週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#19】総合力高い147キロ左腕、山村学園・西川歩 奈良大付・岸本佑也はスローイングが光る遊撃手

西尾典文
 秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

 甲子園では熱戦が続いていますが、地方大会で敗れた選手にもまだまだ楽しみな選手は多くいます。今回はその中から関東で注目の左腕と、関西で注目のショートを紹介します。
(企画編集:Timely!編集部)

*現時点のレベルバロメーター:★の数
★★★★★ 5:複数球団の1位入札濃厚
★★★★☆ 4:1位指名の可能性あり
★★★☆☆ 3:上位指名(2位以上)の可能性あり
★★☆☆☆ 2:支配下での指名濃厚
★☆☆☆☆ 1:育成であれば指名濃厚

「プロ志望を明言して急成長!埼玉で注目の実戦派サウスポー」

山村学園・西川はスピードだけでなくフォームとコントロールも安定しているところが魅力 【写真提供:西尾典文】

西川歩(山村学園 3年 投手 172cm/75kg 左投/左打)

【将来像】田口麗斗(ヤクルト)

上背はなくてもスピードは十分。高い制球力と強気なピッチングは田口と重なる

【指名オススメ球団】DeNA
高卒の若手投手が不足。東克樹という小柄な左腕のお手本がいることもプラス

【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

 埼玉県川越市にある山村学園。2008年に女子校から共学化され、甲子園出場こそないものの、ここ数年はコンスタントに埼玉県内で上位に進出している。そんなチームで今年プロから注目を集めているのがエースの西川だ。地元の川越出身で、川越一中時代から県内では評判の投手だったという。山村学園でも1年春から公式戦に登板。2年からエースとなり、昨年秋も県大会でベスト4に進出している。小柄な左腕ということでこの時点ではプロのスカウトから名前を聞くことはなかったが、プロ入りを目指して冬から春にかけて大きく成長。この夏には複数のスカウトからその評判を聞くまでになった。

 そして実際にピッチングを見ることができたのはこの夏の埼玉大会5回戦、対聖望学園戦だった。先発のマウンドに上がった西川は立ち上がりから140キロを超えるスピードを連発し、筆者のスピードガンでは最速147キロをマーク。スピードガンの数字が全てではないが、これだけのスピードがある高校生の左投手はそうそういるものではない。そして高く評価できるのが、速いだけでなくフォームとコントロールも安定しているという点だ。少し踏み出した右足がアウトステップ傾向なのは気になったものの、投球の流れがスムーズで下半身もしっかり使えており、フォームの躍動感も申し分ない。肘のたたみ方も上手く、体の近くで腕が振れるのも長所だ。1回から3回にかけては6者連続三振を奪って見せたが、ストレートで度々空振りを奪っており、ボールの質の良さも目立った。

 そしてもう一つ目立ったのが投球の引き出しの多さだ。3回には味方のエラーが重なって3点を失い(自責点は0)、このイニングだけで32球を要するなど球数も増えたため完投は難しいかと思われたが、4回以降は速いストレートは見せ球として使い、変化球を主体とした投球に切り替えて9回まで0を並べたのだ(試合は6対3で山村学園が勝利)。スライダーはスピードと変化の大きさにバリエーションがあり、チェンジアップのブレーキも素晴らしいものがある。緩いカーブで打者の目線を変えられるのも大きい。最終的にこの日は140球を投じたが、ストライク率は70.7%を記録。これだけ球数を投げて70%以上がストライクというのはかなり高い数字であり、制球力の高さも見事という他ない。

 夏も埼玉大会の準決勝で花咲徳栄に敗れたが、強力打線を相手に被安打5、3失点完投と力は十分に発揮した。また埼玉大会5試合に登板して自責点はこの敗れた試合の3点のみで、23回を投げて防御率1.17をマークしている。上背はなくても投手としての総合力の高さは今年の高校生左腕では全国でも上位であることは間違いなく、高校からの支配下指名も十分に狙えるだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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