渡来美響が貫いてきた独自の信念 無敗対決で日本最強を証明し、世界を目指す

船橋真二郎

26日、日本タイトル挑戦権をかけた最強挑戦者決定戦に臨む渡来美響 【写真:船橋真二郎】

フロイド・メイウェザーをロールモデルに

 26日、東京・後楽園ホールで国内中量級注目の一戦が行われる。日本タイトル挑戦権をかけた日本スーパーライト級最強挑戦者決定戦。ともにアマチュア出身の無敗ホープが激突する。

 同級1位でKO率80%の強打を誇る関根幸太朗(ワタナベ/26歳、9勝8KO無敗1分)と対するのは、同級2位の渡来美響(わたらい・みきょう、三迫/25歳、5勝3KO無敗)。このボクサーには貫いてきた独自の信念がある。

「僕は黒人のボクシングが世界一だと思ってて、メイウェザーを基本として、これまでの日本の固定された教え方とは違った路線でやってきました」

 まだ5歳の頃から地元・横浜の大橋ジムでボクシンググローブを握り、ジュニア年代の大会で活躍していた渡来の転機は中学2年。当時、指導を受けていたトレーナーから圧倒的な空間支配力、ディフェンス技術を駆使して、全勝のまま世界5階級制覇を成し遂げたフロイド・メイウェザー・ジュニア(米)をロールモデルとして提示された。

 それ以来、武相高から東洋大を経て、現在に至るまで10年以上、「世界一」と信じるボクシングを追求し続けてきた。

 昨年秋には念願だったアメリカ・ラスベガスの「メイウェザー・ボクシングクラブ」で合宿を敢行。メイウェザー・シニアとは幼なじみで、ジュニアを育てた過程を知るというドン・ハウス・トレーナーに師事し、メイウェザーのボクシングの“エッセンス”を学んだ。

「憧れであるメイウェザーのように、ラスベガスの本場でメインを張れるような選手になりたいと思ってます」

 すべてはプロデビュー戦のリングで高らかに決意表明した目標を叶えるため。世界的に層が厚く、日本人には難関と言われる中量級で日本人と同じことをしていては到底、世界の頂点にはたどり着けないと考え、行動に移してきた。

 今夏には2度目のラスベガス合宿。7月中旬から8月にかけての1カ月、メイウェザー・ジムで再びドン・ハウスとマンツーマンでトレーニングするなど、自分のボクシングの練度をさらに高めてきた。

メイウェザーが目をかける“天才児”との手合わせ

“18歳の新星”カーメル・モートン(左)とのスパーリングが最大の収穫になった 【写真:本人提供】

 今回のラスベガス合宿で最大の収穫になったのは、メイウェザー・プロモーションと契約する18歳の新星、カーメル・モートン(米)と手合わせできたことだったという。

 アマチュアで活躍後、昨年9月に17歳でプロデビューしてから、この10月12日の最新試合まで6戦全勝5KO。主戦階級をスーパーフェザー級からライト級へと移しつつある育ち盛りの“天才児”は、スパーリングで上の階級の選手たちをことごとく倒し、途中でストップとなることが多かった。

 が、渡来は違った。予定のラウンドを最後までやり通したことで2回目、3回目と声がかかり、憧れのメイウェザーが目をかける才能を存分に味わう貴重な機会をつかんだ。

「センスが抜群にいいんですよね。チョイスするパンチとか、打つタイミングにしても。それにプラスして、身体能力が高くて、スピード、パワー、ディフェンス、すべてをバランスよく兼ね備えていて、ほんとの天才だなと感じましたけど。まだ18歳なんで恐ろしいですね(笑)」

 そんな未来の世界チャンピオンに対し、回数を重ねるごとに内容がよくなり、3回目は互角以上に渡り合えたという。ドン・ハウスからも「アメリカで最も期待される選手のひとりを止めてみせた」と称賛され、「自信になった」ことも大きかった。

 また普段、試合や練習の動画を見て、取り入れたり、研究したりするような選手を肌で感じ、「動画で見るだけでは分からない、実際に手を合わせてみないと感じ取ることができない感覚を味わえた」ことも今後の自身にとって、得がたい経験になった。

1/2ページ

著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント