センバツ準優勝校・報徳学園の強い決意 「この夏は何がなんでも甲子園に行く」

沢井史

振る力がつき中軸以外にも長打が出るように

間木とともにダブルキャプテンだった福留が、5月から単独の主将に。センバツではヒットが出ずに苦しんだが、春の大会後に復調し、良い状態で夏の大会に臨めそうだ 【YOJI-GEN】

 そして、チームにはこの春ひとつの“改革”があった。4月末の県大会敗退後、主将が間木から中堅手の福留希空に代わったのだ。これまでは主に間木が主将として表に立ち、間木が授業の関係で練習に出られない間は福留がキャプテンとしてチームを仕切る、ダブルキャプテン制を敷いていた。だが、投手である間木の負担軽減に加え、福留の成長を見た指揮官が、主将を福留に1本化したのだ。

「センバツでは福留が力を発揮できず(打率は5試合で,067)、本人は相当悔しい思いをしました。このまま腐ってしまう場合もあるんですけれど、本人はむしろ練習に真摯に取り組むようになって、そういった姿勢を見た選手らから“福留についていってもいい”という声が聞かれるようになりました。本人とも話をして、5月からキャプテンは福留でいこうということになりました」(大角監督)

 福留自身、センバツはかなり苦い思い出しかないと口にする。

「家で親がセンバツの試合の映像を見ていても、自分は見ずにテレビから離れてしまいます(苦笑)。それくらい、センバツは悔しさしか残っていません」

 このままで終わりたくない。帰郷後、練習に一層熱がこもるようになったという。センバツではなかなかヒットが出ずもがき苦しんだが、県大会後の練習試合では長打が徐々に増え、快音が響くようになった。

 福留に限らず、センバツでレギュラーを張っていた選手たちは各々がレベルアップを目指して練習に励んできた。また大角監督はチームの活性化を図るため、この数カ月で成長を遂げた新戦力や1年生を起用。100人を超える部員たちが泥まみれになりながら激しい競争を繰り広げてきた。

 2人の絶対的な投手がいる一方で、かねてからの課題は打線だった。前チームと比べて長打力に欠け、得点力不足が懸念されていた。今春のセンバツも結果として打線がつながった試合はあったが、パワー不足は否めなかった。

 だが、春の県大会準々決勝で敗れると、ゴールデンウイーク中の3日間にわたりチームで徹底的にバットを振り込んだ成果もあり、振る力が徐々についてきた。6月の練習試合でも、春まではあまり目にしなかった長打が、中軸以外の選手からも出るようになった。

春の連続準優勝を経て今夏に目指すものはひとつ

センバツ準優勝校として夏の大会を戦うのは昨年と同じ。強敵ひしめく兵庫を勝ち抜き、甲子園の切符をつかめるか 【写真は共同】

 報徳学園は2018年の100回大会を最後に、夏の甲子園から遠ざかっている。とはいっても6年前。世間的には“遠ざかった”と表現するほどの年数ではないかもしれないが、報徳学園からすれば、長い年数なのだ。

「昨年はセンバツで準優勝して(期待が大きいなか)5回戦で負けました。センバツで決勝まで行った勢いをもって春の県で優勝して、近畿大会まで行きましたが、立ち止まらずに走り続けていった結果、夏に勝てなかった。7月に今朝丸が腰を痛めたのもそれが一因かもしれません。(今年は)今朝丸に4月に身体作りをさせたのも、そういう過去があったからというのもあります」(大角監督)

 もっと言うと、報徳学園は一昨夏も5回戦で明石商に接戦の末に敗れ、3年前の夏は準決勝で神戸国際大付に惜敗。2000年はコロナ禍のため大会中止だったが、その前年は3回戦敗退と、夏は直近5年間の4大会で一度も県の決勝にすら進めていないのだ。

 兵庫県は明石商、社を含め、今季だと須磨翔風といった公立勢の勢いもすさまじい。堅実な野球を身上とする社は、一昨夏、昨夏と2年連続で甲子園出場を果たし、明石商もしぶとい攻めで常に上位に進出してくる。組み合わせ抽選の結果を見ると、この社か明石商と5回戦で対戦する可能性がある。

「ですので、この夏は何がなんでも、という気持ちがあります」と指揮官が口にすれば、今朝丸も「この夏は絶対に甲子園に行く。そういう思いを常に持って投げます」と強い口調で決意表明する。

 春の舞台での2度の準優勝を経て、夏に目指すものはひとつしかない。昭和(春夏1回ずつ)、平成(春1回)と日本一を経験した兵庫県きっての伝統校が、令和の夏に新たな歴史を刻む。100人を超える部員たちで作り上げる“一体感”も武器に、いよいよ夏の激戦を迎える。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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