チームメイトは敵か味方か F1は今、チームメイトバトルが熱い!

柴田久仁夫

ハミルトンの頑張りが光る

イギリスGP予選でフロントローを独占。ポールポジションを獲得したラッセルに、ハミルトンが駆け寄った 【(c) MercedesF1】

 冒頭で「同じマシンを駆るだけに(チームメイト同士の)優劣がはっきりわかる」と述べたが、実はそうとも言い切れないケースもある。そこでマクラーレンのノリスとピアストリ、メルセデスのラッセルとハミルトンの、今季ここまでの予選成績を比較してみよう。

 18戦中ノリスは14勝4敗。ラッセルは13勝5敗。この数字だけ見れば、ピアストリとハミルトンは予選一発の速さに限れば彼らに完敗ということになる。ではもう少し細かく、チームメイト同士の最速ラップタイムを比較するとどうか。

 ピアストリはF1デビュー年だった去年の予選も、22戦中7勝15敗とノリスに大きく負け越していた。内容的にもコンマ2〜3秒以上のタイム差をつけられる予選がいくつもあった。それが今季は開幕戦バーレーンGPの0.07秒差を皮切りに、シーズン序盤はたとえ負けてもコンマ1秒前後の僅差が続いた。

 ところが第9戦カナダGP以降は、ミスでQ1敗退したアゼルバイジャン以外の9GPの予選全てをノリスが制し、しかもオランダやシンガポールではコンマ4秒前後の大差をピアストリにつけている。デビュー2年目のピアストリは去年よりはるかに予選アタック時の小さなミスは減っているが、それ以上にノリスが自信を持って攻めて行けているということではないか。

 ただしピアストリも、去年の課題だった主にタイヤの使い方に起因する対ノリスのレースペースの遅さが、今季はかなり改善している。現在二人の獲得ポイント数は、ノリスが42点リードしている。しかし第13戦ハンガリーGP以降の後半6戦に限れば、ノリスの108ポイントに対しピアストリ113ポイントと、より多くのポイントを稼いでいる。その間、予選はほぼ全敗。その不利を帳消しにするレース運びの巧さを身につけつつあるといえそうだ。

フェルスタッペンと角田のチームメイトバトルが実現する?

角田とフェルスタッペン。来季は同じユニフォームで戦う日が来る? 【(c) Redbull】

 一方ハミルトンは、たとえばラッセルがポールポジションを獲得し、本人は7番手に沈んだカナダGP予選でも、その差は0.228秒。他の多くはコンマ1秒前後につけている。そしてレースでは逆に19ポイントリードしている。

 F1参戦18シーズン目を戦い、半年後には40歳の大台に乗るハミルトンだが、若干26歳のラッセル相手に一歩も引かないパフォーマンスは、十分称賛に値する。

 その流れで言えば、来季移籍するフェラーリでのルクレールとのチームメイトバトルも、十分に期待できるのではないか。そしてハミルトンが去った後のメルセデスには、フェルスタッペン以来の大型新人と言われる18歳のキミ・アントネッリがやってくる。

 さらに言えば、レッドブルでもチームメイトバトルが勃発するかもしれない。ペレスの契約は一応、2026年までとなっている。しかし今の低迷状態が大きく改善されない限り、今年限りの放出は十分にありうる。

 では後任は? ドライバーの人事権を握るヘルムート・マルコ博士の「レッドブル育成ドライバーが、あくまで優先候補だ」という発言を信じる限り、残り6戦で再びチームメイトとなる角田裕毅とリアム・ローソンの、どちらか一方が昇格するチャンスがある。

 ローソン相手に十分な結果を出せば、角田の「マックスと同じマシンでバトルしたい」という夢が、ついに実現するかもしれない。

(了)

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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