識者が選ぶ夏の甲子園ベストナイン ドラフト候補が揃う遊撃手で今大会最も輝いたのは…

西尾典文

京都国際・藤本の遊撃守備は安心感があり、中軸としても十分な働き

京都国際の藤本は安定感抜群の守備に加え、4番打者として打線も引っ張った。準決勝では4回にチーム初安打、6回には死球で出塁して逆転のホームを踏んだ 【写真は共同】

 強打者の多い一塁手だが、今大会の成績を考えると関東第一の越後になるだろう。初戦から準々決勝まで3試合連続で複数安打を記録し、準決勝では7回にチーム初安打を放って逆転劇を呼び込んだ。さらに送りバントもしっかりと決めるなど、5番打者でありながらチャンスメーカーとしての仕事も果たした。守備はあまり目立たなかったが、打撃だけで十分に貢献は大きかったと言える。

 セカンドは好守備を見せる選手が多かったが、攻守両面で存在感を示したのが東海大相模の柴田だ。8番で出場した初戦の富山商戦では、大会第1号となるホームランをライトスタンドに叩き込むなど2安打の活躍。続く2試合では2番に打順を上げ、ツーベースと内野安打を放ちパンチ力とスピードを見せた。またセカンドの守備は球際が強く、正確なスローイングも光った。いかにも2番、セカンドが似合うタイプの選手のようでいて、長打力もあるというのは大きなプラス要素である。

 サードは岩下吏玖(神村学園3年)、髙橋徹平(関東第一3年)なども目立ったが、攻守ともに抜群のプレーを見せた早稲田実の高崎を選んだ。打点こそ1だったものの、3試合連続でマルチヒットを記録し、14打数7安打の活躍。186センチ・80キロと大型ながら、リストワークが巧みでセンター中心に鋭い打球を放つ。また西東京大会の前半はショートを任されていただけあって軽快なフットワークも光った。上背に見合うだけの筋肉量がついてくれば、将来はプロ入りも十分に狙えるだけの素材だ。

 石塚裕惺(花咲徳栄3年)、宇野真仁朗(早稲田実3年)、中村奈一輝(宮崎商3年)などドラフト候補が多く出場したショート。そのなかでも今大会で最も活躍した選手となると、京都国際の藤本だろう。上背はないものの、姿勢が良いので170センチという数字以上に大きく見える。守備では重心が上下動せずに素早く動くことができ、巧みなグラブ捌きも一級品。速い打球も落ち着いて処理し、見ていて安心感がある。打撃もボールを呼び込むのがうまく、体を鋭く回転させ、パンチ力も申し分ない。準決勝までの5試合全てでヒットを放ち、8安打中4本がツーベースで4打点と中軸として十分な働きを見せた。

東海大相模・中村の打撃技術は3年生を含めてもトップクラス

青森山田の2番打者・佐藤隆樹は全4試合でヒットを放ち、打線の火付け役に。4盗塁と自慢の脚力も見せつけた 【写真は共同】

 外野手は正林輝大(神村学園3年)、徳丸快晴(大阪桐蔭3年)など注目の選手が苦しみ、3人全員が2年生という結果となった。

 なかでも抜群のパフォーマンスを見せたのが東海大相模の中村だ。初戦の富山商戦で2安打を放つと、続く広陵戦では4安打4打点の大活躍。敗れた準々決勝の関東第一戦ではノーヒットに終わったものの、それでも2つ四球を選んで出塁した。バットコントロールは素晴らしいものがあり、どのコースもしっかりミートすることができる。打撃技術に関しては3年生を含めてもトップクラスと言えるだろう。

 2人目は青森山田の佐藤隆樹。初戦の長野日大戦でいきなり3安打を放つと、続く石橋戦でも2安打をマーク。終盤までもつれる展開となった滋賀学園戦でも両チーム無得点の7回に内野安打で出塁し、決勝のホームを踏んだ。少し非力な感は否めないが、ミート力があり、抜群の脚力で全力疾走を怠らない姿勢も素晴らしい。相手バッテリーにとっては嫌らしい存在であることは間違いない。

 3人目の京都国際・長谷川も佐藤と同じくミート力とスピードが持ち味。初戦の札幌日大戦では3安打を放ったが、レフト前ヒットの一塁到達タイムは4.2秒台を記録し、常に次の塁を狙おうとしているのがよく分かる。準々決勝からは打順が下位から5番に上がり、その智弁学園戦では貴重な追加点となるタイムリーを含む2安打1打点とチームの勝利に貢献。準決勝の青森山田戦では同点2点打を放った。守備も安定しており、外野手としての総合力が高い。

 今年のドラフトで指名されそうな選手は藤田と坂井くらいで、10人中5人が2年生となったが、全体的に守備や脚力が光る選手が多かった印象だ。それだけ新基準の金属バットの影響があったと思われ、来年は長打力で目立つ選手が出てくることを期待したい。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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