それは当然、10月26日(現地時間、以下同)の試合で左肩を亜脱臼した大谷翔平のことで、28日午後4時にスタメンが発表され、そこに大谷の名前を見つけると、フィールドにいたメディアが一斉にスマートフォンに目を落とし、SNSで一報を伝えた。

 もっとも、最終的な決断は、試合前の打撃練習で状態を確認してからということだったので、まだスクラッチされる可能性があった。しかし、プレーボールの瞬間、大谷は足跡ひとつない、まっさらなバッターボックスに足を踏み入れた。

左手でユニホームを掴んでいた理由

塁上にいるときも、ダグアウトで祝福されるときも、大谷翔平の左手はユニホームを掴んだままだった 【Photo by Daniel Shirey/MLB Photos via Getty Images】

 テレビ中継の関係で、しばらくネクストバッターズサークルで待たされた大谷。その間、2回、3回と素振りをしたが、ほぼフルスイングだった。左肩をグルリと何度か回し、その限りでは不安がないように映った。

 一方で、選手紹介のときには、ウィンドブレーカーを着て登場。左手でジャケットのみぞおちあたりを握ったまま、離さなかった。初回、四球で塁に出るとユニホームの首元を掴んだ状態で、リードを取った。よって、いつも通りというわけではなかったが、大谷は「試合中もずっと温めて、冷やさないようにすることが大事と言われていたので」と明かし、続けた。

「試合中もずっと温めるようにつけて、イニング間も基本的につけて過ごしていました」

 何をつけていたかと言えば、それは保温サポーターだったようだが、走塁の仕草についてはこう説明している。

「スライディングをしたとき、左手が同じようなモーションになったときにまた、今の状態だと外れる場合が多いので、それを防ぐためにやっていました」

 ただ、それらはあくまでも、予防的な措置、ということのよう。

空振りに顔をしかめる

 しかし、3打席目の初球に空振りをしたときには、大きく顔をしかめた。フルカウントからの6球目(ファール)と7球目(空振り)は、体勢を崩されていたこともあったが、途中から左手を離してスイングした。七回の4打席目も、2球目の空振りはフルスイングに近かったが、最後の三塁ファールフライは内角の球にも関わらず最後に手を離したため、押し込めなかった。

 影響はなかったのか? 大谷は、「テーピングをしたりしているので、いつもと違う感じはしましたけど、そこまで大きく違う感じはしなかった」と話したが、明らかにいつものスイングではなかった。もっとも痛みについては、「あまり覚えていない」と振り返っている。

「痛い、痛くないという感じは、顔にどの程度出ていたか分からないですけど、あまり考えてはいなかった」。

 気になるようでは、試合に集中できない。痛みの感覚を遮断した。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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