川崎宗則、元MVP左腕にドラフト候補も参戦 もうひとつのプロ野球日本一決定戦が27日開幕

金沢慧

準々決勝第1試合:愛媛MP vs 石川MS

愛媛MPのキャプテン・浅井玲於 【写真提供:四国アイランドリーグplus】

 それでは各試合の注目ポイントを見ていこう。

 準々決勝の第1試合は愛媛MPと石川MSのカードとなった。愛媛MPはIBLJの年間勝率は2位だったが、前期勝率.774、後期勝率.800とレギュラーシーズンで歴史的な強さを誇った徳島インディゴソックス(徳島IS)とのプレーオフで2連勝し、2年連続の出場を決めた。

 リーグの本塁打王にも輝いたキャプテン・浅井玲於が4番に座る打線は上位から下位までどこからでも点を取れる切れ目のなさが売り。後期のリーグ戦でも徳島ISよりチーム打率、本塁打数は上回っていた。後期は防御率が4.70と投手陣に不安があったが、157キロ右腕の羽野紀希、193cmの大型右腕の廣澤優というスカウトの注目を集める両右腕らリリーフ投手がプレーオフでは好投を見せ、中盤以降の勝ちパターンを作れている。先発も愛工大名電時代に甲子園ベスト8の実績がある高卒2年目右腕・山田空暉が調子を上げており、登板が予想される石川MSとの初戦でも成長した姿をアピールしたいところだ。

 対する石川MSは今季のリーグ戦で防御率1.77のエース右腕・香水晴貴の投球に注目したい。左打者の外角に落ちる変化球を持っており、左打者中心の愛媛MP打線を相手にもその球が活きるはずだ。ただし、NLB選抜として登板した9/19の巨人三軍戦ではモーションの大きさから盗塁を多く仕掛けられる場面があり、短期決戦でこの点がどう影響するか。

 打線では190cm105kgの大型打者・大坪梓恩のパワフルなスイングに注目したい。大坪は9/19にNLB選抜として巨人戦に出場し、京本真の高めのストレートに振り負けずレフト前に適時打を放つと、9/21の試合でも笠島尚樹からセンター前にタイムリーを放った。NLB選抜が巨人三軍との3試合で挙げた2得点はいずれも大坪のバットからであり、NPBの球団相手に成長を印象付けた。GCSの舞台ではド派手な活躍に期待がかかる。

準々決勝第2試合:栃木GB vs 石狩RF

 第2試合は地元・栃木GBと石狩RPの対戦となる。2年連続の出場となる石狩RPは昨年も開催地枠だった愛媛MPと初戦で対戦し1-4で敗れた。HFL勢は一昨年に士別サムライブレイズ(士別SB)が出場し、初戦と3位決定戦の2試合とも2桁失点での大敗だった。それだけに昨年の石狩RP の戦いぶりは善戦に映ったが、坪井監督以下各選手は初勝利だけでなくその先を目指しており、今年こそ底力を見せたいところだ。

 チームの中心はリードオフマンの遊撃手・中谷内莞と捕手・蟹澤智毅のセンターライン。蟹澤は打順を今季途中に9番から2番に上げ、中谷内との1、2番コンビでチャンスを作る役割を担っている。上位打線の活躍が勝利への鍵となりそうだ。投手陣は昨年のGCSで好投した野口寛人に加え、リーグ最多奪三振の宮島真輝、140キロ台の直球で押すマイヤーと厚みを増している。普段のリーグ戦がデーゲームのため慣れていないナイターは守備面での懸念材料だが、本番までにどう対策するか。

 開催地枠で出場する栃木GBだが、シーズンの成績は勝率.226でBCL最下位。特に防御率が5.65と投手陣が踏ん張りきれず、今回GCSに出場する信濃GSとのリーグでの対戦では0勝8敗と大きな差をつけられていた。まだGCS未勝利のHFL代表が相手とはいえ、接戦を勝ち切るマインドが必要となりそうだ。注目選手はドラフト候補にも名前が挙がる石川慧亮。4年目のシーズンで自己最多となる11本塁打をマーク。センターから右方向へのアーチも多く、広角に長打が打てる。チームの勝利と自身のドラフト指名に向けて、格の違いを見せるような活躍が期待される。格の違いという意味では数々の修羅場をくぐってきた川﨑の打席、パフォーマンスにも注目したい。トーナメントという普段とは違う環境の中で、果たしてどのような好影響をチーム全体に与えていくか。

準決勝第1試合:信濃GS vs (愛媛MPと石川MSの勝者)

 準決勝第1試合は信濃GSが愛媛MPと石川MSの勝者と対戦する。2年ぶりのGCS進出で悲願の初優勝を目指す信濃GSだが、一昨年の決勝を戦ったメンバーはレギュラー野手では捕手の田島光祐しか残っておらず、多くの選手が初の大舞台となる。

 3番・松井聖、4番・ジェス、5番・馬場愛己のクリーンアップは出場チームの中でも最も強力といえる布陣で、BCLのレギュラーシーズンでは3人で35本塁打をマークした。投手陣は右腕の足立真彦、右のアンダースロー・塩本周平、左腕の山田夢大とバリエーション豊富な三本柱。最大で準決勝、決勝の2戦であるためこのうち1人を第二先発に回すことができ、投手層が厚くなっている。

 準決勝の相手が選手の平均年齢の低い愛媛MPか、リーグ戦の相手が富山GRNサンダーバーズ(富山TB)のみで普段の対戦投手が限られている石川MSだと考えると、おそらく準決勝には初見では攻略しづらい変速右腕の塩本を当てるのではないか。愛媛MPや石川MSは塩本対策を準々決勝の勝利後1日でどこまで徹底できるか。スタッフを含めたチームの総合力が試されそうだ。

準決勝第2試合:北九州下関F vs (栃木GB vs 石狩RFの勝者)

北九州下関Pの中田航大 【写真提供:九州アジアベースボールリーグ】

 初出場となる北九州下関Pはリーグ戦のチーム打率.339と打線が充実している。特にリードオフマンの中田航大は打率.436と打ちまくり、2番・横山晴人が.373、3番・平間が.371と上位打線が活発だった。打率.383の河野颯太も含め、リーグの打率上位5名中4名が北九州下関Pの選手で、チームは76試合でリーグトップの539得点をあげた。KALでは勝率.137の宮崎サンシャインズ(宮崎S)や準加盟球団の佐賀インドネシアドリームズ(佐賀ID)など、まだレベル差のある球団との試合も多い。そのため個人成績が良くなりがちではあるが、その点を考慮しても打線は全国の舞台で脅威となるはずだ。

 過去2年間のGCSではKALの火の国Sが連覇を果たしているが、2年とも足を活かした攻撃で相手の守備のリズムを崩す場面が印象的だった。今年の北九州下関Pも中田と平間がリーグでそれぞれ41盗塁を決めており、初回から塁に出れば仕掛けてくることが予想される。準決勝で対戦する栃木GBと石狩RPの勝者が北九州下関Pの機動力を封じることができるか注目だ。

 一方で、北九州下関Pの投手陣はやや不安が残る。右腕の荒巻千尋と左腕の川﨑大輝の2人が準決勝、決勝での先発を任されると思われるが、リーグ2位の大分B-リングス(大分BR)、3位の火の国Sを相手にした際の投球成績をまとめるとともに防御率は4点台であり、ここ2年の火の国Sと比べて層が薄い印象は否めない。GCSでもある程度の失点は織り込んだ上での戦いとなりそうだ。 

スポナビで日本一を決める戦いをチェックしよう!

 3日間で最大3試合、しかも負けたら終わりでありながら最終日が最も重要となる戦いは普段のリーグ戦にはなく、各チームがどのような戦略で挑むかは見ものだ。この大会は今年もスポナビで配信が行われる予定であり、現地に行けない方もぜひwebでチェックしてほしい。

 また、決勝戦の行われる9/29(日)の午前中にはIPBLとエイジェックスポーツマネジメントの共催企画として、栃木市で「エイジェックスポーツ科学総合センター内覧会及びIPBL活動報告会」が開催される。報告会では自分も夏に日本スポーツパフォーマンス学会で発表したIBLJの測定会の結果の話などを少しする予定であり、興味のある方はぜひHPをご確認いただきたい。

 日本各地で地域とともに歩んでいる独立リーグが年に一度開催するお祭りの場を様々な形で楽しもう。

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著者プロフィール

1984年生まれ、福島県出身。学習院大学在学中の2005年夏の甲子園で阪神園芸での整備員アルバイトを経験するなど、基本的には高校野球マニア。 筑波大学大学院体育研究科を修了後、2009年にデータスタジアム株式会社に入社し野球のアナリストとして活動を始めた。NHK-BSで放送されている「球辞苑」には2015年から出演している。2018年からは本所属を株式会社リクルートテクノロジーズ(現・株式会社リクルート)のデータ利活用の部署に移し、主にHRメディアでのデータ分析環境の整備や機械学習を用いたアプリケーション開発のPMOとして従事した。 2022年10月に独立し、現在は四国アイランドリーグplusのアナリティクスディレクターなどプロスポーツリーグ等でのHR領域のデータ活用推進を行っている。また、スポーツアナリティクスジャパン(SAJ)2022ではプロジェクトマネージャーを担うなど、スポーツをきっかけとした文化交流のカンファレンスやイベントの企画、運営にも携わっている。

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