「ここまで話すのか」大谷が破った“沈黙”に地元紙記者も驚愕 元通訳・水原氏による賭博問題の“霧”は晴れたか
元通訳・水原氏による賭博問題を受け、3月25日に声明を発表した大谷翔平 【写真:Jon Soohoo/PI via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ】
もっとも、あの韓国での開幕シリーズ以来、MLB全体で、少なくともロサンゼルスでは、シーズン前の盛り上がり、興奮というムードは端に追いやられ、大谷翔平の元通訳・水原一平氏の賭博問題、虚偽説明、大谷の関わりに視線が注がれていた。帰国して数日休んだあと、ドジャースは24日にエンゼルスと対戦。大谷は2打数無安打だったが、彼を含めたチームの仕上がりにフォーカスが当たることはなく、「いやいや、それよりも……」という声がくすぶった。
大谷がコメントしていなかったことも、騒動に拍車をかけたが、25日に沈黙を破った。それは当初、「詳しいことは話せない」という当たり障りのない答えに終止するかと思われ、声明のみで質問は受け付けない、とドジャースの広報から通達があった段階で、米メディアからは不満の声も漏れたが、始まって約11分後、「ここまで話すのか」と空気が一変した。
地元紙「オレンジ・カウンティ・レジスター」のビル・ブランケット記者からは、こう連絡があった。
「驚いた。考えていた以上に詳細な経緯を翔平は話した。彼は今の段階ですべきことをしたと思う。一平はいっそう、窮地に陥ることになるが」
ブランケット記者が言うように、多くのもやもやが晴れた。
21日(米国時間22日)、米スポーツ有線局「ESPN」は一夜にして水原氏が発言を撤回した経緯を、時系列で詳細に報じた。19日のインタビューで水原氏は、「彼は怒っていたが、助けることを約束してくれた。自分がもう、ギャンブルをやらないという条件で」と話し、さらにこう証言したと伝えている。
「眼の前で大谷が銀行口座にログインし、送金した」
その電話インタビューには大谷の代理人、弁護士が新たに雇った危機管理の専門広報も参加していたそうだが、記事が出る直前になって、その広報から記事差し止めの依頼がESPNに入った。
「彼の発言は、全て虚偽だから」
ESPNが水原氏に再度連絡を取ると、水原氏もそれを認めた。
※リンク先は外部サイトの場合があります
なぜ水原氏は発言を1日で撤回したのか?
しかし、そのロジックには矛盾があった。取材には危機管理の担当者がわざわざ同席している。そもそもインタビューも、その担当者によってアレンジされたものだ。よって、事前に話す内容も入念に打ち合わせが行われたはずである。水原氏にはむしろ、自由に話す権限はない。シナリオをなぞっただけだ。
また、法的責任を問われる可能性が指摘されたことで、大谷を守るために話をすり替えた、との指摘もあったが、それも無理がある。弁護士事務所が入っている時点で、百も承知の話である。
では、なぜ水原氏は発言を1日で撤回したのか? 本当に大谷自身が肩代わりし、送金したのか?そこが一つの焦点だったが、大谷の言葉の中に答えがあった。
「結論からいうと、彼が僕の口座からお金を盗んで、なおかつ、みんな僕の周りに嘘をついていた。結論からいうと、そういうことになります」
ここまではっきり、公的な会見で明言したことは重みを持つ。
水原氏は当初、「翔平が別の友人の借金を肩代わりした」と大谷の代理人らに説明していたそう。それも大谷は会見で否定し、「一平さんは僕らの代理人に対して、借金は自分のもの、つまり一平さんが作ったものだと説明しました。それを僕が肩代わりしたという話を、その時に代理人に話したそうです」と明かした。
一連の経緯において、代理人らは大谷とのコミュニケーションを水原氏に頼っていた。しかし、水原氏が、通訳という立場を悪用し、双方に虚偽説明をしていたということになる。本来、水原氏が当事者だと判明した瞬間に、代理人らは別の通訳を手配すべきだった。
大谷の危機管理の担当者が、なぜインタビューのときに水原氏の虚偽説明をとがめなかったのかも不思議だったが、その人もまた大谷がこう話していたーーという水原氏の説明に騙されていたと考えれば辻褄が合う。大谷本人に確認しようにも水原氏が意図的に誤訳すれば、確認するすべがない。