【月1連載】久保建英とラ・レアルの冒険(毎月第1木曜日更新)

来季のR・マドリーの陣容から予測 久保建英、古巣復帰のリアルな可能性

高橋智行

来季のマドリーの前線は絢爛豪華に

17歳の超新星エンドリッキの加入が内定済みで、さらに大物エムバペ(中央)の到来も近づいている。来季のマドリーの前線に久保が割って入る余地は…… 【Photo by Xavier Laine/Getty Images】

 では実際のところ、久保がマドリーでプレーできる余地はあるのか。それを検証するためにも、まずは来季のマドリーの陣容を整理しておく必要があるだろう。

 今季終了後に契約満了となる4人の中で、トニ・クロースとルーカス・バスケスは1年間の契約延長が濃厚。一方でベテランのセンターバック、ナチョの退団が決定的で、ルカ・モドリッチについては残留希望との報道はあるが、先行きは不透明だ。

 負傷した守護神ティボー・クルトワの代役として、チェルシーから1年間のレンタルで獲得したケパ・アリサバラガは、アンドリー・ルニンとのポジション争いに敗れ、退団が必至。同じくエスパニョールからのレンタルで、控えながら貴重な働きを見せたストライカーのホセルは、本人が残留を強く望んでいるものの、判断はクラブ首脳陣に委ねられている状態だ。

 その他、クルトワの復帰後は再び控えに回ることが予想されるルニン、カルロ・アンチェロッティ監督の信頼を失っているフラン・ガルシアとダニ・セバージョスに退団の可能性がある一方で、当初レンタルに出されると思われていたギュレルについては、マッチMVPに選出されたソシエダ戦後、指揮官自らが残留を明言している。

 補強に目を向けると、前線には3月の代表戦でイングランドとスペインから立て続けにゴールを奪ったブラジル代表の逸材FWエンドリッキ(パルメイラス)の加入がすでに内定済みで、さらにパリ・サンジェルマンのキリアン・エムバペの入団決定も、いよいよ時間の問題と見られている。

 すなわち来季の前線はこの2人に加え、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ、ジュード・ベリンガム、ブラヒム・ディアス、ギュレル、そしてホセル(残留した場合)と、世界中のクラブが羨む絢爛豪華なものとなりそうなのだ。

 一方最終ラインについてだが、ナチョの退団で手薄になるセンターバックは、下部組織出身のU-21スペイン代表のラファ・マリン(アラベスにレンタル中)を呼び戻してカバーすることになりそう。ただ並行して、リールのU-23フランス代表DFレニー・ヨロの動向も注視している。また、今季フェルラン・メンディの度重なる故障で問題を抱えた左サイドバックには、かねてよりバイエルン・ミュンヘンのカナダ代表DFアルフォンソ・デイビスの名が取り沙汰されているものの、まだ23歳と若く、移籍金が高騰する可能性があるため、来夏の契約満了を待つことになるかもしれない。

陣容とシステムを検証すれば答えは……

来季のマドリーのシステムが4-2-3-1なら、久保の適性ポジションは右サイドハーフ。しかしここにはロドリゴ(右)ら強力なライバルがひしめく 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 こうした状況を踏まえ、はたして久保に割り当てられるポジションはあるのだろうか。

 アンチェロッティは今季、“BBC(ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、C・ロナウド)時代”からずっと愛用していた4−3−3から、“ベリンガム・システム”とも言える4-3-1-2に変更してシーズンをスタート。その後、怪我人の続出を受けて4-3-2-1、4-2-3-1、4-3-3、中盤ダイヤモンド型やボックス型の4−4−2などを使い分けながら戦い、ラ・リーガでは優勝をほぼ手中に収め、CLでもベスト4進出と結果を残した。

 いずれのシステムでもヴィニシウスがいる左サイドが攻撃の起点であり、左肩上がりの傾向が強くなっている。そう考えても、右サイドの高い位置に張り出す久保の置き場所は難しい。来季はエムバペが1トップに入り(本人が1トップでのプレーを受け入れたとの報道がある)、システムは最近よく使われている4−2−3−1がベースになる可能性があるが、この場合、久保に最も適したポジションは右サイドハーフ。しかしそこには、ロドリゴ、ブラヒム、ギュレル、そしてアンチェロッティにとって絶対的なレギュラーであるバルベルデもいるだけに、レギュラー奪取は容易ではない。

 先日のヘタフェ戦(32節)で途中からプレーしたトップ下を狙うにしても、ここにもベリンガムを筆頭に、ブラヒム、ロドリゴと強力なライバルがひしめく。またソシエダ加入1年目に2トップの一角として機能しただけに、センターフォワード(ゼロトップ)もできなくはないだろうが、その場合はエムバペ、ヴィニシウス、ロドリゴ、エンドリッキ、ホセルらとの競争になる。

 中盤3枚の4-3-3なら、マジョルカ時代に経験したインサイドハーフも考えられるが、今のマドリーでこのポジションに求められるのは、傑出したフィジカル能力。バルベルデ、チュアメニ、エドゥアルド・カマビンガといった“モンスター”たちと渡り合えるとは思えない。

 こうして検証すれば、おのずと答えは出るだろう。仮にマドリーに戻ったとしても、これまでとは比べものにならないほど厳しいポジション争いが待ち受けている。もちろんチャンスがあるのならば、久保が世界最高のクラブで挑戦する姿も見てみたいが、少なくとも今夏のマドリー復帰はないと考えていいはずだ。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年に渡西。サッカー関連の記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、ラ・リーガを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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