【週刊ドラフトレポート#11】代表合宿で注目を集めた本格左腕・高橋幸佑、高校球界屈指の強肩捕手・龍山暖
「地肩の強さは高校球界No.1の声、沖縄新興勢力の中心選手」
強肩が武器の龍山には、幹部クラスのスカウトからも熱視線が送られている 【写真提供:西尾典文】
【将来像】甲斐拓也(ソフトバンク)
上背はないが抜群の強肩で、スローイングを磨けば甲斐のレベルになれる可能性も
【指名オススメ球団】楽天
若手で将来のレギュラー候補となる捕手が少ない
【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚
2021年4月に開校したエナジックスポーツ高等学院。野球、ゴルフのトップアスリートを目指す学生を養成することを目指しており、2022年に創部した野球部には浦添商、美里工などで甲子園出場実績のある神谷嘉宗監督が就任するなど強化を進めている。現在の3年生はその1期生にあたるが、今年春の県大会で優勝を果たしており、夏の沖縄大会でも優勝候補の一角に挙げられている。
そんな新興チームでプロのスカウト陣から高い注目を集めているのがキャッチャーの龍山暖だ。沖縄の出身で中学時代は読谷ボーイズでプレーしていたが、当時からその強肩ぶりは県内では評判になっていたという。入学直後から1年生だけのチームということもあって不動の正捕手に定着。1年秋にいきなり県大会の準々決勝まで進出しており、この頃から関係者の間でも「エナジックという沖縄の新しいチームにいいキャッチャーがいる」という評判が聞かれるようになった。
そんな龍山のプレーを実際に見ることができたのは4月22日に佐賀で行われた春の九州大会、対明豊戦だ。プロフィールの172cm、76kgという数字を見ても分かるように上背はないものの、体つきはたくましく、捕手らしさは十分に感じられた。そしてその最大の武器は圧倒的な肩の強さだ。シートノックのボール回しでも軽く投げているように見えてもその勢いは1人だけレベルが違うことがよく分かった。ちなみに相手の明豊で捕手として出場していた石田智能は侍ジャパンU-18代表候補合宿にも選出されている実力者だが、そんな選手と比べても龍山の投げるボールの勢いは明らかに上回っていた。例えるなら高校生の中にトップクラスの社会人や大学生が混ざっているように感じたほどである。
試合が始まっても龍山のスローイングは猛威を振るうこととなる。イニング間のセカンド送球は2.00秒を切れば強肩と言われるが、龍山は最速1.80秒をマーク。これは筆者が計測した今年の高校3年生世代の選手の中でもトップの数字である。特に驚かされたのがボールの軌道で、投手に当たりそうな高さのまま落ちることなく一直線でセカンドベースまで届いていたのだ。地肩の強さはもちろんだが、フットワークも良く、しっかり足を使って投げられるのでコントロールも安定している。5回の守備ではヒットで出塁した走者を素早い牽制でアウトにしたが、そのスピードには思わずスタンドからどよめきが起こっていた。
バッティングもこの日は調子を落としているとのことで7番での出場だったが、普段はクリーンアップを任されているという。第1打席では鋭くライト前に弾き返すヒットを放っており、その力強いスイングはやはり下位打線のものではなかった。少し上半身の力と腕力に頼ったところがあるのが課題で、もう少し下半身の粘りが出てくれば確実性も上がるはずだ。またヒットで出塁した後にはすかさず盗塁を決め、脚力と走塁への意識の高さも感じられた。
この日のスタンドには確認できただけでも20人以上のスカウトが集結しており、そのうち6球団は編成トップやスカウト部長など幹部クラスが姿を見せていた。そのことからも注目度の高さがよく分かるだろう。今年の高校生捕手は春の選抜高校野球でも優勝を果たした健大高崎の箱山遥人がナンバーワンという評価を得ていると思われるが、担当スカウトからは「肩の強さなら箱山より上」という声も聞かれた。1年から正捕手としてマスクをかぶり続けているという経験も大きな武器と言える。
捕手はチームを勝たせることで評価が上がるとも言われるだけに、春に続いて夏も沖縄大会を制して、甲子園出場を果たすことができれば、高い順位での指名も見えてくるだろう。