パラリンピックを支える器具修理サービス ベテラン技術者が語る熱戦の舞台裏

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オットーボック・ジャパンの車いす技術者・中島浩貴さんは今回で6大会目の参加となる 【画像提供:オットーボック社】

 8月28日(現地時間)に開幕したパリパラリンピックもいよいよ終盤戦。連日、熱戦が繰り広げられている競技会場を取材していると、誘導やセキュリティをはじめ、様々な人々によって大会を支えられていることに気付く。

 そんなスタッフの中に、オットーボック・ジャパンの車いす技術者・中島浩貴さんがいる。オットーボック社はドイツに本社をおく総合福祉機器メーカーで、1988年のソウル大会から30年以上、パラリンピックで車いすや義肢をはじめとする様々な器具の修理サービスを無料で提供し続けている。パリ大会でも41カ国から164名のスタッフが参加し、中島さんもその一員として修理サービスを担当する。

 今回が6大会目の参加となった中島さんはパリ大会の印象を「選手もスタッフものびのびやっている」という。そんな“ベテラン”技術者の仕事ぶり、彼の目線から見たパラリンピックの舞台裏について聞いた。

大会開幕前に修理依頼が殺到

 オットーボックの技術者たちの仕事は、選手村に設置された720㎡の修理サービスセンターの設営を開村の数日前に行うことからスタートする。まだ何も置かれていない、がらんとしたセンターに、世界中から集まった車いすや義肢のプロたちが集結し、機材を運び込んでセットアップしていく。

 しかしこの設営、あらかじめ用意された図面にきっちり合わせて、ということではない。

「誰も(設営の)正解を知らなくて、『誰が図面を持ってるの?』という言葉が、毎大会飛び交いますが、やっぱりそこは経験なのか、うまく設営ができてしまうんですよね」と中島さんが話すように、機材をどこに置くかの最終判断は図面ではなく、現場を見た技術者たちの経験則に基づいて決定される。

 設営が完了すると、開村日から修理サービスが開始。意外にもピークは開会式前にやってくる。

「(選手たちは)選手村に入村する直前まで様々な場所で合宿や強化試合を実施していて、そこからバタバタっと来るケースが多いと思っています。だから選手村に到着して、まず優先的に実施するのは機器のチェック。自分たちの使う機器がどういったコンディションかを確認して、細かい部分も含めて、早めに修理していく必要がある。そのため、競技が始まる前が1番忙しいと感じています」
 
 今回も修理依頼が殺到した。車いすテニスの会場がクレーコートということで、ハードコート用のタイヤで来た選手から交換依頼もあったという。大会を重ねるごとに選手らの間で“修理サービス”の認知度も向上しており、気軽にサービスセンターを訪れることが増え、まずはと下見にくる選手もいたとのこと。

 開会式に向けては、選手入場の際に旗手の車いすに取り付ける「フラッグホルダー」と呼ばれる旗を固定する部品を取り付けるのも仕事の一つ。本来は、あらかじめ選手村で取り付けておいたものを式直前に調整するのだが、パリ大会は一から現場で取り付けるケースが多く、「予想以上の忙しさ」だったという。

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