38歳のお祭り男 FC東京・長友佑都の国立物語に次なるページが刻まれる
かみしめたくなる深く新鮮な味
長友が「魂が奮えるような応援を僕たちに届けてくれた」と語るファン・サポーター 【©FC TOKYO】
9月14日には、変わらぬ夢舞台・国立へと足を踏み入れる。その対戦相手は名古屋グランパスだ。相手ベンチには約3年前に日本復帰を果たしたとき、共に戦った長谷川健太監督が座っている。
「健太さんは一緒に戦った監督でもある。自分の成長した姿もそうだし、しぶとくやっている姿を見せたい。あとは、個人的には誕生日の2日後やから38歳の誕生日をちゃんと祝えるように勝ちたいね」
12日に38歳の誕生日を迎えて臨む。長友はほほを緩ませ、「きっと、ふっかーーーい味がするんじゃないかな。周りからは、もう何度目だよという感じに映るかもしれない。でも、深くていつも新鮮な気持ちにさせてくれる。オレにとっては、そういう場所。苦い味にならないようにしっかりと勝ちたいね」と、かぶとの緒を締め直した。
チームは8月30日時点で、現在5戦未勝利に加え、パリ五輪の中断明けから4試合連続無得点の苦境に立たされている。いずれもホームで、川崎フロンターレとの多摩川クラシコに0-3と敗れ、東京ヴェルディとの絶対に負けられない試合も0-0と引き分け。アウェイで開催された24日の前節京都サンガF.C.戦も0-3で完敗を喫した。
「こういう苦しいときもある。このクラブでも経験してきたし、自分のサッカー人生は苦しいことばかりだった。もちろん苦しいけど、今がそれほど重い苦しみではないと思っている。それでも、みんなで前を向いてやっていく。結局は、その繰り返しでしかない。ここで下を向いて終わってしまうのか。それとも新たな自分の成長と、チームに貢献するためにまたやってやるぞと前を向くのか。この苦しみがチームにとっても、自分にとっても良い経験になったと言えるようにしたい」
向けられた真っ直ぐな眼差し
「この前の京都戦で、ファン・サポーターは魂が奮えるような応援を僕たちに届けてくれた。あの状況でも、オレたちを奮い立たせるために声を出してくれたファン・サポーターに勝利をプレゼントしたい。あれは本当に苦しかった。あんな目をしてオレらを必死に支えようとしてくれる仲間の姿を見たときは苦しかった。思い出すと、眠れないぐらいだった。そこは一番苦しいし、悔しい。ブーイングされた方が楽だったと思う」
そして、吐き出した長い息をのみ込み、こう言葉にする。
「あのヴェルディ戦があって、そこからもう一度奮い立たせようとしてくれる、あの姿があったのにまた不甲斐ない試合をしてしまった。終わった後のファン・サポーター一人ひとりの目が漫画で見るような世界だった。アレは伝わった。情けなかったし、これだけやってくれている人に何も返せないのは苦しかった。何としても勝ちたいと思わされた」
変わらない。原動力はいつだって誰かのためだった。キャリアを積み上げる過程で多くの人に支えられてきた。守るべき家族も増やした。その一人ひとりに感謝を伝え期待に応えようと、走り続けてきた。逆境、批判……そんなモノはあの場所に立てば全て吹き飛んでしまう。
長友の国立物語に次なるページが刻まれる。みんなで勝利を祝うために、38歳のお祭り男が国立のピッチに立つ。
原動力はいつだって誰かのため 【©FC TOKYO】