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宇治山田商、モットーの「自主性」で野球に磨きをかける

毎日新聞

前年の山商を追いかけない 身の丈野球でチーム力向上

宇治山田商の田中燿太投手 【兵藤公治撮影】

 校舎に一枚の張り紙がある。「挨拶は山商の宝」。野球部員は来客者を目にすると、50メートルほど離れた練習場付近からでも大きな声であいさつする。野球部員に限らず、学校の敷地内ですれ違う生徒も同様で、「山商」の文化の一つになっている。

 2023年夏は三重大会で準優勝した。だが、新チーム結成後、秋季大会地区予選の皇学館戦で6失策と守備が乱れて敗れた。この黒星がチームの転機となった。主将の伊藤選手は「夏の完成形を目指し、皇学館戦に負けるまでは背伸びしすぎていた。技術も体格も全然ないのに、できないことばっかり求めてうまくいかなくて」と振り返る。旧チームは打力があり、新チームも打ちたい色気があったが打てず、守備も不安定だった。

 そこで、先輩たちの姿を追い求めることはやめた。地に足をつけて方向性をはっきりさせ、守りを中心とし、打者は状況に応じたバッティングをしてつなぐことを重視した。

 守備は遊撃の伊藤主将、二塁の加藤一路選手、中堅の山本湊乃介選手のセンターラインを軸に、練習から実戦を意識して鍛え直した。その成果もあり、皇学館戦後の公式戦9試合では計8失策と改善した。

 投手陣も配球などを学んで徐々に成長した。昨秋は制球力のある先発向きの加古真大投手、直球の質がよく長いイニングを投げられる田中燿太投手、140キロ台前半と球に力のある中村帆高投手の3人の継投を軸に勝ち上がった。

状況に応じた打撃ができるように

宇治山田商の中川春輝選手 【兵藤公治撮影】

 打線は村田監督が「本当に打てない」と嘆いていたが、東海大会では2試合で26安打15得点と好調だった。チーム打率は3割6分6厘。状況に応じた打撃で得点するパターンも見られ、伊藤主将は「(打線に)つながりがある」と自負する。すばしっこくて粘り強い1番・山本選手、場面に応じて器用に対応できる2番・伊藤主将、ミート力がある3番・中川春輝選手ら3年生が打線を引っ張る。

 改善した守備だが、東海大会では試合終盤の勝負どころでもろさが再び顔を出した。その反省から、選手たちは走者がいる実戦を想定した守備練習もしたいと自発的に取り組んだ。村田監督が大切にする「自主性」は、着実に根づいてきている。

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