MLBポストシーズンレポート2024

記者席にも届いた大谷の雄叫びと凄まじい気合 8投手による完封で「感謝の最終戦」へ【地区シリーズ第4戦】

丹羽政善

まさかの事態に声を荒げる

四回、テオスカー・ヘルナンデスの打球をめぐる三塁塁審のまさかの珍事で、不運にも本塁で刺された大谷翔平。当初、何が起きたのかわかっていない様子だった 【Photo by Sean M. Haffey/Getty Images】

 その大谷は、四回表の攻撃が終わったところでもほえている。

 1死から四球で歩き、ベッツのセンターフライで二塁へ。続く、テオスカー・ヘルナンデスの打球は三塁線――ゴロでマニー・マチャドの左を抜けた。

 それを見た大谷は、一気に三塁を蹴った。当然である。しかし、その抜けたはずの打球がなんと、「フェア」を宣告するため、左腕を挙げた三塁塁審のその左手に当たった。マチャドのグラブに当たって打球の方向が変わり、塁審はそれをよけられなかったのだ。

 しかし、大谷にはそれが見えていなかった。すぐ近くに転がっていたボールを拾い上げたマチャドがバックホーム。アウトになった大谷は「何が起きたのか?」とでも言いたげな表情で、三塁方向を振り返った。ダグアウトに戻って映像を確認した大谷は、三塁方向を振り返って声を荒げた。

 あそこで1点が入っていれば6対0。何が起こるかわからないプレーオフでも、さすがに試合が決まったかもしれない。5対0で中盤なら、まだ安心できない。大谷の苛立ちは、それを物語っていたが、七回に3点を追加すると、さすがに勝負あった。

マチャドが全幅の信頼を置くダルビッシュ有

第5戦の先発を務める、パドレスのダルビッシュ有。第2戦で先発し、7回1失点に抑えた老獪な大ベテランが、ドジャース打線に立ちはだかる 【Photo by Matt Thomas/San Diego Padres/Getty Images】

 休みを挟み、10月11日(現地時間)にロサンゼルスに舞台を移して第5戦が行われる。

 パドレスの先発は、ダルビッシュ有。

「(彼は)準備はできている」とマイク・シルト監督。マニー・マチャドも全幅の信頼を置く。「誰もが納得する投手がマウンドに上がるんだ。彼には十分な実績も経験もある」

 一方のドジャースは、山本由伸か、ジャック・フラーティか。

 勝った方が次のラウンドへ――その試合でホームチームは過去62勝66敗。意外にも負け越している。3戦先勝のシリーズにおいて、1勝2敗から第4戦を制し、そのまま第5戦も勝ったのは、48チーム中27チーム(勝率56%)。極端な差はない。

 大谷は前日、「もう2連勝したら勝ちという、そういうゲームだと思ってやればいい」と話した。

「後がないという感覚自体が今の僕には特にない」

 同時に、「まずはここでできていることに感謝したい。このゲームを自分自身でかみしめているところはある」とも口にした。

 第5戦の舞台を誰もが経験できるわけではない。大谷は、あと1勝したら勝ちというゲームを取りに行く――1打席1打席をかみしめながら、そして感謝しながら。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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