週刊MLBレポート2024(毎週金曜日更新)

大谷翔平とアーロン・ジャッジがトップタイ MLB強打者を表す最新指標「No Doubters」とは?

丹羽政善

8月13日のブリュワーズ戦で今季37号を放った大谷翔平。8月14日の試合終了時点で月間打率.176と低迷するも、5本塁打、7盗塁をマークしている 【Photo by Rob Tringali/MLB Photos via Getty Images】

 No Doubt!

 現地実況を聞いていて、そんなフレーズを耳にしたことがあるかもしれない。

 外野手は動きを止め、打球を見上げるだけ。投手は振り返りもせず、すぐさま新しいボールを主審に要求。そんな豪快な一発を描写する表現で、「これは間違いなくいった!」「文句なし!」といった意味だが、それが転じていまや本塁打の関連データとして「No Doubters」というのがある。

「Baseball Savant」というStatcast(ホークアイを用いたMLB独自のデータ解析ツール)のデータを検索できるサイトがあるが、トップページの一番上にその日のスコアボードがある。どれでもいいのでクリックすると、詳細なデータが表示される。ページ右手に「Statcast Metrics」というのがあり、その一番右手に「HR/Park」という項目がある。そこに6/30、10/30、30/30などという数字が表示されているが、それはその打球がMLB全球場を対象とした場合、何球場で本塁打だったかを、飛距離をもとに算出している。
 さらにその数字をクリックすると、「この球場だったら本塁打だった」「この球場では本塁打ではなかった」と具体的な球場名も表示される。それをたどれば「あぁ〜、ヤンキースタジアムだったらホームランだったのに」「フェンウェイ・パークだったら、グリーンモンスターに阻まれていたな」ということが分かる。

「30/30」というのは全球場で柵越え――つまりそれが“No Doubters”を意味するが、Baseball Savantのリーダーボードの本塁打の項目を見ると「No Doubters」のランキングがある。わかりやすく言ってしまえば「何本、文句なしの本塁打を打っているか」ということだが、8月13日(現地時間、以下同)に大谷翔平(ドジャース)がブルワーズ戦で放った今季37号は、今年に入って25本目のNo Doubtersとなり、リーグトップに並んだ。

 同じく1位は、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)。43本中25本がNo Doubtersなので、比率は58.1%。大谷は37本中25本なので67.6%。割合においては、大谷の方が上回っている。

今季、頻繁に目をする大谷の“確信歩き”

8月14日のホワイトソックス戦でMLB通算300号(今季43号)本塁打を放ったアーロン・ジャッジ(ヤンキース)。試合後、豪快な水の祝福を受けた 【Photo by Justin Casterline/Getty Images】

 正式な記録が残っているのは2019年からだが、大谷のNo Doubtersをまとめてみた。すると今年は、過去と比べて突出していることが分かった。

【出典:Baseball Savant】

 本数では21年に1本劣っているが、まだ8月半ば。シーズンは1ヶ月以上も残っているので、更新は確実。比率の上でも過去60%を超えた年はなく、圧倒的だ。実際、歩きながら打球の行方を見届け、ゆっくりと走り出す――今年はそんな大谷の“確信歩き”を頻繁に目にする。

 7月27日にヒューストンで右翼席上段に消える461 フィート(約140.5メートル)の本塁打を放ったとき、飛距離に関するやり取りがあった。

 その際に大谷は、「走る方もいいので、動けている証拠かなと思う。それがパワーという面でも、いい方向に作用しているのかな」と話し、続けた。

「オフシーズンにやった成果は、シーズン中に出ているんじゃないかと思う。あとは、新しい環境、新しいコーチのもとで毎日、スイングの改善もしてますし、そういう成果が出ていると、自分でも感じている」

 昨年のオフは、9月半ばに右肘の手術を行った関係で、バットを握ったのは12月に入ってから。もちろん、ウエイトトレーニングなども制限された。それでもここまでパワーに関連する数値が過去最高レベル。もし、通常のオフを送っていたら、どこまで数字が伸びたのか。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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