「終始エモかった」パリ五輪バスケ男子決勝 元日本代表主将・篠山竜青がしびれたアメリカの強さ

青木美帆

日本がイメージしやすいセルビアのバスケ

絶対王者のアメリカを、どこがとらえるのか。ヨキッチを擁する今大会銅メダルのセルビアもその候補だが、その流動的に動くスタイルは日本代表にとって良いお手本になりそうだ 【Photo by Daniela Porcelli/Eurasia Sport Images/Getty Images】

 おそらく、これで一時代の終焉を迎えるだろうアメリカ代表が、次のロサンゼルス・オリンピックでも同じような強さを見せられるのかどうかは、正直分かりません。

 2023-24シーズンにおける「オールNBAファーストチーム」のうちアメリカ出身者はテイタム(26歳)1人だけで、あとはカナダのシャイ・ギルジャス・アレクサンダー(26歳)、セルビアのニコラ・ヨキッチ(29歳)、スロベニアのルカ・ドンチッチ(25歳)、ギリシャのヤニス・アデトクンポ(29歳)でした。彼らは脂の乗った年齢で4年後を迎え、エースとして世界一を狙いにくるでしょう。

 また、銅メダルを獲得したセルビアのように、ユース年代からプレーしてきたメンバーが織りなす成熟度の高いバスケットで絶対王者のアメリカに対抗するチームが増えて、もはや30〜40点差が開くような試合は過去のものになりつつあります。次のアメリカ代表の顔が誰になるのか。そしてどの国がアメリカをとらえるのか。4年後がすごく楽しみになる大会でした。

 4年後が楽しみなのは、日本についても同様です。今大会の日本代表は、河村(勇輝)選手と八村(塁)選手の1対1、2対2を軸としたスピーディなバスケットを展開しましたが、ここからもう1つ上の段階に登るためにはハーフコートのオフェンス……特にオンボールスクリーンだけでなくオフボールスクリーンを交えながら、チームとして組織的に戦っていく引き出しも必要になるのではないかと思いました。

 そういう意味で、お手本になりそうだなと思ったのがセルビア。アスレティック能力がものすごく高い選手がいなくても、攻守ともに1つひとつのプレーの遂行力が高く、チームとして流動的に動くスタイルは、日本もイメージしやすいのかなという印象を受けました。

 一方で、今後河村選手と富永(啓生)選手がNBAで活躍するようになったら、八村選手を含めた主力3人の代表活動のハードルが上がりますから、短期間でチームを作り上げていくにはどうしたらいいのか、ということも考えなくてはならないでしょう。

(トム・)ホーバスヘッドコーチが続投するかどうかはまだ分かりませんが、4年後に向け、ヘッドコーチの人選、アンダーカテゴリーからの強化・育成とA代表の連携といった部分も含めて、短期と長期、両方の目線で強化方針が設定されることに期待したいです。

 そして協会関係者、選手、指導者、ひいては日本のバスケット関係者全員が「世界のベスト8、ベスト4入りを果たすためには何が必要なのか」ということを当事者として真剣に考え、アクションを起こさなくてはならない。そういう姿勢こそが、男子バスケットボール界の未来を変えていくのだと、僕は思います。

篠山竜青(しのやま・りゅうせい)

1988年7月20日生まれ、神奈川県出身。ポジションはポイントガード。北陸高、日本大で全国制覇を果たし、2011年の東芝ブレイブサンダース(現川崎ブレイブサンダース)に加入。的確なゲームコントロールとリーダシップ、明るいキャラクターでファンから愛される“クラブの顔”だ。2019年FIBAバスケットボールワールドカップでは主将を務めた。178センチ・75キロ。XアカウントID:@shinoyama7

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著者プロフィール

早稲田大学在学中に国内バスケットボールの取材活動を開始。『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立し、現在はBリーグや学生バスケットボールをメインフィールドに活動中。著書に『Bリーグ超解説 リアルバスケ観戦がもっと楽しくなるTIPS50』『青春サプリ。心が元気になる5つの部活ストーリー』シリーズなど

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