ジャッジ、ハーパーらも参加を希望するロス五輪 メジャーリーガー派遣の障壁は?
今年のオールスターでも異彩を放ったブライス・ハーパー(左)と大谷翔平(右) 【Photo by Sam Hodde/Getty Images】
しかし、それは開催国で野球が盛んだから、という日本のときのような特別枠。通常競技として復活するわけではなく、その先は未定。
大リーグ機構(MLB)側は、「通常競技として復活させるなら、メジャーリーガーの派遣を考えてもいい」としているが、IOC(国際オリンピック委員会)側は、「メジャーリーガーの派遣を確約してくれるなら、通常競技としての復帰を検討する」とし、譲らない。
それでも28年に関しては、自国開催であり、国境をまたぐような移動も伴わないことから、IOCではなく、MLBのスター選手らがむしろ積極的にMLBに参加検討を促す。
日程、補償、保険ーー障害は少なくない。ブライス・ハーパー(フィリーズ)などは、野球のさらなる普及は、MLBにとっても選手にとっても共通のゴールであり、「そのためなら、折り合えることもある」と話しているが、どうにもMLB側は、腰が重い。
はたしてどうなるのかーー。
アーロン・ジャッジ「五輪での野球復活はMLBにとってもいいこと」
ただこれまで、その言葉に賛同し、「俺も、俺も」とうねりが起きたわけではない。しかし今回、オールスターゲーム前日に行われた会見で、28年のロス五輪で主力になるであろう選手らに出場の意思を聞くと、誰もが参加に積極的だった。
今年、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)とア・リーグのMVP争いをしているボビー・ウィットJr.(ロイヤルズ)は「100%プレーしたいね」と即答。「どんなときでも国を代表できるのは誇りだ」
彼は昨年行われたWBCに出場したが、どうメジャーリーガーの派遣に消極的なMLBを説得するかと問うと、こう答えている。
「WBCのテレビ視聴率は良かったと聞いている。オールスターが国の代表として戦うのをみんな見てみたいはずなんだ」
WBCの人気を考えれば、五輪の野球はさらに盛り上がり、注目を浴びる。ひいては、MLBのさらなる人気獲得につながるーーそう訴えていきたいということか。
インパクトを与えそうなのは、ジャッジの発言。彼に参加したいか? と聞くと、顔をほころばせた。
「五輪で国の代表としてプレーすることは夢だよ。夏も冬もずっと見てきたからね。夏の五輪に野球が復帰するなら僕たちが出て盛り上げたい」
彼は、MLB側が得る利点も強調する。
「それはMLBにとってもいいことだと思うんだ。世界に野球を広めるいい機会だからね」
これまでハーパーが先頭となって声を上げてきたが、「自分としては彼をサポートするつもりだ」とジャッジは話し、その意義を改めて訴えた。
「最高の経験になるし、いちばん大事なのは野球がさらに発展すること。特に若い世代が興味持ってくれるかもしれないからね」
野球が盛んとはいえないヨーロッパやアフリカの子どもたちにも、五輪を通してならその目に野球が触れるかもしれない。結果として裾野が広がれば、グローバル化が進む。
大谷翔平(ドジャース)も「出たい気持ちはもちろんあります」と話し、こう理由を説明した。
「国際大会は特別ですし、五輪も特別だと思う。特に五輪は普段野球を見ない人たちも見る人が増えていく、そういう意味では野球界にとっても大事なことだと思うので、個人的にも出てみたいという気持ちはもちろんあります」
その大谷の言葉をハーパーに伝えると、「それは大きい」と頬を緩めた。
「聞いてくれる人が多くなるから」
いまやその発言は、リーグ屈指の影響力を持つ大谷。その主張は、おのずと拡散力を持つ。ハーパーは続けた。
「MLBにとっての大きなゴールは、このスポーツをもっと発展させることだと思うんだ。五輪はそのための最適なプラットフォームだ。野球をいま以上に盛り上げるには、五輪のような国際ステージが必要なんだ」