清水との業務提携を延長したマジョルカの野望 CEOが語る日本マーケット進出の狙いとは?
今後はマジョルカの若手をエスパルスへ
今季、市立船橋から清水に入団したルーキーの郡司も、4月末から5月にかけてマジョルカBの練習に参加した。人的な交流はさらに活発になりそうだ 【(C)J.LEAGUE】
一番はやはり、『タイカ』がオフィシャルトップパートナーを務める清水エスパルスと業務提携を結べたことです。『タイカ』の鈴木大登・代表取締役社長がすべてセッティングしてくれたおかげで、日本のサッカーマーケットにより深く入り込めました。今回の訪日に際して、エスパルスとの業務提携がさらに2年間延長できたことを心から嬉しく思っています。
──昨シーズンのエスパルスは、昇格プレーオフの決勝まで進みましたが、惜しくもJ1昇格を逃しました。
過去にはマジョルカも何度となくセグンダ(2部)を経験していますし、16-17シーズンにはセグンダB(3部)への降格も味わいました。エスパルスが昇格できなかったのは本当に残念でしたが、努力を続けていれば必ず結果はついてきます。それは我々が証明してきたことでもありますからね。エスパルスは現在J2の首位と好調ですし、今シーズンこそはJ1に昇格してくれると期待しています。
──エスパルスとの提携の大きな目的は、「人的交流」と「組織運営のノウハウの相互提供」にあると思います。まず組織運営についてですが、Jリーグ、もしくはJクラブの運営から何か学んだことはありますか?
これまで多くのアジア企業と仕事をしてきましたが、その中でもJリーグは非常にオーガナイズされた組織だと感じましたね。ただ、我々には長年の経験があります。その蓄積がクラブ運営のノウハウにもなっていますし、エスパルス、ひいては日本のサッカー界に伝えられることも少なくないでしょう。例えば、ラ・リーガと各クラブが連動して築いているようなWIN-WINの関係性を、JリーグとJクラブの間に築く手助けもできると思います。
──人的交流で言うと、これまでエスパルスから森重陽介選手(FW/20歳)や郡司璃来選手(FW/18歳)などが、マジョルカのBチームの練習に参加してきましたね。
彼らのような若いタレントにとっては、大きな刺激になったでしょう。お互いの育成部門で情報交換をしながら、どんな選手を練習に参加させるべきかを決めていますが、今後はマジョルカの若い選手もエスパルス側に送り、人的な交流をより活発にしたいですね。
そして、これはまだアイデアベースですが、将来的にはエスパルスと協力し、日本にマジョルカのサッカーアカデミーを創設することも、長期的な目標として考えています。
日本サッカーのさらなる発展に投資は不可欠
22年12月に締結した清水との業務提携契約を、今回さらに2年延長。ともに来日したアブドン(左端)、ライージョ(右端)も同席し、IAIスタジアム日本平で清水の山室晋也社長(左から2人目)との調印式に臨んだ 【写真提供:RCD Mallorca】
そうですね、特に育成年代に興味があります。若い選手のほうが、クラブとしても多くの面で影響を与えやすいですからね。なによりマジョルカとエスパルスの協力関係によって未来のスター選手を発掘し、育てることは、双方のクラブにとってメリットがあると思っています。
──日本人選手の獲得は、スポーツ面とビジネス面、どちらのメリットがマジョルカにとって大きいですか?
スポーツ面でチームに貢献できる選手でなければ、絶対に獲得することはありません。もちろん、のちのちビジネスサイドに利益をもたらしてくれる選手も出てくるかもしれませんが、プレーヤーとして優秀であるか否か、マジョルカというチームにフィットするかどうかが大前提であり、それが選手獲得の際の明確な基準なのです。
──日本サッカーが今後さらに発展するためには、どんなことが必要でしょうか。
現在は安定の時期に入っていると思います。さらなる発展を望むのであれば、例えば国外からスター選手を連れてくるなど、クラブの収益を上げるための投資は必要でしょう。各クラブがそうした努力をすれば、Jリーグ全体のレベルも間違いなく上がりますし、10代のタレントの海外流出にもある程度の歯止めが掛かるはずです。どこも財政面に余裕があるわけではないでしょうが、Jリーグをより魅力のあるリーグにするための投資を惜しんではならないと思います。
(企画・編集/YOJI-GEN)