週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#19】総合力高い147キロ左腕、山村学園・西川歩 奈良大付・岸本佑也はスローイングが光る遊撃手

西尾典文

「高校トップクラスのスローイング!近畿で注目の大型強肩ショート」

持ち前の強肩を生かしたスローイングは超高校級の奈良大付・岸本 【写真提供:西尾典文】

岸本佑也(奈良大付 3年 遊撃手兼投手 181cm/77kg 右投/右打)

【将来像】村林一輝(楽天)

コンパクトな腕の振りとフォームが重なる。リリーフで大成しそうな雰囲気

【指名オススメ球団】西武
源田、外崎の後釜候補となる若手の内野手が必要なチーム事情から

【現時点のドラフト評価】★☆☆☆☆
育成であれば指名濃厚

 以前のコラムで取り上げた石塚裕惺(花咲徳栄)、斎藤大翔(金沢)、今坂幸暉(大阪学院大高)など今年の高校生はショートの有望株が多いが、近畿で今坂と並んでこの夏高い注目を集めていたのが奈良大付の岸本だ。奈良県の出身で、中学時代は強豪チームとして知られる柏原磯城リトルシニアでプレー。しかし旧チームでは控えで、レギュラーに定着したのは昨年秋から。チームは近畿大会に出場し、筆者も報徳学園との試合を現場で見たが、強い印象は残っていない(試合は0対2で奈良大付が敗戦)。ちなみにこの試合での岸本の成績は3打数0安打となっている。

 正直その存在は忘れていたほどだったが、冬の間に大きく成長、春の県大会ではホームランも放つなど活躍し、プロのスカウトからも度々名前が聞かれるようになっていた。そんな岸本の成長を確かめるべく、7月10日に行われた奈良高専との試合に足を運んだ。試合前のシートノックからとにかく目立っていたのがそのスローイングだ。肩が強い選手はそれをアピールしようとしてモーションが大きくなることが多いが、岸本は素早く小さい動きで速いボールを投げることができていたのだ。無駄な動きがない分、コントロールも安定しており、外野からの返球を中継するプレーでもサード、ホームに素晴らしい送球を見せていた。スローイングに関しては間違いなく“超高校級”というレベルにあることは間違いないだろう。秋に比べて体重も増やしたとのことで、まだ少し細身だが体つきがしっかりしてきたのもプラス要因である。

 ただ一方、守備面で課題と感じたのがフットワークだ。捕球してから送球までの流れに少しスムーズさがなく、細かいステップに軽快さが感じられなかった。スローイングの強さが抜群のため、それでもアウトにできてしまうというのはあるが、高いレベルで勝負するにはもう少しフットワークを鍛える必要があるだろう。バッティングも4番に座り、大きい構えで打席での雰囲気は十分だったが、少しバットのヘッドが外周りする傾向があり、上半身の力に頼ったスイングになりやすいのも気になった。この日も第3打席で犠牲フライを放ったがヒットは出ず、打ち損じたようなフライアウトが多かった。振る力がついてきたことは間違いないだけに、確実性のアップが今後の課題となるだろう。

 冒頭で名前を挙げたショートの選手に比べると攻守ともに少し物足りなさが残ったのは事実だが、スローイングに関してはトップであり、プロでも通用する大きな武器があるというのは魅力である。また投手としても140キロ台中盤のスピードを誇り、この夏も橿原学院戦では被安打3、11奪三振で完封勝利をあげた。奈良高専戦では9球団、20人のスカウトが集結しており、注目度の高さがよく分かるだろう。現時点では支配下指名のボーダーラインという印象だが、大きな強みがあるだけに、高く評価している球団もありそうだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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