イチロー流 球児へ「走塁編」
「最初の3歩を確実に踏めるように」
「スタート時は左足が先」
ほとんどの選手は体をひねって1歩目を踏み出したとき、左足の位置が(一塁と二塁を結んだラインよりも)内側に来る。だからリードをとる位置は結んだラインよりも後ろで、一歩目がラインの上もしくは外側ぎりぎりに来るように。感覚としてはかなり後ろだけど、打球判断も打者から遠くなるから楽になる。長年プレーして、この位置でのデメリットがない。3歩目くらいまでうまくいけば、あとは勝手に進んでくれる。最初の3歩を確実に踏めるように練習してみてほしい。
球児とともに体の使い方を確認した 【バーチャル高校野球】
これは外野守備の構えと同じと考えてもらっていい。
野球で最も難しいのが、打球判断。これは何度経験しても簡単にはならない。特に目が上下して上体が浮いていると難しくなる。でも止まって判断すると比較にならないほど簡単になるよ。一度試してみて。ベンチから見ていると、正確に打球判断できるでしょ。どうしてだと思う?それは止まっているから。塁上でもその状態に近づけたいね。
球児の質問「ベースランニングのやり方を教えてください」
ベースを踏むのは、右足でも左足でも、どちらでもいい。大事なのは減速しないこと。ベースの前であわせにいって、スピードが落ちてしまうのは避けて。(構成・山口裕起)
ベースランニングで大事なことは「減速しないこと」 【バーチャル高校野球】
イチローさんと高校野球
20年秋に行った講演では、次のように語っています。
「高校野球は『野球』をやっている。大リーグは『コンテスト』なんです。どこまで飛ばせるかとか。野球とは言えない。高校野球にはそれが詰まっているんです。めちゃくちゃ面白い」
「僕はプロ入り前の野球にすごい興味がある。高校野球とか学生野球の指導者には、そんなにプロ経験者はいません。野球人としてこれから(野球界に)何かお返しできたらと思っています」
球児への指導は、20年12月の智弁和歌山を皮切りに、21年は国学院久我山(東京)、千葉明徳、高松商(香川)、22年は新宿(東京)、富士(静岡)、23年は旭川東(北海道)、宮古(沖縄)と、これまでに8校を訪れました。
21年までの訪問先は学校側の要望や部員からの手紙をきっかけに、決めていました。
新宿と富士については、ともに地域の小学生らを対象に野球の普及にも熱心に取り組んでおり、その活動に関心を持ったイチローさん自ら、訪問を決めました。
また、21年からは女子チームの強化プログラムの一環として、女子高校生の選抜チームと自身が率いる草野球チームとの試合を開いている。
イチローさんは「今後もそれぞれのスタンスで野球に取り組んでいる高校生たちと一緒に野球をやってみたい」と話しています。
イチローさんの歩み
1973年10月22日、愛知県生まれ。愛工大名電高(愛知)から91年秋のドラフト4位でオリックスに入団し、94年から7年連続で首位打者を獲得した。
1月に阪神大震災が起きた95年は「がんばろうKOBE」を合言葉にリーグ優勝、翌96年は日本一に大きく貢献した。
2000年オフにポスティングシステムを利用して大リーグのマリナーズに移籍し、01年に首位打者、盗塁王を獲得してア・リーグMVPに。04年に262安打で大リーグのシーズン最多安打記録を84年ぶりに更新。01年から10年連続シーズン200安打。
12年途中からヤンキース、15年からマーリンズでプレーした。16年には大リーグ史上30人目、日本選手では初となる通算3000安打を達成した。18年にマリナーズに復帰し、19年3月に引退。右投げ左打ち。