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大谷翔平、ホームランダービーへの出場を辞退 それが「投手・大谷」にとって当然だと言えるワケ

丹羽政善

2度目のトミー・ジョン手術からの復帰

試合前に投球練習を行う大谷 【Robert Gauthier/Los Angeles Times via Getty Images】

 もっとも、ウォーカーは復帰しただけでも、まずは大きなハードルを超えたといえる。昨季終了後、2度目のトミー・ジョン手術を行った150選手について調査をしてみた。野手、ここ2年以内に2度目の手術を受けてリハビリ中の選手らを除外したところ、対象は119選手に絞られた。

 ここから何人が同レベル(メジャーならメジャー。3Aなら3A)に復帰できたか調べてみたところ、復帰できたのは78人(65.5%)、復帰できなかったのは41人(34.5%)だった。119人のうち、メジャーリーガーは70人。復帰できたのは45人(64.3%)、復帰できなかったのは25人(35.7%)。

 回数を問わない場合、トミー・ジョン手術からの復帰率(プロ全体)は、米野球記者兼アナリストのジョン・ロエジェルのまとめによれば約86%なので、2度目となるとやはりぐっと率が下がる。
 では、復帰するだけではなく、ある程度活躍できたのかどうか? そこも調べてみた。すると、メジャーに復帰した45選手のうち、1シーズンで10試合以上登板し、ある程度実績を残した選手(ESTABLISHEDと定義)は33人。つまり、2度目の手術をした70人のうち、ESTABLISDEDにカテゴライズ出来るレベルに復帰できたのは47.1%に過ぎなかった(1度目は、米スポーツ有線局ESPNによると約67%)。メジャーへの復帰率は64.3%だったが、パフォーマンスまで回復する選手は5割に満たず、1シーズンで10試合登板することすら叶わず消える選手もいるーーというのが現実だ。

 ただ、2015年以降に限れば、2度目の手術をしたメジャーリーガーは70人中28人で、そのうち19人がメジャーに復帰(67.9%)し、ESTABLISHEDレベルに復帰したのは15人(53.6%)とやや数値が改善している。このあたりは、手術技術の向上、症例が増えたことで、リハビリプログラムがより洗練された、という捉え方も出来る。

 ドジャースでは大谷、ウォーカーの他に、ダスティン・メイも2度目(昨年7月)のトミー・ジョン手術からの復帰を目指している。大谷が受けたとされるハイブリッド手術に関してはまだデータも少ないが、ウォーカーの復帰は様々なことを示唆しており、話を大谷に置き換えるなら、投手としてのリハビリはまだまだ先が長く、2度目からの復帰はより慎重な対応が求められる。そのため、ホームランダービー欠場は当然の判断といえそうだ。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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