センバツ準優勝校・報徳学園の強い決意 「この夏は何がなんでも甲子園に行く」

沢井史

2018年以来となる夏の甲子園出場を目指す報徳学園。今朝丸、間木のWエースは健在で、課題の打力も春と比べて向上している 【YOJI-GEN】

 昨年に続いて今春のセンバツでも準優勝した報徳学園。甲子園出場は春夏通算38回を数える兵庫きっての伝統校は、2018年を最後に夏の全国選手権から遠ざかっているだけに、この夏にかける思いは非常に強い。夏の激戦を前に、大角健二監督や選手たちに意気込みを聞いた。

特別扱いはなく専用バスも室内練習場もない

今春センバツで脚光を浴びた今朝丸。同大会後は夏を見据えてハードな練習をこなしてきた 【写真は共同】

 時計の針が15時半を指そうとした頃、授業を終えた選手たちが純白の練習着に着替えて続々とグラウンドに集まってきた。そしてベンチ裏のホワイトボードに書かれた今日の練習メニューをそれぞれ確認している。

 報徳学園野球部のグラウンドは校舎が目の前にある校内のグラウンドだ。主に黒土部分を野球部、外野後方の人工芝部分はラグビー部、陸上部、サッカー部などが使い、運動部員がひしめく。時期や時間帯によっては外野ノックを打つことも制限され、もちろんフリーバッティングも限られた範囲内で行う。

 野球部専用バスや室内練習場もなく、野球部だからと特別扱いはされない。春夏計38回の甲子園出場を誇る伝統校が?と思う人もいるはずだ。だが、部活動は高校生活の一部であることを思うと、これが高校野球の当たり前の景色なのか、と納得させられたりもする。

 この日は前期の中間考査前ということで、通常の練習メニューよりもやや軽めで、夕方から勉強時間も設けられていた。それでも夏の大会の開幕を控えた大事な時期であり、限られた時間内で効率の良い練習を行う。

 外野部分でアップを済ませたのち、それぞれがグループに分かれて練習メニューをスタート。野手陣の一部は内野部分でノック、別のグループの選手はウエイトルームへ移動していく。投手陣はグラウンド横にあるトラックでランメニューを開始した。その輪の中にひとり背の高い投手がいる。今朝丸裕喜投手だ。

「4月はずっとミニキャンプのような練習をしていました。5月から投げ始めたんですけれど、5月の半ばくらいから夏に向けた追い込みのメニューをずっとやっていて……。結構キツイんですよ」

 5月は週末の練習試合で登板を重ね、6月に入ると愛知県の招待試合で豊川、その翌週からは広陵や創志学園などとの対外試合にも登板した。その頃は追い込み練習で体が重たいままの登板が続き、痛打を浴びる場面もあった。

好調の間木とワンステップ上を目指す今朝丸

センバツでは「あまり調子が良くなかった」という間木だが、5月以降は好調をアピール。本人も最後の夏に向けて手応えを感じているようだ 【YOJI-GEN】

 一方で、その今朝丸と比べて「5月以降、ずっと好調を維持している」と大角健二監督が明かすのが、センバツでエース番号を背負った間木歩だ。

 毎週のように週末になると練習試合が行われるが、間木は特進コースに所属しているため土曜日にも授業があり、原則的に日曜日の試合にしか登板ができない。だが、その貴重な登板機会で素晴らしいピッチングを続けてきたのだ。

 5月上旬の練習試合では7回参考ながら完全試合を達成。以降も無失点のまま快調なピッチングを重ねてきた。6月になると少々失点する試合はあったが、それでも夏に向けて順調に歩みを進めてきた。

「センバツではあまり調子が良くなかったので……。夏は何としても自分のピッチングをしたいです」(間木)

 今春センバツは昨春に続き、準優勝だった。昨年以上の悔しさを味わい、決勝の日の夜はなかなか寝つけなかったという。

 背番号1の責任も背負いながら、最後まで本領を発揮できないまま終わった春のことを思うと、奮起しないわけがない。5月から好調を維持しているが、周囲からは「その調子の良さは夏に発揮してくれよ」と冷やかされることもある。だが、本人は自信を滲ませながらこう決意する。

「この調子を夏の終わりまでずっとキープさせます!」

 追い込み練習の最中だが、大角監督は「体がキツイ状態でも間木は調子が良い。今、一番信頼できる投手。もともと安定感のある投手なので、夏もこの状態を何とか維持してくれたら」と期待する。

 対する今朝丸は、追い込み練習で体に負荷がかかった状態が続くなかで、周囲からは思ったようなパフォーマンスができていないと見られがちだ。それでも指にかかったときのボールには威力があり、対外試合では大勢のスカウトの前でも自身のピッチングを披露できている。

 前述の広陵との練習試合では、広陵のエース・髙尾響との投手戦が6球団10人のスカウトの目を釘付けにした。結果は8回を投げ、5安打1失点。今春センバツで一気に注目を集めたが、4月の身体作りを経て、さらにワンステップ上のピッチングを目指している。

「今は疲れが溜まった状態ですが、その疲れが抜けてきた夏の大会でさらに良いピッチングをしてくれるはずです」と大角監督は期待する。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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