5連敗で敗退も「3善戦」は大きな収穫 ハンドボール日本代表が“1点差”を制するために必要なこと

大島和人

「差」を埋めるために

吉田守一はマークを引き付けつつ奮闘を見せた 【写真は共同】

 ピボット(PV)は前線の中央で身体を張る、複数のDFにもみくちゃにされるポジションだ。パリ五輪でここの主力としてプレーした吉田守一は(世界レベルでは小柄かもしれないが)193センチ・110キロの体格を持ち、ハードな仕事をやり続けた。吉田守は23歳と若く、五輪後はフランスのクラブでプレーをする。

 渡部は「しゅいち」への依存度をこう説明する。

「DFは3枚目として真ん中を守って、攻撃も常にコンタクトをされているポジションなので、フィジカル的な疲労は大きいものだったはずです。日本の真ん中で身体を張って守って攻めてくれたことにはすごく感謝しています。あとは吉田選手レベルのプレーができる選手が一人二人増えてくると、彼の休める時間もできる。そうすれば日本のクオリティの高いプレーを5試合、大会全体でできるのかなと思います」

 スウェーデン戦では封じられたとはいえ、安平や藤坂の俊敏性は相手との違いを出せるポイントになっていた。一方で「コンタクト」「フィジカル」はハンドボールに限らず日本の永遠の課題と言っていい部分だ。トレーニングと、実戦での「慣れ」がどちらも必要になる。

 凡庸な結論かもしれないが、フィジカルエリートがこの競技に興味を持ってもらうようにリーグHも含めたハンドボールの認知度を上げねばならない。当然ながらコーチの招へい、国際試合の設定などで、ヨーロッパとの接点を増やすことも大切だ。

 オルテガ監督の契約はオリンピック期間限定で、大会後は別の監督が指揮を執ることになる。ただ代表強化についてはこう述べていた。

「彼らはもう一歩前進しなければなりません。何人かの日本人選手がヨーロッパで試合に出場し、日本国内でもヨーロッパのコーチの指導を受けることが重要だと思います」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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