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リバプールがマンUとのFA杯で敗れた理由 4冠を狙った限界「ワタルにもサブが必要だった」

森昌利

延長戦にもつれ込んでスタミナが底をつき…

延長前半に再び勝ち越したものの、その後2点を奪われて敗れたリバプール。この3週間、過密日程をこなしながら厳しい試合を戦ってきた選手たちに、もはや体力は残っていなかった 【Photo by Robbie Jay Barratt - AMA/Getty Images】

 後半はリバプールが優勢に試合を進めたと言っていい展開だった。クロップ監督も「例外的なほど素晴らしかった」と話して、セカンドハーフのパフォーマンスを褒めている。しかし「オールドトラフォードでのユナイテッド戦で“ドアを開けたまま”にしてしまい、それが同点弾を呼び込んだ」と続けて、3点目を奪えなかったことが勝負を分けたと悔やんだ。

 本当に一瞬の隙を突かれた同点弾だった。試合も終盤の終盤となった後半42分。ユナイテッドが攻め上がり、ガルナチョのシュートはスライディングしたハーヴェイ・エリオットがブロックしたが、そのこぼれ球を途中出場のFWアントニーがゴール前で拾い、見事なターンを決めて右足でシュート。これがリバプール・ゴールの右隅に決まった。

 この同点弾が決まる2分前の後半40分、ユナイテッドのテン・ハグ監督はセンターバックのラファエル・ヴァランに代えて21歳FWアマド・ディアロを送り出し、トーナメント戦ならではの執念の采配を見せていた。

 これで延長戦にもつれ込んだ。こうなると、クロップ監督も「正直苦しんだ」と認めたように、過密日程で消耗していたリバプールのイレブンのスタミナが底をついたのも仕方がなかった。

 延長戦前半15分にエリオットが左足で放ったミドルがクリスティアン・エリクセンの右足に当たって、マック・アリスターの同点弾と同じく、シュートの角度が変わったことでまたもや幸運なゴールとなり、リバプールが3-2と勝ち越した。しかし、選手の足が止まり始めてしまうと、1週間の準備期間があり、ホームの歓声に押されたユナイテッドの波状攻撃に耐えることは至難の業だった。

 そしてこの試合、2度の決定機を外していたマーカス・ラシュフォードが、3度目の正直とばかりに、延長戦後半7分に3-3とする同点弾を決めると、ディアロがアディショナルタイム1分にこの試合の7ゴール目となるユナイテッドの4点目を奪い、ホームチームがウェンブリーで行われる準決勝の切符を手に入れた。

 ちなみにテン・ハグ監督は、延長戦でもセンターバックのヴィクトル・リンデロフに代えて、攻撃的MFのメイソン・マウントを投入。ピッチ上に残った本職のDFは途中出場のハリー・マグワイアとサイドバックのディオゴ・ダロだけという捨て身の布陣で逆転にかけていた。

さすがのクロップ監督も声を荒げて

試合後、クロップ監督はメディアを前に、延長戦に及んだ激闘を戦い抜いた選手たちを気遣った。その席上、テレビリポーターの的外れな質問にキレる場面も 【写真:ロイター/アフロ】

「ここまで我々は多くの試合をこなしていた。マカ(マック・アリスター)もワタル(遠藤)もダルウィン(ヌニェス)もジョーイ(ゴメス)も交代が必要だった」

 クロップ監督はまさかの延長戦突入で、交代策が尽きて疲労困憊となり、ボロボロになったレギュラー陣をそう言って慰めるしかなかった。

 またこれは同日英メディア上で大きなニュースになったが、デンマークのテレビリポーターから「今日の試合の終盤でリバプールの特徴的な高いインテンシティが消えた理由は?」と質問されて、クロップ監督が「なんて馬鹿げた質問だ!」とキレた。

 120分間のリーグ杯決勝を含めて、22日間で7試合を戦った。そのなかにはマンチェスター・シティとの頂上対決もあり、後半アディショナルタイムの最終分で決勝ゴールを奪ったきついアウェーのノッティンガム・フォレスト戦もあった。チェコで木曜日夜の試合を戦えば、リバプールに帰って来るのは翌日の朝方になる。

 そんな厳しい3週間を過ごして、捨て身になった国内最大のライバルとのアウェーのカップ戦を120分間戦って敗れた。その敗戦直後に「インテンシティの欠如の原因は?」と聞かれて、さすがのクロップ監督も声を荒げてしまったのである。

 アウェーでの120分の激闘後、遠藤を待ったが、やはりこんな精魂尽き果てるような試合の後に我々の質問を受ける気力は残っていなかったのか、日本代表主将が取材に対応するミックスゾーンに姿を現すことはなかった。

 残念ではあったが、リバプールの選手団が全員バスに乗り込んだことを確認してからピッチ脇を通って記者室へ戻ると、試合が終わって約1時間が経過していたというのに「You’ll Never Walk Alone」の大合唱が聞こえた。

 スタンドを見上げると、この時点でも足止めされ、アウェー席を満杯にしたままのリバプール・サポーターがいた。

 これもスタジアム周辺で、犬猿の仲であるユナイテッド・サポーターとの衝突を避けるための配慮だった。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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