「勝てば五輪」、単純明快な準決勝へ 大岩ジャパンは「本当の責任」を背負って戦う

川端暁彦

代表チームが背負う本当の「責任」

27日、チームはドーハの日本人学校の生徒らと交流会を行った 【撮影:川端暁彦】

 最大6試合を戦うことを想定し、日本はグループステージから「全員で戦う」(大岩監督)コンセプトの下、選手をローテーションしながら試合をこなしてきた。

 その過程で中国戦での退場劇や韓国戦での敗北といったネガティブな出来事もあったが、「大会の中でいろいろなことは起きるもの」(大岩監督)。起きたあとにチームがどういう反応を起こせるかが肝心だったわけだが、その点でこのグループは間違えなかった。

 選手同士で団結を確認し、お互いに助け合う空気を重んじ、一つの方向を向いている。代表チームが背負う責任とか言われても若い選手はなかなかピンと来ないものだが、五輪予選という舞台装置によって選手たちは嫌でもこのユニフォームの重みも実感している。

 重圧と戦い、それを乗り越えていく経験というのは、彼らの将来にとっても間違いなくポジティブなもの。五輪代表は、五輪という大会で「結果」を残すために存在しているという一面はあるが、同時に未来のA代表選手を育てる場でもある。そういうこともあらためて感じる大会になっている。

 そして、代表チームの責任というのは、敗れたり、悪いプレーをしたときにワンプレーを切り取られて難癖を付けられたり、心ない言葉による中傷を受けること――では、もちろんない。

 27日には現地の日本人学校との交流会が行われ、無邪気に「代表選手たち」へアプローチをかける子どもたちの姿があったが、この子たちをサインひとつ、言葉ひとつで笑顔にできるのも代表選手ならではの力。そして、勝ってこの子たちを喜ばせたいと思えることこそ、代表選手が感じるべき責任であり、また幸せだろう。

 日本時間29日26時30分から始まるイラクとの準決勝は、「勝てば五輪」という明快な目標のあるステージで、何より「結果」が問われる舞台である。

 だからこそ生まれる重圧もあり、代表選手としての本当の意味での「責任」を問われる舞台でもある。

 結成当初とは見違えるほど「チーム」になった今の彼らなら、美しくなるかどうかはともかく、たくましい試合は見せてもらえると思っている。

2/2ページ

著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント