大谷翔平、今永昇太らの会見ラッシュで、記者席のスコアブックはほぼ白紙!? MLBオールスターゲームの舞台裏
今年のオールスターゲームで先制3ランを放ち、笑顔を見せる大谷翔平 【Photo by Mary DeCicco/MLB Photos via Getty Images】
7月16日(現地時間、以下同)にテキサス州アーリントン、グローブ・ライフ・フィールドで行われた今年のオールスターゲームは、大谷翔平(ドジャース)が先制3ランを放ったことで、例年以上の忙しさ。
一回表が終わると、「先発したコービン・バーンズの会見が、10分後にア・リーグのクラブハウス前で行われます」とのアナウンス。さっそく記者席から会見場とクラブハウスがある地下へ向かった。大谷には四球を与えただけなので、特に絡みのエピソードはないのだが、6月末に双子が生まれたばかりで、少しでも家族と過ごしたいバーンズがテキサスに着いたのは当日の午前11時。1イニングを投げ終えると、試合途中で球場をあとにし、夜の便でそのまま自宅があるアリゾナへトンボ返りした。
「ようやく、どっちがどっちか、わかるようになったかな」
記者席に戻って、そんなほのぼのとした音声ファイルをおこし始めていると、大谷が三回の2打席目に球宴初本塁打を放った。仕事を中断し、そのまま右翼席へ向かうと、ホームランボールを捕ったファンを探した。
争奪戦を制してボールを手にしたのは、モンタナ州から来たというクリス・ハドルストンさん。「オールスターゲームのチケットは、妻から40歳の誕生日プレゼントとしてもらったんだ。そうしたら翔平のホームランボールまで手に出来た。最高だよ」。
角度良く上がった打球が、自分の方に向かってきた。「チャンスがある」。そう思って捕球体制に入ったが、そこからは押し合いへし合い。足元に転がったボールをつかもうとすると、「20人ぐらいが覆いかぶさってきた感じだった」。なんとか手にした記念球は、「一生の思い出。ずっと手元においておくよ」。
その回の終了を待って話を聞き始めたが、イニング間では終わらなかった。しかし、ハドルストンさんは嫌な顔ひとつせず、取材に応じてくれた。
ファンの取材を終え、記者席に戻ろうとエレベーターの上りボタンを押したが、気づくと試合は3対3の同点に。ナ・リーグが勝てば、先制本塁打を放った大谷がMVP(最優秀選手賞)を獲る可能性が高い。その場合、大谷の会見は試合が終わってから。
エレベーターの前まで来て、一度は上りボタンを押したが、同点となったことで、大谷がMVPを獲る可能性が低くなった。勝ち越し打を放った選手の方が断然有利だからだ。ということは、すぐにでも会見が始まるかもしれない。そう考え、下りボタンを押し直す。結局、その下りエレベーターに乗ってから、試合後の取材を終えるまで、記者席に戻ることはなかった。もちろん、スコアブックは机の上に置きっぱなしである。
今永昇太がオールスターゲームで得たもの
MLB移籍1年目でオールスターゲーム出場を果たした今永昇太。1イニングを投げ、無安打無失点に抑えた 【Photo by Daniel Shirey/MLB Photos via Getty Images】
「MVPの可能性がなくなれば、交代後。場所は追って連絡する」
そんなやり取りをしているうちに、あっという間に今永が1イニングを三者凡退に抑え、マウンドを降りた。ややあってこんなアナウンスが。
「今永昇太は10分後、会見場で会見を行います」
ナ・リーグのクラブハウス前から、今度は会見場へ急ぐ。まともに登板を見られなかったが、「この2日間で見た最高の景色は?」と聞いてみた。
今永は少し考えてから、こう言葉を紡いだ。
「僕は、米国に来る前は米国の野球を知らなかったので、豪快さだったり、パワーとスピードがもの凄いと想像して米国に来ましたけど、きょうの試合前でも選手が一人一人ウオーミングアップをしていて、メジャーのトップ、オールスターに選ばれるような選手でも、どの試合でもしっかり準備している。それを勉強できたので、フィジカルに劣る自分が準備を適当にできないなというのは、この2日間で感じました」
大谷のホームランについて、こう話したのも印象に残った。
「彼はこの場でもさらにスターになってしまうのかという、ちょっとジェラシーを感じました」