【YouTube企画】MLBスターに聞いたロス五輪

ジャッジ、ハーパーらも参加を希望するロス五輪 メジャーリーガー派遣の障壁は?

丹羽政善

オールスターゲームともかぶるロス五輪の日程が障壁に

 その翌日のことーーつまり、オールスターゲーム当日の午前、全米野球記者協会の会合に参加したロブ・マンフレッドコミッショナーは、野球が五輪の通常競技として復活することには興味がなさそうだったが、ロサンゼルス五輪にメジャーリーガーを派遣することには、「話し合う余地がある」と含みをもたせた。

「パリでは、新たな球場が作られることはないと分かっていた。でも、ロサンゼルスならば、その問題はない。考えなければいけない」

 実際、内部で話し合いが行われているよう。しかしながら、ロサンゼルス五輪の日程は7月14日から30日まで。オールスターゲームともかぶることから、「日程がきつい」とコミッショナーは、渋い顔だ。

 対してハーパーらは、オールスターゲームを中止し、さらに10日ほどシーズンを中断して、時間を作ればいい、と主張する。だが、一番集客が見込める7月に10試合も中断する場合、その分の損失を誰が補填するのか。1日に15試合行われるとして150試合。1試合の収益は、球団によって異なるが、300万ドルと見積もると、総額で4億5000万ドル。

 もちろん、シーズンの開幕を早め、さらにシーズン終了を少し送らせれば、162試合は確保できる。しかし、春先の寒い時期と7月では、集客数が比較にならない。また、シーズン終盤は、消化試合になっている可能性があり、その場合、やはり収益では7月に劣る。その差額分とオールスターで得られるはずだった経済効果は、五輪参加による将来的な市場拡大によって、穴埋めできるのか。

 また、MLBには、選手を利用してIOCが利益を得ることに抵抗もある。だからこそ、WBCという国際大会を作り、さらなる普及を目指してきた。

 世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のR・フラッカリ会長は昨年10月、MLB側からトップ選手の参加を確約する文書を受け取ったと明かしたものの、MLB側は認めていない。WBSCの米国支部のある役員でさえ、コメントを求めると「それは努力目標ということ」と曖昧に答えた。

 かなり難しいーーというのが肌感覚だが、28年に限っては、野球のグローバル化という共通のゴールに向けて、MLBと選手がまとまれるのか。焦点は、次の労使協定。現行の協定は2026年までなので、27年以降の協定にどう五輪の参加規定が盛り込まれるか、ということになりそうだ。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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