【大谷翔平「50-50」の舞台裏・前編】運まで味方した50個目の盗塁に、マイアミを覆った50号の空気
徹しきれない悔しさ故に饒舌に
4点ビハインドの三回、大谷の2ランをきっかけに同点としたドジャース。その後も点の取り合いとなり、6対7と1点ビハインドの六回、2死一、三塁という場面で大谷に打席が回ってきた。タイムリーが出れば同点。ドジャースがその後、一気に勢いづく可能性もあった。
ところが、大谷は三球三振。その後、逆に突き放された。大谷も試合後、本塁打については、「反撃につながる一本だった」と振り返りつつも、「7対6の一、三塁の場面で得点をしたかった」と悔やんだ。
初球がまさに“綾”だった。
【参照:MLB.COM GAME DAY】
「自分がボールだと判断した球をストライクと判定されたときに、そこを捨てるべきかどうかの判断で、きょうはどちらかというとアンパイアに合わせていった打席が多かった」
2球目、3球目は見逃せばボール。しかし、初球の判定を考えれば、振らざるをえない。3球目はファールにできれば理想的だったが、チェンジアップにバットが空を切った。九回の打席でも最後、外角低めのボールになるチェンジアップを引っ掛けて一塁ゴロ。
自分を信じるのか、審判に合わせるのか。そこで振り切れなかった。
「短期的には審判の色を理解して、そこに合わせていくというのも大事。長いシーズンの中で調子を維持するということを考えるなら、自分のストライクゾーン、ボールならボールだし、ストライクならストライクと自分で割り切らなければ」
決して審判の“色”に合わせるのは、不正解ではない。ただそれは、最適解でもない。
「自分が信じているストライクゾーンを維持する上で大事なので、きょうのことは忘れるのが一番」
もどかしさを隠せなかった。
ところで、大谷がここまで明かすのは珍しいこと。審判の判定に腹を立てたというより、どちらかに徹しきれなかったことに悔しさが込み上げてきているようだった。あの場面で自分が打っていれば、流れが変わった。初球の判定で、自分のストライクゾーンが揺らぎ、2球目、3球目は中途半端に合わせてしまった。
その後悔の念が、言葉の端々に滲んでいた。
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9月19日のマーリンズ戦、1回に今季50個目となる三盗を決めた大谷翔平 【Photo by Megan Briggs/Getty Images】
六回、49号を右翼二階席に放つと、次の打席で50号が出るのではないか。50-50をマイアミで達成してしまうのではないか。
そんな空気が球場全体を覆い始めていた。
※【大谷翔平「50-50」の舞台裏・後編】は明日9/21(土)の公開を予定しております。