“代表入り”の声も挙がる好調・町田の新星 平河悠は「三笘+長友」のハイブリッド
パリ五輪、代表への道も
鹿島のポポヴィッチ監督は険しい表情を浮かべつつも、かつての教え子を称えていた 【(C)J.LEAGUE】
今季の活躍を見ると「もう一つ上」の可能性もありそうだ。鹿島のランコ・ポポヴィッチ監督は2022年まで町田の監督を務めていて、当時はまだ大学生だった平河を抜擢した指揮官だ。
「私が率いていた当時のFC町田ゼルビアにとっても、彼は非常に大きな存在でした。彼が大宮戦のあと(大学に戻って)町田の試合に出られなくなってから、我々も結果を出すことができなかった事実もあります。今日、彼に決められたことはチームとして監督として残念ですけれど、彼は近い将来に日本代表へ入っていく選手だと思っています」
2022年の町田は開幕から7試合連続で大学生の平河を起用し、3月30日の大宮戦を終えて2位につけていた。しかし最終的には15位でシーズンを終えている。もちろん平河の離脱「だけ」が理由ではないが、その不在はチーム崩壊の大きな理由だった。
23年の彼は既にJ2で図抜けたレベルに達していて、記録を見ても35試合の出場で6得点を挙げていた。カテゴリーを上げた24年も、昨季と変わらずチームの違いを作る存在となっている。
平河にJ1で3試合を経験した手応えについて尋ねると、このような答えが帰ってきた。
「自分は攻撃の特徴がある分、そこは今のところ壁をそこまで感じていません。ただやはりクオリティー、相手の頭の良さは確実にJ2の遥かに上なので、そのギャップをなるべく埋めていきたいなと思っています」
今の平河は攻守とも個人能力でやれてしまう部分がある。クロスの精度、シュートも決して悪くはない。一方で駆け引き、最終局面の質は経験を積むことでさらに上げられる部分だ。いずれにせよ、そのポテンシャルは大きく、遠からずU-23よりひとつ上の代表に招集される可能性もあるだろう。
「無名」からのブレーク
サイドハーフとして、間違いなく平河悠はJ1でも有数のレベルにある 【(C)FCMZ】
進学した山梨学院大は東京都1部リーグ(※当時は関東1部から数えて3部相当)だった。平河が大学3年だった2021年の夏に、山梨学院は全国大会の予選で関東1部を連破する快進撃を見せる。それを見た町田は「翌々年」の加入に向けて素早くオファーを提示し、獲得にこぎつけた。
平河は大学4年次に都リーグ優勝、関東2部昇格に大きく貢献。大学にしっかりと恩返しをしてから「完全なプロ入り」を果たした。
山梨学院の岩渕弘幹監督は、当時の彼をこう評している。
「無名な選手だったけどサッカーに取り組む姿勢や、サッカーが好きだという気持ちで、ここまで力をつけた選手。ビックリするくらいの成長力を持っているので、まだまだ伸びると思う。一番期待しています」
平河の「成長力」はまだしばらく尽きる様子がない。2021年、22年と大学の都リーグでプレーしていた俊足アタッカーは、今や日本代表入りを期待される存在だ。2022年のJ2を15位で終えた町田も、J1の首位争いを繰り広げている。平河のキャリアはクラブとともに、強烈な上昇曲線を描こうとしている。