週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#02】高校生スラッガーの評価は? “ギータ級”スイングのモイセエフ、走攻守ハイレベルな正林輝大

西尾典文

「昨年夏に続いて快音連発!レベル高い足と肩」

走攻守のトータルのバランスに優れた正林。外野手としての総合力は高校球界屈指 【写真は共同】

正林輝大(神村学園 3年 外野手 178cm/84kg 右投/左打)

【将来像】丸佳浩(巨人)
広角に長打を放つ打撃、強肩と俊足も備えたプレースタイルが重なる。
【指名オススメ球団】埼玉西武
若手野手人の底上げが必要で、強打の外野手は補強ポイント。
【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆(支配下での指名濃厚)

 選抜高校野球でモイセエフと並んで、外野手で見事なパフォーマンスを見せたのが正林だ。中学時代は軟式でも見事な打撃を見せていたとのことで、神村学園でも早くから外野の一角に定着している。初めて実際にプレーを見たのは昨年夏の甲子園、対立命館宇治戦。注目の2年生大型右腕、十川奨己からツーベースとスリーベースを含む4安打の大暴れを見せた。この時の試合を記録したノートにも以下のようなメモが残っている。

「打席での雰囲気は下級生とは思えない。タイミングのとり方に余裕があり、ボールを長く見てスムーズな振り出しでセンター中心に鋭い当たりを連発。ヘッドスピード、打球の速さも十分」

 正林はこの後の全ての試合でもヒットを放ち、5試合で23打数10安打、打率.435という見事な成績を残してチームの準決勝進出に大きく貢献した。秋の九州大会では少し調子を落としているように見えたが、この時は左足の疲労骨折の影響があったという。それでも県大会、九州大会を通して4番に座り続け、秋季大会トータルでは5割近い出塁率を残している。

 そして迎えた選抜高校野球。初戦はプロのスカウトも注目するエースの小川哲平を擁する作新学院との対戦だったが、そこでも正林は見事なバッティングを見せる。第1打席こそ空振り三振に倒れたものの、第2打席では初球のカットボールをとらえてライトスタンドへ運ぶホームランを放って見せた。さらに1点リードで迎えた8回の第5打席ではライト前へのタイムリーを放ち、貴重な追加点をたたき出すなど、4番としての役割をしっかり果たして見せた。チームは2回戦の大阪桐蔭戦で敗れたものの、この試合でも正林は3安打をマーク。2試合で9打数5安打、ホームランを含む長打2本という成績は見事という他ない。

 特筆すべきはそのスイングの安定感。早めにトップの形を作り、タイミングをとる動きも小さいため、変化球に体勢を崩されることがない。また速いボールに対しても鋭い振り出しで対応することができており、強引にではなく、スムーズに強く引っ張ることができるのも大きな長所。4月4日から行われたU18侍ジャパンの強化合宿でもレフトオーバーのツーベースとライトのフェンスを越えるホームランを放つなど、木製バットも全く苦にしないバッティングを見せた。選抜で対戦した投手は全員が右投手ということもあって、左投手への対応に疑問の声をあげるスカウトもいたが、強化合宿でのホームランは左投手から放ったものであり、そのあたりも打撃技術の高さをよく表していると言えるだろう。

 選抜で正林が昨年からの成長を見せたのはバッティングだけではない。作新学院戦でのショートゴロでは一塁到達タイムが4.00秒を切り、直後に盗塁を決めるなど俊足でもアピール。またライトの守備でもシートノックで度々強い返球を見せ、捕球から送球の動きもスムーズで、高い守備力があることも証明したのだ。モイセエフと比べても走攻守のトータルのバランスは上であり、外野手としての総合力は高校球界屈指であることは間違いないだろう。

 右投左打の外野手はプロでも非常に多く、何か一つのプレーが突出していないという点を指摘する声もあるが、新基準の金属バットや木製バットでもこれだけの結果を残せる高校生はそうそういるものではない。守備と走塁でも高いレベルにあることを示したことで、高校からのプロ入りは一気に近くなったと言えそうだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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