「ここまで話すのか」大谷が破った“沈黙”に地元紙記者も驚愕 元通訳・水原氏による賭博問題の“霧”は晴れたか
「大谷の表情は悲しげでもあった」
ドジャースタジアムのモニターで、声明を発表した大谷の映像を見る報道陣 【Photo by Michael Owens/Getty Images】
「僕がこのギャンブルに関しての問題を初めて知ったのは、韓国の第1戦(20日のパドレスとの開幕戦)が終わった後に行われたチームミーティングのときです。彼は全部英語で話をしましたが、そのとき、僕には通訳がついていなかったので、完全には理解できなかった。でも、なんとくこういう内容だなというのは理解できた」
そのとき水原氏は大谷に、「ホテルに帰ったあとで、2人でより詳しいことを話したい」と伝えたという。そこですべてを知った大谷は、愕然とした。
「(水原氏が)ギャンブル依存症だっていうのも知らなかったし、彼が借金していることも、そのミーティングの時は知りませんでした」
その際、借金の返済に自分の口座からお金が送金されたことも知り、こう続けた。
「これはおかしいなと思って、代理人と話したいということで、そこで代理人を呼んで話しました」
大谷はこう強調した。
「僕は彼の借金返済に同意していませんし、彼にブックメーカーに送金してくれと頼んだことも、許可したことももちろんない」
その後、危機管理の担当者はESPNに連絡し、記事の差し止めを求めた。代わりに声明を求められると、大谷の弁護士事務所が「巨額の窃盗が行われた」と伝えた。代理人らはドジャースにも連絡。大谷が振り返る。
「ドジャースのみなさんも、代理人の人たちも、自分たちが嘘をつかれていたということを初めて知りました」
もう、完全に犯罪である。だからこそ弁護士事務所も「巨額の窃盗」というセンセーショナルな言葉を使ったのだろう。
大谷も含め、代理人など関係者は水原氏に頼りすぎていた。だからこそ、大谷がこう言っていた、代理人がこう言っていた、という水原が通訳することを、疑わなかった。逆に言えば、水原氏はその立場を利用した。
大谷自身、「盗んだ」、「嘘」という強い言葉を何度か使い、それは怒りの表れでもあったが、大谷、そして水原氏を知るFOXスポーツのベースボールアナリストであるベン・バーランダーは、会見の印象をこう話した。
「冒頭、翔平は一平という名前を使わなかった。さらに、盗んだ、嘘をついた、というストレートな表現を使った。それらは一平を突き放しているようにも聞こえたが、話している表情はどこか悲しげでもあった。そこがせつなかった」
大谷は会見の最後に、こう吐露した。
「正直、ショックという言葉が正しいとは思わない。うまく言葉で表せない感覚で、この1週間を過ごしてきたので、いまはそれをうまく言葉にするのは難しい」
もちろん、まだ、不明点はある。
水原氏に口座へのアクセスの権限を与えていたのか?
450万ドルが消えたことには気づかなかったのか?
しかし、大谷が用意したコメントを淡々と読み上げるのではなく、実際、目を落としたのはわずかで、自分の言葉に置き換え、様々な感情をにじませながら話したことで、ひとまず、雑音は止みそうだ。
(本連載は毎週木曜日の更新ですが、大谷翔平選手が発表した声明を受け、急きょ記事を制作、公開しました)