パナソニックの今季二冠を阻むのは、世界3位のサントリーか前年度王者のWD名古屋か? 2023-24 V1男子ファイナルステージ見どころ

坂口功将

2023-24シーズンが決着! 上位6チームがトーナメントを争う

西田有志(写真)や山本智大ら日本代表勢が加わったパナソニックが堂々のレギュラーラウンド1位通過。5季ぶりの王座奪還へファイナルステージに挑む 【VLPR-2023-062©JVL】

 スローガン「#超える」とともに昨年10月から始まった2023-24 V.LEAGUE(以下Vリーグ)はいよいよ決着のときを迎える。3月3日にNECレッドロケッツの優勝で閉幕したDIVISION1 WOMEN(V1女子)に続き、DIVISION1 MEN(V1男子)も今週末からV・レギュラーラウンド上位6チームによるV・ファイナルステージがスタート。23日はクォーターファイナル、24日はセミファイナルが大田区総合体育館で実施され、翌週は有明コロシアムを舞台に30日は3位および5位決定戦、そして31日にファイナル(決勝)が行われる。

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攻撃力、守備力、選手層…すべてにおいて充実のパナソニック

2021年東京五輪で自身が率いて金メダルを手にした「フランス代表と並ぶくらい、いいチーム」と語るパナソニックのロラン・ティリ監督 【VLPR-2023-062©JVL】

 今季のV1男子を牽引したのは、昨年末に令和5年度天皇杯全日本バレーボール選手権大会を制したパナソニックパンサーズだ。その強さの要因の一つとして明らかなのは充実の戦力。今季を前に、オポジットの西田有志とリベロの山本智大という日本代表の主力2人が移籍加入したのである。すでにチームには、キャプテンで不動のミドルブロッカーである山内晶大を始め、今季が社会人1年目ながら大学時代から選手登録されてきた大塚達宣やエバデダン・ラリーといった日本代表の面々がおり、この選手補強によってチーム力はさらに高まった。

 それは数字にもはっきりと表れており、V・レギュラーラウンドにおけるチーム全体の成績ではアタック決定率(55.1%)、サーブ効果率(8.2%)、サーブレシーブ成功率(61.6%)といった主要項目で軒並みリーグ1位に君臨した。ベテランセッターの深津英臣が豊富な攻撃陣から的確なアタッキングチョイスを繰り出すほか、自身3度目のサーブ賞(サーブ効果率12.9%)に輝いた西田、そしてレシーブ力に長けた大塚や山本と、各々が武器を最大限に発揮している証しだ。

 また今季から新たに外国籍選手として加わったアメリカ代表のアウトサイドヒッター、トーマス・ジェスキーの存在も大きく、総得点(504点)、アタック決定率(57.5%)、バックアタック決定率(72.3%/個人ランキング1位)、1セットあたりのブロック決定本数(0.44本)、サーブレシーブ成功率(65.6%)のいずれもチームトップの成績を残した。人柄のよさもあって早々からフィットし、今や欠かせないピースとなっている。

 もちろん選手をそろえたからといって勝てるほど簡単な世界ではなく、戦況の見極めも好成績の理由の一つ。ロラン・ティリ監督が「エネルギーをもたらす存在」と語る西山大翔や仲本賢優らがベンチに控え、コートに送り出されるとしっかりと務めを果たす。さらにチーム全体として勝負どころにおける集中力も高く、「自分たちが25点目を取りきるまでプッシュし続ける意識が一人一人に備わっている」と山内キャプテン。V・レギュラーラウンド首位通過を果たしたが、決してギアを緩めることなく、2018-19シーズン以来の、そして今季国内二冠目となるリーグタイトルを獲りにいく。

世界クラブ選手権で銅メダルのサントリーは課題を克服できるか

前衛で高い貢献度を示すサントリーの小野寺太志。決意と覚悟を胸に、移った新天地でタイトル獲得なるか 【VLPR-2023-062©JVL】

 そのパナソニックの進軍を阻む対抗馬として、まずはV・レギュラーラウンド2位のサントリーサンバーズの名前が挙がる。今季は日本代表のミドルブロッカー、小野寺太志がJTサンダーズ広島から移籍加入し、ブロックはもちろんのこと、攻撃面ではアタック決定率57.7%の数字を残し、自身2度目のスパイク賞を獲得。かねてから「攻守でバランスがとれ、オールラウンドに活躍できる選手」と評価していた山村宏太監督の期待に応えた。

 サントリーにとって今季最大のトピックスは、昨年12月にインドで行われた男子世界クラブ選手権における銅メダル獲得。ヨーロッパや南米の強豪クラブと堂々と戦い、日本チーム史上最高成績を収めた。
 14季ぶりの優勝に歓喜した2020-21シーズンから翌年の連覇、そして準優勝の昨季と直近3季連続でファイナリストに名乗り出ているサントリー。過去にはVリーグ5連覇の実績を持ち、常勝軍団にふさわしき成績を残しているが、今季のV・レギュラーラウンドにおける戦いぶりをひもとくと、ときおり山村監督が見せた苦い顔が浮かぶ。というのも、相手を圧倒する試合もあれば一転、反撃もままならずにコロリと敗北を喫する試合も見られたからだ。例えば、今年2月にパナソニックを迎えたホームゲームでは2試合続けてストレート負け。試合後、山村監督は「ディマ(ドミトリー・ムセルスキー)だけが決めれば勝てるチームではない。各々が仕事をしなければ、それがわかったのが収穫。パナソニックという国内で勝たなければいけない相手を確認できた」と引き締めた。

 小野寺を除けば昨季からレギュラー陣の顔ぶれに大きな変化はないが、そのなかでも、貴重なサウスポーのミドルブロッカーである佐藤謙次のCクイックや、今年に入って日本国籍を取得したキューバ出身のアタッカー、アライン・デ・アルマスの成長度合いは今やチームの武器に。身長218cm、最高到達点375cmの大砲、ムセルスキーが繰り出す圧倒的なアタックは相手チームにとって脅威に変わりなくとも、周りのアタッカーがいかに気を吐き、得点を重ねるかは常に課題であり、タイトルを狙ううえで必要不可欠。セッターでキャプテンを担う大宅真樹の責務はここから重みを増す。

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著者プロフィール

ライター。大学時代に“取材して伝える”ことの虜になり、母校の体育会ラグビー部で専属記者兼カメラマンを務めたほか、「月刊バレーボール」(日本文化出版)を経て、2024年から独立。読者の心が動く原稿を書けるように現場を駆け回る。競技問わずスポーツ界のユニフォームに深い造詣を持ち、所持数はゆうに100枚を超えるコレクターでもある。

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