街中でのスケートボード、フランス・ボルドーではなぜ市民に受け入れられているのか?
【photo by Yoshio Yoshida】
しかし海外ではスケートボーダーと行政が手を組み、ストリートスケートに関する都市的な取り組みを次々と成功させていることはご存知だろうか。この記事ではフランスのボルドーにて都市開発運動を行うプロスケーター、レオ・ヴァルスさんが提唱する概念「SKATURBANISM(スケート+アーバニズムの造語)」について前後編で紹介。前編では、フランス・ボルドーの事例を通してスケートボードが貢献する未来の街づくりについて考察する。
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スケートボードによる新たな街づくりとは
「SKATURBANISM」を主宰するプロスケーターのレオ・ヴァルスさん。世界各地でその重要性を説いている 【photo by Yoshio Yoshida】
ここで紹介するレオ・ヴァルスさんは、生粋のストリートスケーターでありながら、都市計画家としても活躍する稀有な人物。彼が生み出した概念は「SKATURBANISM(スケーターバニズム)」と呼ばれ、フェンスで囲われたスケートパークを増やすのではなく、スケートボードと街の共存を目指すものなのだが、この概念が今世界へと広がりを見せ始めている。
街とスケートボードの関係性。なぜストリートで滑走するのか?
講演の中でレオさんが紹介した1枚。ルーブル美術館を背景にシンメトリーになるような構図で撮影することでアートの要素を盛り込んだ 【photo by Yoshio Yoshida】
レオさんももともと街中でのスケートボードを映像や写真に収め、それらを公開することでスポンサー貢献をし、スケートボードと都市建築をつなぐアート活動として、長年グローバルに滑走してきた人物。そんな彼が重要だと唱えるのが街とスケートパークの補完性だ。
スケートパークとは、ストリートで見つけられるオブジェがある公園のような施設。練習に重要な場所ではあるが、スケーターの多くはそこからストリート、街で滑りたいと考えるようになる。これが現実であり、その想いが彼らのクリエイティビティを刺激し、独自性が生まれ、素晴らしい映像や写真が創られていく。彼のホームであるフランス・ボルドーにも豊かな建築遺産があり、歴史的な建造物とモダンな建築が並存している街中では、数々のスケートボードによる素晴らしい写真が生まれるという。
フランス・ボルドーでは街中のスケボーが合法に
6月に東京大学構内でフランス大使館の支援を受け開催された街づくりシンポジウム、MVV(Mieux Vivre en Ville)に登壇したレオ・ヴァルスさん(写真右) 【photo by Yoshio Yoshida】
騒音苦情は素直に認め、誠実な態度で対話を繰り返し、社会実験を通して公共空間をどう使うのか話し合いながら歩み寄った結果、合法化されるまでに進展した。
スケートボーダーに好まれるこのような花崗岩のベンチは、移動も容易なので地域の騒音問題テストには最適 【photo by Yoshio Yoshida】
また危険だという声に対しては警察署に赴き、実際に起きている事故の数を調べた。歩行者との間には問題はあったものの、事故としてはゼロで、自転車や車の事故の方が圧倒的に多かったという。
他にも、美術館でスケートボードの文化的な側面を表現したアートショーを催し、多くの一般人を招いて会話をしながらポジティブなコミュニケーションを図っていったことで物事は進展、徐々にスケートボードが街に溶け込んでいった。
整備計画においても設計段階からスケートボードを考慮したものにし、都市での実践を保証する形に変えていったのだが、それはベンチや花壇の脇をスチールアングルで補強するというとても簡単なこと。新たにスケートパークを建設するより遥かに安価だ。また、以前はドラッグディーラーがたむろするような治安の悪い場所も、スケートボーダーが集まるようになったことで改善されていったという。
対話する市民とスケーター。大切なのは「街の人との共有」
6月に東京大学構内でフランス大使館の支援を受け開催された街づくりシンポジウム、MVV(Mieux Vivre en Ville)に登壇したレオ・ヴァルスさん(写真右) 【photo by Yoshio Yoshida】
このような街との共生を実現させるために、レオさんらはまず2019年にマスタープランを制作した。これはストリートにおける滑走ルートを示したもので、ボルドーでは川の両岸に設定し、各地点にスケートボードを熟知したアーティストとともに制作したオブジェクトを設置した。
そして様々な社会実験等を経て、昨年完成した彼らの活動の集大成ともいえるものがスケートガイド。スケートボードができる場所だけでなく、滑走時間が限定されている場所なのか、通行人に注意が必要な場所かなどといった細かな情報を色分けしてマッピングしている。こういった配慮が市民とのトラブル回避につながるのだ。
【photo by Yoshio Yoshida】
ボルドーのスケートボードガイド。スポットの特徴に合わせて赤や青、緑などで色分けされている 【photo by Yoshio Yoshida】
排除の対象となっていた「街中での滑走」を見事に街づくりの一環として昇華させたフランス・ボルドーの事例。一方的な見方ではなく、多角的な視点で捉えることでスポーツを再定義し、街と上手く融合させた取り組みは、スケートボードに限らず、あらゆるスポーツの可能性を生かすヒントになるのではないだろうか。次回は日本におけるスケートボードの現状や課題、解決策とともに、どんな事例があるのかを紹介していく。
text & photo by Yoshio Yoshida(Parasapo Lab)
※本記事はパラサポWEBに2024年10月に掲載されたものです。
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